過度なリスクを避けることで、逆境を事前に回避へ。
──逆境経験について教えてください。
実のところ、ほとんど感じたことがないんですよ(笑)。経営を始めてからは、特にその傾向が強いです。強いていうなら高校卒業後に専門学校に進学し、厳しいカリキュラムの中で語学の勉強に打ち込んでいた頃、周りは大学で楽しそうに遊んでいる姿などを見たときでしょうか。「隣の芝は青く見える」ではないですが、羨ましさを覚えた記憶があります。それで持ち前のハングリー精神にさらに火が付き、編入先の大学には首席の成績で食い込むことができました。その後、早期の経済的成功や自立を考えて中退し、まずは個人事業主として起業してから、当社の設立に至ります。
大きな失敗をしないように、事前にリスクヘッジを行うという考え方は少年時代に既に身に付いていました。目標達成に向けて戦略を練り、それを言語化して周りに伝えることで達成すべきポイントを共有していたので、早熟なタイプだったのかも知れません。ただ、今思えば若いうちに「想定外の失敗」を経験しておくのもよかったかもしれないと思います。
このようなメンタリティが形成された背景としては、シングルマザーの家庭で育つなかで、物心がついたときに母親の背中から感じた、お金に関する大変さがありました。自由を重んじる一方で自己責任を重視する教育方針で育ち、子どもの頃から大人の事情を汲み取り、早々に自立心が芽生えたのだと考察しています。
高校はサッカーの能力を高めるために強豪校の私学に進学したのですが、進学後も1年生の時点で、「卒業後」を見据えて活動していました。そこで、グローバル人材になり活躍するため、語学の習得を選択したのです。学生時代は、勉強が好きだったこともあり、英語とフランス語に1日12時間ほど取り組んでいました。また、起業と重なったことなどから途中で辞めたのですが、USCPA(米国公認会計士)のライセンスを取得するための学校にも通っていましたね。
横並びの就活に感じた「違和感」が、起業のきっかけ。
──逆境を事前に回避するような技術は、どのように身に付いたのでしょうか?
きっかけについては、正直なところわからないというか、自覚はありません。ただ、「一般的には逆境」ということを色々と経験してきたので、メンタルが鍛えられました。そのおかげで、大変なことでも「辛いと捉えない鋼のメンタル」と、「何かあっても感情的にならず、理性的に解決策を模索し行動する」というスタイルにつながっていると思います。例えば、直近で外車1台を買えるほどの金額の電子マネーをハッキングされ、立て続けにそれ以上の額を携帯電話のキャリア決済で不正利用されました。笑
前者は現在毎月のタイミングで返ってきています。しかし、後者はありとあらゆる手を尽くしたのですが、どこにも保証する機関がないことから、二度と戻って来ないことが判明しています。普通の人なら精神的に参ってしまうと思いますが、私の場合、ダメージは受けたもののSNSでネタにしていましたね。
──起業された理由をお聞かせください。
大学に編入して感じた「違和感」が理由の1つです。周りが3回生で単位を取ったあと、4回生になってからは企業のインターンに行き、その後早々に就活を終わらせることを「当然」と捉えている環境下で、「果たして、このまま普通に就職するのが正しいことなのだろうか?」と疑問を持つようになりました。会社という大きな組織では、最初からいきなり“自分の強みを存分に発揮する”というわけにはいかないですし、やりたいことを実行しようとしても時間がかかります。「だったら、独立しよう」と考えるようになり、経営者の方々にお会いして、さまざまなことを教えていただくうちに、起業へと舵を切ることにしました。
第一線で経営を経験してきた、筋肉質なボードメンバー。
──会社の強みについて教えてください。
私も含めて、役員全員が自分の会社を運営してきた経営者、または、スタートアップ企業の立ち上げメンバーだということです。既にノウハウも知見も持つ経営陣がコミットしており、それぞれの持ち味を存分に活かし切る分野を役割分担して推進している組織体なので、ビジネスの質もスピードも段違いだと言えるでしょう。実際、「1期目なのに、いきなり成果を出していますね」と評価されることは非常に多いです。
現在当社が手がけている事業領域は、「福祉」と「人材」です。福祉事業では、障がい者の方に向けたグループホーム『NOBLE GROUPHOME』の運営を行っています。「帰りたくなる家」という想いを大切にしており、現在は難波・天王寺・京橋・南森・都島に5つの施設と、子会社である「WELL Living」と「WELLNESS LIFE」であわせて10箇所の施設を運営しています。人材事業では退職サポートサービスとして、『RE START』を展開。こちらは、例えば「精神的に疲れて、会社を辞めたい」といった場合に、失業保険に関する的確な知識をお伝えするといったコンサルティング業務になります。
──勉学での驚異的な成果は、経営においてどのように活かされていますか?
ニュースやデータなどに対して国内と海外からのソースを読み解き、多角的な視点で観測するスキルや感覚が養われました。また、言語を問わず「情報処理能力」は向上したと思います。
現在もそれらのスキルを活かし、今後流行っていくビジネスモデルの考案や再現性高く収益を生み出せるモデルの構築などを得意としています。
「起きた事実は1つ。解釈は無数」を指針に。
──若者へのメッセージをお願いします。
私が好きな言葉に、尊敬する先輩からの「起きた事実は1つ。解釈は無数」というものがあります。正直、そのフレーズで世の中の問題は全て解決するんじゃないかと感じたくらい、心に刺さりました。起きた事象はどうしようもありませんが、どんなことであっても「成長の糧にする」ことで、ポジティブに変えることができます。人生でもビジネスでも数々の困難が立ちはだかってきますが、悩んでも解決につながらない内容なら、その時間は無駄なだけです。であれば成功事例を探したり、知見のある方に相談したりした方が建設的ではないでしょうか。
また、「ありのままに生きる」ことも私の指針の1つになります。これは「わがままを通す」という意味ではなく、自分の信念や個性を社会に押し潰されない覚悟をもつことです。今の時代は、5段階評価で「オール4」といった優等生タイプよりも、「ほとんど1や2だが、輝く5がある」という特化している部分を重んじ、それを磨き上げることで自分の色を出していく方が面白いと思います。
あとは、AIの発達など目まぐるしく変化する社会ですが、どんな時代になっても必要とされる「人間力」は、今後さらに重視されることでしょう。ビジネススキルは教えることができますが、定量化できない「人間力」を後から鍛えることは難しいです。しかし、「恩を受けたら、心からの感謝の言葉を伝える」といった当たり前のことを積み重ねていくことで、形成されます。私も若者の1人であり、まだまだこれからだと自覚しているので、みなさんと一緒に高みを目指していきたいです。