行動で人生が好転するのは嘘じゃない
――これまでの逆境経験を教えてください。
40代となりましたが、20代前半は起業の失敗によって借金まみれで、学歴も職歴もない僕は借金を返すためにバイトを掛け持ちしていました。給料が入ったらすぐに返済する生活は残酷で「こんな日々がいつまで続くのか」と、みじめで仕方なかったです。
そんなとき「行動に移すと、人生が好転しはじめた」という言葉に出会ったんです。最短で借金完済するための期限を決めて、辛い仕事にもやりがいをもてるようになりました。でも、根っからの悲観的な人間ですし、数日間しか保たなかったですね。
ずっと、反省しては行動するの繰り返しでしたが、次第に習慣になっていったんです。やっぱり、行動すれば人生が好転するのは嘘ではなかったんだと。そこからは不思議と人との縁が広がり、稼ぐためのアドバイスをもらえるようになったり、報酬の高い仕事を紹介してもらえるようになったりと、人生の流れが変わりました。何事に対しても可能性を信じて、あきらめずに挑戦する大切さを教わった体験でした。
ずっと「壁は乗り越えられる」と信じて
――その後、現在の会社を創業された経緯をお聞かせください。
創業したのは20代で作った借金を無事に完済したあとも、現実の壁にぶつかったのがきっかけにありました。アルバイト生活から抜け出して、会社員として働こうと思って何十社と面接を受けても、学歴や職歴、実務経験も評価されない僕には、一社も振り向いてくれなかったんです。そんなとき、知人が一言「だったら会社をつくればいい」と背中を押してくれて。学歴や職歴に関係なく、あきらめずに努力している人がチャンスを得られる会社を作ろうと思って、勢いのままに創業しました。
――創業後は順風満帆だったのでしょうか。
いえ、新たな逆境が待っていました。数えたらキリがないほどの壁が立ちはだかっており、売掛金の未払いで倒産寸前の危機に陥った時期もあったし、従業員が大量にいっせいに辞めてしまい事業がまわらなくなって。売上が明らかに低下しつつも、打開策がまったく見えずに頭を抱えていた時期もあったんです。
ただ、そんな状況下にあっても、20代で味わった逆境体験も糧にして「すべての壁は乗り越えられる」という想いを、忘れずにいました。今は辛いし、苦しいと思っていても「必ずできる」と信じていれば、人間はどんな壁であっても乗り越えられるんです。立ちはだかる壁は成長のきっかけになりますし、そこから逃げてしまっては「成長できない」という信念を貫いて、幾度となく会社のピンチを切り抜けてきました。
自分自身も、よりいっそう強くなりました。仕事にしろプライベートにしろ、困難があっても「大丈夫」と言い聞かせながら、逃げずに逆境と向き合うのがすっかり板に付きました。僕の好きな曲として、Mr.childrenの「終わりなき旅」がありますが、特に歌詞が好きなんです。一度きりの人生で、壁を乗り越えて見た絶景は忘れられないものになると、いつでも思い出させてくれる曲ですね。

決めた選択肢を「正解」にできるのは自分
――逆境を乗り越えながら、経営される上での哲学を教えてください。
創業から18年以上経ちますが、「人生に正解などなく、自分が選択した道を、自らの頑張りによって正解にしていくしかない」ことを重視しています。誰でも、自分で決めた選択肢だったとしても迷った経験があると思うんです。「こっちで正解だったのか」「あっちへ行った方がよかったか?」と考えるのは自然なこと。ただ、自分で選んだはずなのに「違っていたか」と後悔する人を見ると、僕は切なくなってしまうんですよ。
たとえ一時であっても、その瞬間に「最良」と考えた選択をするために使った時間は、決して間違いではないと思うんです。それでも「隣の芝生は青く見える」という気持ちで迷い、ためらってばかりの人生を過ごしてしまうのは時間がもったいない。たしかに世の中、何が正解か分かりません。ただ、自分で選んだのであれば、進んだ道を正解にすればいいんです。大事なのは言い訳せずに努力を重ねることで、もし、別の選択肢が優れていたのであれば反省して、次によりよい選択肢へと進めるように活かせばいいと思っています。
働く上でも、この考えは大切ですね。どこの会社であっても入社するには理由があって、のちに「求めていた環境と違う」となっても、そもそも、入った時点では「この会社が正解だ」と思っていたはずなんです。迷ったら「日々の忙しさに追われて自分本位の仕事になっていないか?」「上司や先輩の指示待ちになっていないか?」と、いったん自分に問いかけてほしくて。一度決めた選択肢を「正解」とするためにも、ブレずに自ら学び続けて、自分を高めるための努力を怠らないでほしいです。

身近な「変え癖」で一歩前進してほしい
――最後に若者へのメッセージをお願いします。
大相撲の元横綱・千代の富士さんが言っていた「今強くなる稽古と、3年先に強くなるための稽古と、両方をしなくちゃならない」という言葉が、ずっと心に残っているんです。将来、結果を出し続けるためには、今も未来も自己研鑽を図る必要があると教えてくれる言葉ですが、どんな仕事であっても、忘れてはいけないと思っています。
誰かのために働いてお金をいただく人たちは、誰もがプロフェッショナルなんです。ただ、いつまで経ってもアマチュアやセミプロ、学生気分でいる人たちも一定数います。もちろん、最初からプロになれる人はいません。それでも、汗を流しながら下積みを重ねた先で、プロである自覚を持つのが大切だと思っています。
もし今「そこまでの自信を持てない。でも、変わりたい」と思っているなら、習慣を変えましょう。人はしみついた習慣に沿って、生きているものです。僕は重要度の高い行動から、優先して時間を作るようにしています。週2〜3日は早朝にジムで体を動かし、優先度の高い仕事を。それ以外の日は緊急度が低く重要度の高い仕事をこなしているんです。会社の創業前には、将来のために働く時間以外を自己投資にあてていました。移動時間は生産性がないという考えから、多少家賃が高くともオフィスの近くに部屋を借りていました。
人間関係も重視して、マイナス思考かつ他責な人とは付き合わないようにと心がけています。周囲の環境は人生を大きく左右します。すべてを今、ガラッと変える必要はありませんが、身近でささいな物事から変化を与える「癖」を身につけて、みなさんが一歩前進できるように願っています。