初めて「ビジネスの本質」に触れたときの衝撃。
──逆境経験について教えてください。
家父長制度が色濃く残る家庭で育ち、父親が厳しいタイプだったことや両親の不仲もあって、中学生時代に反抗期と不登校を経験しました。生活スタイルも乱れてしまい、問題行動が目立つグループと交流して遊びに興じるなど、無為に過ごすような日々を送っていたのです。ただ、中学3年生のときに「高校に行きたい」と思い立ち、そして1年生の頃に入部していた「応援団の活動をやりたい」と考えて担任に相談したところ「応援団は真面目な生徒の部活なんだから、無理だよ」と言われたのです。それを聞いて「置かれている状況」に気付かされ、進学の道を選びました。それまでは荒れた生活を送り、ちょっとした事件に被害者として巻きこまれたこともあったので、自分の中では「逆境から更生した」という感覚でした。
次の逆境経験は、会社員になってからになります。それまでバンド活動に打ち込み、社会人経験がない状態で飛び込んだのですが、昭和のような社風で厳格な上下関係が存在する会社でした。そこで営業として鍛えられたのですが、「とにかく頭を下げて、案件を取ってくる」という手法しか教えてもらえず、それが「当たり前」だという認識で仕事をしていたのです。ところが当社に社員として入社して仕事を振ってもらったとき、「なぜ、こんなアウトプットになったのか?」を聞かれました。最初は何を意図して質問されているのかがわからず、「何となくいいと思ったから」と答えた記憶があります。
しかし、ビジネスとは「商品やサービスを通じてお客様の課題を解決したり、夢を実現したりすることで喜んでいただく」のが本質です。その発想や「費用対効果」といった基礎的なところが全く頭になかったので、最初は衝撃を受けるとともに、苦労を感じました。仕事をするうちに、お客様の望んでいるゴールを明確化し、「そのための具体的なプランニングを立案して成功裏に導く」という、ビジネス本来のやりがいに醍醐味を感じるようになったのです。それまでの「上司に怒られたくない」といった理由で仕事をしていたことが、間違っていたことをはっきりと理解しました。そして、社会全般を見渡したとき、ビジネス本来の楽しさを実感できていない方が、まだまだたくさんいらっしゃることも知りました。

「なぜ?」の深掘りを続け、やりがいを社内に共有する。
──逆境を経験したからこその教訓をお聞かせください。
中学校時代に、やんちゃなグループとの交流があったおかげで社会に出てから「ヤバい人センサー」がビンビンに反応するようになりました(笑)。ただこれは、経営者にとっては大事な感性だと思っています。ビジネスをしている上で、関わると問題が起こるタイプの経営者は一定数存在します。それを事前に察知して、当社では一切取引をしていません。実は当社にお世話になってから自分の力を過信してしまい、一時期個人事業主として独立していたことあります。そのときには、センサーが反応してるにも関わらずお金のために案件を受けたことがあるのですが、もれなく炎上していました。
その経験から、自分のセンサーには自信を持っています。ちなみに問題が起こる経営者には共通項があり、「最初からいきなりタメ口で、異常に馴れ馴れしい」「こちらの話に耳を傾けず、自分の話だけをする」「商談もしていないのに、すぐに意思決定して案件を丸投げしようとする」「他責思考」といったタイプは要注意です。組織としても「忖度しかしない幹部と、関係性が薄くて遠い社員しかいない」といった特徴があります。
当社に来て、苦労を経て学んだ「ビジネスの本質ややりがい」については、社員教育に活かされています。例えばWebマーケティングで「SEOで上位検索されるようになり、お客様に喜ばれた」というレベルで満足するのは、まだまだ表面的です。「なぜ感謝されたのか?」を徹底して深掘りすることが重要になります。お客様の会社それぞれに、確立された理念や目指すべきビジョンがあり、経営者や社員たちは命をかけてそれを追求しています。私たちはそんな崇高な「夢の実現に貢献している」からこそ、お客様から感謝されて信頼していただけるのです。そうしたダイナミックな仕事の「やりがい」を、腹落ちしてもらえるようなマネジメントを心がけています。私自身、「なぜなのか?」を自問自答する道を歩んできたので、社員たちの気持ちは痛いほどわかるのです。

継続率98%。属人化をなくし、社員全員のスキルを向上。
──会社の強みや魅力を、どのように分析されていますか?
当社が手掛けるWebマーケティングの施策はお客様から高い評価をいただいており、おかげさまで継続率98%です。その結果そのものがシンプルに、「お客様に貢献できている」という確固たる強みだと思います。成果にコミットする独自の知見を有する理由は、16年間に渡って培ってきたノウハウにあるのです。また、その知見を社内に共有することで、全員がお客様に同じ質のサービスを提供できる「標準化」を確立したことも特徴だと自負しています。
この「標準化」の確立は、非常に困難を伴うものでした。特にWebコンサルタントという職種は個人の能力に依存するため、当社も以前はばらつきがありました。しかし、「標準化」によってマニュアルを浸透させたことで、属人化から脱却したのです。これにより、解約のケースがほとんどなくなり、Webコンサルタントも「お客様のため」という本来の業務に専念できることから、退職者は今のところゼロですね。
なお、「標準化」については、当社が運営し、私が講師を務めているWebコンサルタント養成講座スクールの『conowa』に入ってもらったり、そこで教えているコンテンツ動画を閲覧して学んでもらったりしました。ノウハウや技術をレクチャーするのはもちろんのこと、「お客様の理想に向き合い、本気で叶えるのが自分たちのミッションである」といった当社が大切にしている心構えなどについても、毎月の会議などでしっかりと伝えています。

変化する時代だからこそ、人生を豊かにするやりがいある仕事を。
──若者へのメッセージをお願いします。
現在はとにかく凄まじいスピードで時代が流れており、特にAIの普及によってより加速度が増しています。今は「イケている企業」であっても、10年後にはどうなっているかわかりません。そのため常に時代の最先端を意識することが大事で、柔軟に対応することが求められると思います。企業も然りなので、新しいことにチャレンジし続けている企業で活躍することが、自分の将来を考えたときに大事な要素になるのではないでしょうか。
また、仕事とはお客様に感謝されて喜んでいただくためのものです。だからこそ、大きなやりがいや醍醐味があります。例えば「HPを制作するだけ」では楽しくありません。HPを通してブランド価値を高めたり、集客に繋げたりするなど、「お客様と二人三脚で、課題を解決する」からこそ面白いのです。私たちはそんな「働く上での幸せ」を、極めて重視していますし、そうした「仕事観」を持っていたほうが、人生が豊かになります。
そして「やりたいことが見つからない」ことで悩んでおられる若い方も多いことでしょう。もしあれば、それだけで「幸せなこと」だと思います。実のところ、私も当社に入る前は「見つからない」側の人間でしたし、ほとんどの方がそうなのではないでしょうか。そんなときはこれまでの経験などで漠然と「嬉しかったこと」を思い出してください。私の場合は、アルバイトなどで「ありがとう」といわれたのが嬉しくて「誰かの役に立つことが好きなんだ」と自覚し、その線上に今があります。ぜひ、自分の原点を見つけ出すことから始めてください。