井戸端会議から生まれた4つの事業
――御社の事業内容について教えてください。
当社は4つの事業部で構成されています。1つ目がIT事業部で、在庫管理や受注管理などのシステム受託開発と業務改善DXサポート、そして女性限定のITキャリアスクールを行っています。2つ目がクリエイティブ事業部で、ホームページやEC、販促ツール、ロゴ制作に加え、今年4月からはカメラスタジオとレンタルドレスの事業も始めました。3つ目がフェムケア事業部で、布ナプキンやヨガウェアを作り、ECサイトを通じて女性のQOL向上に取り組んでいます。4つ目が飲食事業で、福岡に4店舗、大阪に1店舗の計5店舗を運営しています。
――多様な事業展開の背景を教えてください。
社名の「WellSideMeeting」は「井戸端会議」をテーマにしています。「こういうことがあったらいいよね」「こういうのやりたいね」といった声を形にしていくのが会社の軸になっています。従業員や関わっている人たちが、やりたいことや社会のために作りたいものを形にしていく。そうやって、自己表現や自己実現、自己肯定感の向上につなげることを軸に置いていたら、事業が展開されていったという感じですね。
――社内の雰囲気について教えてください。
スタッフ起点の事業展開が一番強いです。私自身が他人軸なので、人のために誰かが笑顔になったらいいなと思って仕事をしてきました。基本的に命令はせず、お願いをするか、相手が何をしたいのかを聞くようにしています。
強いることが苦手でKPIも立てないのですが、「自分が事業を支えないといけない」「周りに負けないように頑張ろう」という社内の認識が会社の発展につながっている気がします。常に相手の気持ちを尊重することを大切にしていて、そうした姿勢が伝わるのか、チームの皆さんから「一緒にやりたい」と言っていただけることが多く、本当に感謝しています。
家庭環境が生んだ自己否定感
――逆境経験とそれを乗り越えた方法について教えてください。
5歳の時に両親が離婚し、父方の祖父母に引き取られました。母とはそれ以降会うことがなく、父は離婚後に自暴自棄になってギャンブルで借金を重ね、祖父母の家に転がり込んできました。
祖父は飲食店を経営する厳格な人で、情に熱いのですが短気な性格で「ここに捨てられたら生きていく場所がない」という思いから、家では良い子でいなければいけないと常に思っていました。
自己否定が一番自分を作っていると思います。「私ごときが遊んでいるのはおこがましい」「暇をできるような身分ではない」とずっと考えていました。働いてお金を稼がないと存在してはいけない感覚でしたね。
――転機となった出来事はありましたか。
起業する2ヶ月前、25歳の時に弁護士から遺産相続放棄の書類が届きました。母方の祖母が亡くなったという内容でしたが、その時初めて母が10年前に亡くなっていたことを知りました。どこかで生きていると思っていたのに、もう会うことはないと知った瞬間、「愛されたかったのだな」という気持ちが湧き上がり、自分が家庭環境から大きな影響を受けていると気づきました。
そこから起業して、人に依存しない性格や生活を築くようになりましたね。新しいことをやっていけば、何かしらの成果が出てきます。小さな成功体験を積み重ね、周りがそれを「すごい」と認めてくれることで、少しずつ自己肯定感が変わっていったと思います。

自分磨きは逃げ道になる
――今後のビジョンについて教えて下さい。
影響力を持つために10億円という数字を個人的な目標にしています。今期は6億円が目標で、2028年頃までに10億円を目指しています。会社全体としては数値目標というよりも、各事業部が「各々の城」をどう確立するのか、という存在目標を大切にしています。
――社会に対してどのような影響を与えたいですか。
大阪から日本内外に通用する企業、特に女性が経営する企業は非常に少ないと感じています。変わらねばならない、という共通文化、共通言語を作って、日本全体を変えていきたいです。女性のIT教育をはじめたきっかけも女性のキャリアに対する研鑽を上げていきたいところがあります。
自分の家庭環境の話をすると、同じように自己肯定感の低さや家庭環境に課題を抱えている人から「なぜ非行に走らなかったのか」と聞かれます。私の場合、自己防衛として自分を磨くためにひたすら勉強しました。「親がこうだったから」「夫がこうだから」と逃げるのではなく、自分で勉強してスキルを身につけ、状況を変えていけばいいと思います。そういう考え方を日本の一つの価値観にしたいと考えています。
菩薩力を持ちながら、挑戦してほしい
――最後に、若者に向けてメッセージをお願いします。
近道をしすぎないでほしいと思います。頑張っている若者がたくさんいると思う反面、20代前半から効率的に稼ぐ方法を選ぶ人が多い印象です。失敗する機会を逃すと、気づきを得る場面が少なくなります。本来は怒られるべき箇所でも、叱る義務を持たない周りに囲まれるため、されずにスルーしてしまう。そのような学びの機会を逃すのは本当にもったいないと思います。
私が大切にしているのは、自分を俯瞰して見ることです。昔読んだ漫画に「額縁の中にある自分を見ている自分」という表現がありました。自分が額縁の中にいて、それを後ろから見ているイメージです。RPGゲームのように、自分はどういうスキルを身につけていけばボスに勝てるのかを俯瞰して考える。意思決定の真ん中に自分の感情がないという感覚ですね。その感覚があれば、自分にとって必要なことが見えてきますし、リスクを取った行動も取れるはずです。一喜一憂しない「菩薩力」を持って、目の前のことを積み重ねていくことが重要だと考えています。
