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【株式会社アイルティ 田中 愛子】壮絶な10代の経験が、「絶対成し遂げる」という覚悟と「他喜力」という信念に。

2025/08/08

Profile

田中 愛子

株式会社アイルティ 代表取締役CEO

17歳でシングルマザーになる道を選択し、「逆境」という言葉では言い表すことができないような、筆舌に尽くしがたいご経験を乗り越えてこられた田中氏。現在は、インバウンド事業からスタートし、時流を見据えて業態変換した、株式会社アイルティの代表を含めて3社の事業を経営、3児の母をされています。

今回は波乱万丈に満ちた田中氏のご経験やそこから得られた確信、第二創業期を経て発展中の同社の事業内容や魅力などを伺いました。

簡単に「美談」にはできない、「17歳での子育て」という覚悟。

──逆境経験について教えてください。

大きな逆境経験は2つあります。

1つ目は、商売をしている比較的裕福な名家で生まれたのですが、特に祖父から初孫だった私に対して託すものが大きく、幼少期から厳格な家庭で育ちました。10代の頃は「まるで籠の中の鳥」と感じるほどの閉塞感に、大きな負担を感じていました。そして高校時代、抑圧された生活の反動による反抗期で、家族との縁は冷え込んでいった末に、「家を出る」ことを決断したのです。さらに17歳で子どもを授かり「シングルマザーとして育てる」という人生を選択。そこからは、想像を絶する生活が待っていました。「とにかくお金がない」「家を借りることすらできない」「実の親なのに親権を持てない」「保育園に子どもを通わせることもできない」という状況でした。

子どもと2人で、ひたすらがむしゃらに生きていた中、たまたまアルバイトとして入社した会社が、不動産だったのです。最初はチラシを作り、子どもを背負いながらそれを貼りに行くという仕事からのスタートでした。ただ、その業務のおかげで間取りや相場感を実地で身につけることができ、数年後には賃貸営業の仕事を任されるようになったのです。そして23歳で店長になり、独立採算制の責任者であったことから経理や財務といった知識も得ることができました。

2つ目の逆境はコロナ禍です。コロナ禍になる数年前、私はナショナルカンパニーからヘッドハンティングしていただいたのですが、その会社でプロジェクトリーダーとして動いていたインバウンド事業が企画段階で頓挫。しかしその後に、会社を休んで、中国まで足を運ぶことで市場調査などをしてきた私は「インバウンドの波は間違いなく来る」という確固たる自信をもち、独立を決意。滑り出しは良かったのですが、コロナ禍に見舞われたことで、当社を含めて経営している3社が一気に大ダメージを受けました。

──「17歳で育児」「3社を束ねるバリキャリママ経営者」は、波乱万丈ですね。

確かに、出版社などから「ドラマチックな人生だから、書籍にしませんか?」というお話をよくいただきます。しかし私としては、当時何度も頭に「死」がよぎるほどの生活を強いられており、生死の瀬戸際を何度も経験しました。そのため、「17歳で子どもを育てる」という選択を、安易に美談として語るのには抵抗があります。

「周りの幸福」が、実は自分が幸せになるための一番の近道。

──逆境から得られた教訓を教えてください。

会社員時代も経営者になってからもそうですが、人生は山あり谷ありで周期があります。よく「若いときの苦労は、買ってでもしろ」と言われますが、私の場合は、10代のときの壮絶な経験を乗り越えてきたので、「何があっても絶対に大丈夫だ」という確信があります。大事なのは逃げないことです。諦めなければ失敗にはなりません。悪いことがあっても、いつかまた好機が訪れます。「とにかくやりつづけること」が逆境から得た教訓のひとつです。

次に、私の座右の銘でもある「他喜力」というメンタリティを身につけられたことです。意味としては「自分が幸せになるには、周りが幸せになることが1番の近道」だという揺るぎない志になります。これは、「生死の境目をさまよう」ほど苦労した10代のシングルマザー時代でしたが、一方で周りの方々のおかげで「生かされた」という慈愛あふれる経験を与えていただきました。食べる物がないときご飯をいただいたり、家がないときに住まいを提供してくれたりと、何の見返りもなくたくさんの方に助けてもらいました。さらにその間に、仕事に打ち込むことができたのは、私の代わりに保育園に子どもを迎えに行ってくれたママ友たちのおかげです。

