総合力が求められたときに感じた、初歩的なつまずき。
──逆境経験について教えてください。
大きな挫折を感じたことは、2回あります。最初は高校時代に、周囲の学力レベルの高さについていけなかったことです。小中とそんなに勉強をすることなく上位をキープしていたのですが、高校に入ると周りのレベルが高すぎて下から数えた方が早いような順位になってしまったのです。それがきっかけで、勉強よりも部活を優先し、硬式テニスと空手に全力を注いだ時期がありました。そのスポーツから得られたものは大きく、たとえば空手では、忍耐力や内面の鍛錬、精神的な強さや集中力が、教えてもらう中で自然と身に付いたと思います。
2回目の挫折は、起業後の出来事です。個人でできる動画編集から事業をスタートし、1ヶ月後くらいから、YouTubeチャンネル全般のディレクションを担うようになりました。1人でやっていたときとは全く違い、チームプレイで進めることが求められるため、総合的な力が必要になります。しかし、まったく経験がなかったので最初は本当に大変でした。初のマネジメントで期待通りにスタッフが動いてくれない、細かい作業が不得手、全体的なスケジュール管理に苦戦、報告の大切さをわかっていなかったなど、今振り返るとビジネスとしての初歩的なところでのつまずきがありました。そこで、「自分はなんて仕事ができないのだろう」という挫折を味わうことになるのです。
あとは、周りの友人たちと「一緒になにかしたい」と思って声をかけ、最初は意気投合するのですが、基準値が合わなかったり、一緒に走りきれなかったりした…といった出来事も逆境に感じました。
──学生起業家になろうと考えたきっかけは、何だったのでしょうか?
高校3年生のときにコロナ禍で学校が休みになり、将来について思い巡らす時間ができたタイミングで、「制約されることなく自由に、自分の経験を広げていきたい」と考えるようになりました。当時、地図を広げたときに見た「モルディブ」の美しさは、今でも目に焼き付いています。それを実現するためにYouTubeなどで調べているうちに、経営者や著名人のYouTubeに出会い「自由な時間や資金を手にするには、起業が近道だ」と考えたのがきっかけです。そこで、進学先も国公立理系から、比較的自分の時間がとりやすい私立文系に変え、2回生から個人事業主としてビジネスをスタートさせました。
「知られざる価値を見出し、世に届ける」のが理想像。
──卒業後、どのような会社になることを目指しておられますか?
定量的なところでいうと、卒業後に今のマーケティングの会社を10億円規模まで成長させるのが目標です。このフェーズに来れば強固なマーケティングチームができ上がっているとイメージしているので、チームのメンバーで新規事業を多数立ち上げます。その後、それぞれの事業をグループ会社へと発展させていくのが、今思い描いているビジョンです。大きな理想としては「優れたプロダクトやサービスなのに、社会に知られていない」といったクライアントをお手伝いして、世の中に広めていくことです。──逆境から学んだ教訓について、お聞かせください。また、仕事への原動力は何でしょうか?
