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【ヒューマンアラウンド株式会社 野田 亨】通帳残高3,600円からのV字回復。小規模事業者が生き残る『多角化』と『ワクワク』経営。

2025/10/19

Profile

野田 亨

ヒューマンアラウンド株式会社 代表取締役

大学卒業後、就職先に「やりたいこと」を見つけられず、営業職としてキャリアをスタート。情熱ホルモンを展開している五苑マルシン株式会社の子会社としてヒューマンアラウンドを立ち上げ、人事・組織開発の責任者として「情熱ホルモン」の全国300店舗展開を牽引。幾多の危機を乗り越え、2021年には親会社から独立。現在は、人材紹介、採用支援、そして小規模事業者向けの「3年後事業明確化プロジェクト」を軸に、実践的な伴走支援を通じて多くの企業の成長をサポート。
突然の災害、予測不能なパンデミック。その逆境を乗り越え、現在は小規模事業者の未来を切り拓く伴走者として活躍する野田氏に、これまでの道のりと経営哲学を伺いました。

二度の危機を乗り越え、どん底から再起した軌跡

──逆境経験について教えてください。

私自身、幸いにも個人的な人生において大きな不幸に見舞われた経験は少ないと感じています。しかし、会社としては、設立以来、二度の大きな危機に直面しました。

一度目は、2011年の東日本大震災の時です。当時の当社のメイン事業は、飲食店や結婚式場に特化した人材紹介でした。震災発生後、世の中の活動が完全にストップし、人材の需要も途絶えました。当時、内定を出していた方々が「雇い止め」に遭うケースも発生し、その対応にも追われました。売上は激減し、気が付けば会社の通帳残高は年末に3,600円という信じられないような数字になっていたのです。

当時はグループの子会社として運営していたため、銀行との直接的な付き合いがなく、資金調達のノウハウもありませんでした。「これはもう終わりかもしれない」という絶望感が押し寄せましたが、親会社への売掛金や、当時取引のあった企業への早期支払いの依頼などで何とか急場を凌ぎました。もちろん、私の給料は何ヶ月も未払いの状態でした。

二度目の危機は、2020年からのコロナ禍です。奇しくも震災の時と同じように、サービス業が大きな打撃を受け、事業は再び停止状態となりました。そして、2021年、創業オーナーがお亡くなりになったことを機に、親会社から独立することになったのです。コロナ禍で会社は疲弊し、「二束三文」とまで言われる状況でしたが、15年間お世話になった恩義から、出資金の800万円をキャッシュで返済しました。このことが、さらに経営を苦しい状況へと追い込むことになったのです。

一点突破より、複数事業で“しなやかに生きる”

──逆境から得た教訓や学びについてお聞かせください。
東日本大震災の時の経験からは、何よりも「キャッシュフロー経営」の重要性を痛感しました。売上や会社の外見ばかり気にしていてはダメだと。手元にどれだけの現金があるか、支払いをどう回していくかを常に意識することが、小規模な会社が生き残る上では不可欠だと学びました。また、無駄な経費を見直して削減することも徹底しました。使っていないシステム費用や会費など、気づけば増えていた固定費を全て洗い出し、見直したのです。

さらに、人の大切さ、そして「属人性を排したチーム運営」の必要性も痛感しました。震災後、会社の苦境の中で優秀なコアメンバーたちが独立したり、退職したりするケースが相次ぎました。給料を下げざるを得ない状況も経験し、一人の優秀な人間に依存する組織の脆弱性を思い知らされました。

そこで、「誰が抜けても回る仕組み」を構築し、個ではなくチームで売上を立てられるような体制づくりを意識し始めたのです。
コロナ禍からの学びは、「自社の強みを再認識すること」と、「事業の多角化」の重要性でした。それまでは「選択と集中」という経営戦略を信じ、飲食業界に特化することで尖った強みを作ろうとしていました。しかし、パンデミックによって市場全体が停止すると、一本足打法がいかに危険かを思い知らされました。中小企業こそ、複数の「ため池」を持ち、色々なところから少しずつでも収益が入ってくるようにすべきだ、というのが私の今の持論です。