人生を振り返ると、支えてくださった方が1人でも欠けていたら、経営者にはなれませんでした。だからこそ、そのご恩に報いるのが自分の役割だと認識しています。会社のメンバーたちは「家族同様」のかけがえのない存在であり、プライベートでは義母や旦那たちに支えてもらっているからこそ、「私」が成り立っています。ゆえに、私自身も周りに「喜んでもらう存在」であり続けるのは、自明の理です。

コロナ禍より始めた学生支援から得られたことは、「学生との出会い」で、いまの事業群にもつながっています。コロナ禍の学生たちは「大学の友達に会えない」「部活も禁止」「アルバイトもできない」という悲惨な状況でした。そんな学生たちとコミュニケーションを積極的にとることで、ゼロイチで新たなビジネスモデルを生み出すことにつながったのです。

時流を見据え、「国策の一歩先」を走るパイオニア企業。

──どのような事業を展開されているのでしょうか。また、会社の強みについてお聞かせください。

当社は創業時より「インバウンド事業」をメインに据えたビジネスを展開していました。しかしコロナ禍により業態変換を実施。現在は、「エネルギー事業」と「AI事業」の2軸で運営しています。私たちの強みは、他がやっていないときから、次にやってくる市場に参画することです。インバウンド事業もそうでしたが、来たるべき時代を見据え、市場を切り拓くことを武器にしています。そのため、他の企業様などから「先駆者」という評判をいただくことが多いですね。

特に「エネルギー事業」では、3つのサービスを展開しています。1つ目は、会社や事業で使用される電力を削減するサービスです。冷暖房や業務用冷凍・冷蔵庫では莫大な電力が使用されており、そのコストダウンの支援及び二酸化炭素の温暖効果ガス削減支援を推進中です。2つ目として、太陽光発電等の自然エネルギーで生み出された電力を、夜使用するために貯める「蓄電所ビジネス」を提供。将来性や社会貢献のみならず利回りも高いことから、投資家に喜んでいただいています。さらに3つ目として、企業に無償で太陽光パネルを提供し、発電していただく「企業版の自家発電モデル」を働きかけ、後押ししています。

このエネルギー事業に注力している背景として、日本全体で自然エネルギーへの移行が推し進められているというのも大きいです。実はこれまで世界中が自然エネルギーの活用を重視している中で、「日本だけが遅れている」という課題がありました。しかし、コロナ禍以降、日本は再生可能エネルギー(再エネ)に対して、本気で注力するようになっています。エネルギー業界全体も改編が進んでおり、再エネを活用した脱炭素を掲げる新電力会社も勢いを増しています。そうした時流にいち早く目をつけて、ビジネスとして展開しているのが、当社の特徴です。

情報過多の時代だからこそ、ぜひとも行動を!

──若者へのメッセージをお願いします。

私の人生の目標のひとつは「30人の起業家を創ること」です。今、当社には優秀な若者たちが長期有償インターンとして集い、一緒にビジネスを手がけています。この中から、経営者になる若者が出てきたらうれしいですね。そのためにも当社では、ビジネスの基礎をレクチャーしたり、裁量権のある業務を任せたりしながら育成に勤しんでいます。インターンを「社会人“ゼロ”年生」と位置づけ、社会に出る前に「自分が何をしたいのか?」を明確化する時間と捉えているのです。例えば「ネームバリューのある会社に行きたい」という話が出ることがあるのですが、「仕事は一生かけてするもの。自分の好き・得意なことを追求した方がいいよ」というアドバイスを送ることも多いです。

こうして、日々若者と向き合う中で感じるのは「学びはとても大切。しかし情報過多になる前に、まずは行動してみよう」という言葉を送りたいです。せっかくの知識も、アクションプランに移さなければ、意味がありません。そしてチャレンジすることに、年齢は関係ないこともお伝えしたいです。もし「やりたいことが見つからない」なら、信頼できる社会人と触れ合いながら、振り返る時間を最低でも半年ほど持つことで、目標が明確化されていきます。私は、若者たちとこれからも一緒に挑戦を続けていきます。

株式会社アイルティ

設立 2015年10月
資本金 1,000万円
売上高 非公開
従業員数 75名(業務委託を含む)
事業内容 エネルギー事業
営業・マーケティング支援事業
URL https://aillty.jp/ https://aillty-career.notion.site/bcl
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