最初の挫折から学んだことは、「とにかく量をこなすことの重要さ」です。そもそも「インプットする学習量が少なかった」ことに気づき、それからはとにかく同じ問題集を何回も繰り返して勉強することで、学力の向上につなげました。この「量をこなす」という教訓はビジネスの上でも役立っています。2回目の挫折については、独立直後の動画制作事業がトントン拍子に進んでいたこともあり、「自分ならできるはず」という傲りや甘えが根本の原因でした。そこで、まずは「報告を素早く的確に」「言語化して褒めるマネジメント」「依頼するときは、期日も時間も明確にする」といった、ビジネスとして当然のことをコツコツと丁寧に推進するようにマインドを切り替えたのです。
他にも、信用を得られることに直結する「即レス」にも気を使うようになりました。コミュニケーションにおいては、「結論から話す」ことを着実に実行。あとは、学業を大切にしつつ「仕事の話に、いつでも対応できる」という体制づくりを徹底しています。1回生のときは、学生生活を楽しみたいとアルバイトやサークルなどに励んでいましたが、独立後は遊びの誘いなども断り、事業にフルコミット。「言われたことは、何でもやる!」という精神でビジネスを展開中です。
仕事に打ち込む原動力は、口先だけになるのが嫌なので「発言したことは達成する」という考えが土台にありますが、シンプルに「負けず嫌い」という気持ちも強いです。あと、やはりビジネスをしていて一番うれしいのが、お客様に喜んでもらったときで、感謝の言葉をいただいたときに「仕事が楽しい」と心の底から感じます。また、一般的な大学生が経験していない世界に触れる毎日なので、「自己肯定感が高まる」という理由も、密かにあります(笑)。
超若手たちが、デジタルネイティブの強みを活かす。
──会社の強みや、印象に残っている事例ややりがいなどについて教えてください。
経営陣は21〜23歳、メンバーは18~19歳といった超若手が在籍しており、デジタルネイティブ世代視点でのサービスを提供できるのが大きな強みです。組織としても、小回りが利くため、柔軟でスピード感を持ち、なおかつ丁寧な対応を実現しています。また、Webマーケティング全般を手掛けており、集客媒体の運用のみならず、LP制作や公式LINEのファネル構築など集客後の商品成約、分析に至るまで一気通貫できめ細やかにサポートします。さらに、多岐にわたるプラットフォームに対応し、クライアントの商材に最適なマーケティング施策の提案が可能です。加えて、「学生向けのSNSメディア」を有しており、コミュニティとしての機能も提供できます。
印象に残っているのは、1年間で20以上のYouTubeチャンネルを立ち上げ、コンテンツの制作から運用、売却までを成功に導いた事例です。1つのチャンネルごとに、数百万規模の売却益を達成しました。やりがいとしては、考え抜いた自分の企画が当たり、閲覧数やコメントの数が多いと胸が躍ります。逆に「絶対にイケる」と確信したものがコケることもあるので、興味深いところです。試行錯誤しながら数字に基づいた分析と、PDCAを回すということが好きなので、仕事自体が楽しいですよ。あとは、ミームにあった企画がウケたときや、良いサムネを作れたときも喜びを覚えます。
一歩踏み込む勇気を持ち、実行しよう。
──経営理念についてお聞かせください。
人間には「強み」と「弱み」があります。例えば私だと「味方につける巻き込み力」「いろいろなことにチャレンジする挑戦力」「ポジティブ」を評価してもらうことが多いのですが、逆に「細かい事務作業」は苦手です。しかし、世の中には「事務処理能力に優れている」方もいらっしゃいます。お互いの弱みを補いながら、個人の強みを最大限に発揮できる組織をつくり上げることが、経営理念です。最高峰のパフォーマンスを出せる会社にすることで利益を伸ばし、自社社員を含めステークホルダーに還元する方針です。ビジョンとしては、私自身がYouTubeを通じ、マーケティングの力で“起業の世界”を知ることができ、人生が変わりました。次は私が、「新たな可能性を広げるような影響」を与えられる人物になることを目指しています。
──最後に若者へのメッセージを、一言お願いします。
何かやりたいことが心の中にあっても、実行できていない方は結構多いのではないかと想像しています。しかし気になることがあれば、偶発的なきっかけを待つのではなく、飛び込んでみましょう。「まずは実際に行ってみる」など、一歩踏み込む勇気を持って欲しいです。また、私自身も「きっかけ」を提供したいので、「何かやりたい」ときは、ぜひ声をかけてください。「考え過ぎて動けない」なら、「頭をフラットにして、とにかく行動」した方が自分のなかの正解に近づけるのではないでしょうか。
飛び込んだとき、大切に扱ってくれることが多いのは、若者の特権です。もちろん、それに甘えることなく実力を培うのは当然のことですが、せっかく持っている「若さ」という武器は、ぜひ積極的に使いましょう。