一つの事業で大きく何百億を目指すのも素晴らしいですが、私のような規模の会社にとっては、それぞれの事業でマネージャーを置けるくらいの規模(売上2,000万円を超え、粗利で800万円程度)を目指し、複数の柱を持つことが、変化の激しい時代を生き抜く術だと考えています。

小規模事業者の未来を共に描く「3年後伴走支援」

──会社の強みや魅力について、教えてください。

当社の事業は、現在大きく分けて3つあります。一つは「人材紹介事業」、二つ目は「採用支援事業」、そして三つ目が「小規模事業者向け3年後事業計画伴走支援」です。

当社の最大の強みは、私が長年にわたる事業会社での経験と、20年という経営者としてのキャリアで培ってきた「実践的なノウハウ」を、小規模事業者の経営に活かしている点にあります。世の中には多くの経営コンサルタントや中小企業診断士の方がいらっしゃいますが、彼らが提供するツールや手法は、往々にして30名から100名規模の組織に向けたものであり、従業員数10名以下の小規模事業者にはフィットしないことが多いのです。彼らは実務経験が不足しているため、創業間もない社長が直面する泥臭い課題への具体的な答えを持っていません。

私は、グループの子会社社長として、創業オーナーの隣で何百人、何千人規模の採用を成功させ、人事・採用の責任者を兼任してきました。その中で、多くの苦労を経験し、コンサルタントが教えてくれないような課題に、自ら考えて実践で乗り越えてきました。当社の「3年後事業明確化プロジェクト」は、そうした私の実体験とノウハウをコンテンツとして詰め込み、月額33,000円という破格の料金で提供しています。オンラインでのグループコンサルや、リアルでの交流会も開催し、参加者同士の学び合いを促しています。

私一人が全てのコンサルティングを担うのではなく、将来的な展望としては、このプロジェクトで学び、成長した受講者の皆さんが「認定講師」として活躍し、コミュニティ全体で小規模事業者を支援するエコシステムを構築したいと考えています。私がいなくてもプロジェクトが回り、より多くの経営者が自律的に成長できるような仕組みを作っていくことが、当社の目指す未来です。

情熱に素直になれ!人生はそこから動き出す

──若者へのメッセージをお願いします。

若者の皆さんには、自分が「本当にやってみたいこと」や「心から興味が湧くこと」が見つかったら、ぜひ躊躇せずに挑戦してほしいと強く思います。周りの目や、「かっこ悪いかも」といった感情に囚われることなく、自分の心の声に正直になって一歩踏み出してみてください。

私自身、大学を卒業する時も、就職する時も、「これがやりたい!」という明確な目標がありませんでした。「潰しが利くから」という理由で経済学部を選び、とりあえず明るいから営業職に就こう、といった漠然とした選択をしてきた過去があります。だからこそ、自分のやりたいことを見つけて情熱を注げる人が、どれほど素晴らしいかを実感しているのです。

もし、今「何をしたいか分からない」と悩んでいる人がいたら、子供の頃に「ワクワクしたこと」や「褒められて嬉しかった記憶」を思い出してみてください。それは些細なことかもしれませんが、その記憶の中に未来へのヒントが隠されているはずです。

そして、小規模事業を営む皆さんにもお伝えしたいことがあります。「本当にその事業をやりたいのか?」「心からワクワクしているのか?」を常に自問自答してください。ワクワクするだけではビジネスは成り立ちませんが、お金を稼ぐためだけにやりたくないことを続けるのは、経営者として非常にもったいないことです。どうせ苦労するなら、自分が本当にやりたいこと、情熱を注げることで苦労する方が、はるかに充実した道のりになるでしょう。自分の強みや、本当に貢献したいことを見つめ直し、情熱を持ってビジネスに取り組むことが、成功への鍵だと信じています。

ヒューマンアラウンド株式会社

設立 2006年9月16日
資本金 1000万(資本準備金含む)
売上高 非公開
従業員数 非公開
事業内容 人材紹介
人材募集管理システムの提供
3年後事業計画プロジェクト®
URL https://sites.google.com/view/humanaround/home https://sites.google.com/view/3years-home/home
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