売上ほぼゼロの3ヶ月と、組織マネジメントでの苦悩。
──逆境経験について教えてください。
最初の逆境は、売上がほとんど立たなかった起業後の3ヶ月間です。敗因は、「大きなスポンサー獲得にこだわり過ぎて、交流会に執着してしまったこと」でした。当時、ちょうど子どもを授かった時期でもあり、「これから家族を支えるために、稼がなければならない」というプレッシャーが重くのしかかり、メンタル的にも一番キツい時期でした。そのときは、「会社を畳んで安定した給与を得られる正社員に舵を切ろうか」という考えも頭をよぎったことを記憶しています。そのメンタル面での苦境を乗り越えられたのは妻の支えのおかげで、今でも感謝の気持ちでいっぱいです。
その後、戦略を変えたことで売上を伸ばすことができたのですが、次に訪れたのが「選手のマネジメント」という壁です。選手たちは「会社員×アスリート」という“デュアルキャリア”として活躍しています。ただ、来るべき練習に来ないといった「プロ意識の欠如」という状況が散見されたのです。また、地域貢献を目的とせず、お金を目的に参加する選手も一部に存在しました。プロとして結果は大事ですが「仮に負けても、周りから応援されるチーム作り」を目指していたので、その時期は苦労しました。
──「3×3」の魅力と、理念を追求する同社を立ち上げた理由をお聞かせください。
コートごと持ち運びできるので「場所さえあれば、どこでもプレーできる」のが特徴です。設営が簡単なため「スポーツを通して、地域のまちづくりを支援する」という私たちの想いを具現化するのに適しています。普段は何もない場所にプロチームが来て、「本物の熱い試合を観戦できる」ことで、人々が集まるきっかけになります。そこを起点に、たとえば「小中学校の部活の発表会を共同開催する」など、人々を巻き込みながら地域貢献に繋げられるのが魅力です。当社を立ち上げた理由はシンプルで、「スポーツに育ててもらったので、恩返しをしたい」という気持ちからですね。

「地域に貢献」という理念を共有し、プロとして高みを目指す。
──逆境があったからこそ得られた教訓は、どんなことでしょうか?
立ち上げ当初、売上がほとんどなかった時期には、「実績もほとんどない状態で、年間100万円単位の提案をしてしまっていた」「応援してくれる経営者とは異なる層にアプローチしてしまっていた」という失敗がありました。そこで、「地域貢献に興味を持つ月1万円ほどのスポンサーを募る」という現在の戦略に切り替えるノウハウを得ることができました。折しもそのタイミングで、同じくバスケットボールというスポーツで地域社会への貢献がしたいマネージャーが参画し、ともに企業へのアプローチをしてくれたことにより、一気に売上の伸長が加速。おかげさまで現在は、約60社の年間スポンサーや協賛企業とのご縁を紡いでいます。資金的にはもちろん、気持ち的にも上向きになれました。
選手のマネジメントの課題を乗り越えた方法は「コミュニケーションの手法を変えた」ことです。それまでは、私と選手たちは並列な関係で、一緒に練習もするような「仲の良い先輩と後輩」といった関係性でした。しかしそれでは、どうしても“なあなあ”になってしまいます。するとチームなどへの批判や私自身への不満を、公然とぶつけてくるような組織になってしまうのです。そこで、私と選手の間にマネージャーを挟み、何かあっても直接ではなくマネージャーを通すといった「トップダウン方式」に再編成しました。
加えて、「選手に当社の理念をしっかりと伝えて共有する」「同じ方向性の選手とチームを作る」ことを徹底。「お金」や「プロとして箔をつけたい」などの理由で参画している選手には「辞めてもらう」という強い姿勢で臨みました。そうすることで、地域に貢献したいメンタリティを持つ選手だけが集うという、現在の体制にたどり着くことができました。
プロである以上「強いチームを目指す」のは当然で、大会に勝利することでスポンサーや地域の人々に喜んでもらえるのは、非常にうれしいことです。ただ一方で、「結果だけを求めるチーム」を私は望んでいません。ステークホルダーに愛されるのみならず、たとえば「小学生に無料でレクチャーする」「行政とアライアンスを組み、イベントを仕掛ける」など、バスケットボールを軸とした地域貢献を追求しています。
地域にもスポンサーにも貢献。公民連携で、まちづくりにつなげる。
──会社の強みや魅力について、教えてください。
1つ目の強みは「公民連携」を含めた、地域社会への貢献を貫いている点です。行政や教育委員会といった公的機関とも一緒に活動していることから、「地域密着型の事業」をされているスポンサーにとって、高い訴求力を有しているのがビジネスモデルにおける独自性になります。たとえば「学校で配布するチラシに、スポンサーとして企業名を掲載する」といったことが可能です。現在当社は「守口・門真」を活動拠点にしていますが、将来的に他の地域に進出した場合でも、同じスキームを展開することができます。
2つ目は、「ビジネスマッチング」です。現在、スポンサーや協賛など約60社に応援していただいていますが、すべてが「当社の理念に共感してくださる企業」になります。結果として、「地域の活性化や社会貢献」に対して、熱い想いをお持ちの経営者同士の交流を促進できる点が強みであり、特徴です。ちなみにスポンサーの継続率は90%以上で、高い満足度を頂戴しています。
3つ目が「企業と人材の交流機会の創出」です。デュアルキャリアで働く選手たちや、新たにチームに参加してくれる学生たちと、企業との間に交流の機会を設けることで、双方に役立つ仕組みづくりを行っています。
──今後の目標について、お聞かせください。
まずは「スポンサー200社」を目指し、その後は2030年に「500社」を目標としています。チームとしては、2030年には「日本一」の称号に輝けるように成長させていく覚悟です。無論、「社会貢献」と両輪で推進します。その先には「世界リーグ」が待っているので、まだまだ道のりは続きます。また、「3×3」の知名度を高めて、広めることも重要な役割だと認識しています。

見つけるまでの苦労を経験して、やりたいことを見つけよう!
──若者へのメッセージをお願いします。
まずは、色々なことに挑戦して経験してください。営業でもITでも何でもいいので、とりあえずやってみたら「これをやりたい!」というものに出会うことができるはずです。その後は、それを極めて突き抜けることで、人生は豊かになります。もちろん、最初からやりたいことが決まっていればそれを探求すればいいのですが、私も含めて多くの若い方が「何が向いているのか、どんなことが好きなのか自分でもわからない」状態ではないでしょうか。
探し出すまでの間に時間がかかるという大変さがあると思いますが、「成し遂げたいものがない」方が、長い人生において辛いことです。ぜひ、やりたいことを見つけ出してください。私の場合は、実家が自営業だったこともあり「起業したい」という原点がありました。ただ、「何をしたいか?」は全くわからなかったので、模索する中で苦しんだこともあります。しかし、様々なことに飛び込んで経験を積む中で、「志を事業化する」という現在の形に結実しました。
あと、もう一言付け加えるなら、何かしらの営業は経験しておくと、社会に出てから大いに役立ちます。営業で培われるコミュニケーション能力はどんな仕事をする上でも土台となるので、一度やってみることをオススメします。