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【株式会社コミクス 鈴木 章裕】「いざというとき、逆境に向き合えるか?」──常に最前線を走る経営者の人生訓。

2024/11/05

Profile

鈴木 章裕

株式会社コミクス 代表取締役社長(CEO)

ネット黎明期からIT×広告業界に飛び込み、企業の立ち上げからグループ会社4社の設立などを経験後、株式会社コミクスを起業した鈴木章裕氏。革新的なサービスを次々と立ち上げ、現在はSaaS事業者とカスタマーをつなぐメディア『kyozon』や、統合型営業支援ソリューション『bond プレミアム』、国内最大規模のプロ人材斡旋サービス『デジパラ』などを運営している。また、「ものすごいベンチャー展、地方創生サミット」といった大規模イベントを主催者として手掛ける。

今回は、経営ノウハウとデジタルマーケティングの双方に豊富な知見を持つ鈴木氏に、逆境経験と、逆境に向き合うことで躍進してきた会社の成長ストーリーなどを伺いました。

暗雲でさえも奮起するバネに変え、晴天へ。

──起業後の逆境体験と、会社の成長ストーリーを教えてください。

実は創業の段階から逆境でした(笑)。当社を立ち上げた2007年、SEOやLPO(ランディングページ最適化)、PRの価値換算などを全て内包した、今でいうMAツール(マーケティング自動化)の走りのような統合型ツールを開発。当時、資本金3100万円の中、2400万円の投資をしたのですが、トータルで800万円の売上という結果でした。スタートダッシュの段階でいきなりコケてキャッシュアウトしかけるという、まさに試練が与えられたのです。しかし、「順境よし、逆境さらによし」という松下幸之助さんの名言通り、チャンスがやってきます。その統合ツールをLPOやSEOといった、機能別に特化したサービスに切り分けて販売したところ、大ヒットしました。

指数関数的に4期の売上が急成長するなど「万事うまくいっている」という経営状況のなか、なぜか利益が思ったほど上がっていないことに気づいた頃、ある陰謀が発覚。なんと、当時の責任あるポジションを任せていた2名がダミー会社をつくり、億単位の資金が流出していたのです。大きな裏切りにあい、意気消沈して帰宅したある日、幼い子ども3人と奥さんが和室で4人並んで寝ているのを見ました。その愛おしい姿に感情が揺さぶられ「絶対に負けない!」という闘志が、沸々と湧き起こるのを感じたのです。そして、裏切った2名が「使えない」とこき下ろしていた若手4名と猛烈に奮起し、史上最高の数字を叩き出すことに成功しました。結局のところ、その4名は元々非常に優秀なのに、2名が無理やり抑え込んでいただけだったのです。これも「逆境があったからからこそ、得られた」ことでした。その後は『EFO CUBE』といった3つのWeb接客ツールを開発するなど、順境が続きます。

次の逆境は、広告主と最適なカスタマーをつなぐプラットフォームである、「DSP」をリリースしたときです。不正クリックなどで、「支払いだけが発生する」という被害を受け、世界有数のベンダーにその証拠を提示しても却下されるという事態に。これには後日談があり、国内大手広告代理店グループが追求し、「アドフラウド」問題としてデジタルマーケティング業界では大きな話題になりました。しかし、その1年前に我々は発見していたのです。「DSP」は早々にクローズしたのですが、そこから得られたのが最先端の負荷分散処理技術です。大量のアクセスを瞬時に捌く、ターゲットの興味や関心に応じて適切な広告を訴求、記事のライティングの自動化…といった知見を、昨今の「AI」ブーム以前から有することができました。

試練があるからこそ、人間性もビジネスも磨かれる。

──逆境を経てからの会社の歩みをお聞かせください。

コロナ禍になって、戦略的に主力事業2つの売却を決意。社員は70名から20名ほどになりました。ビジネス領域を絞り、SaaS事業者支援メディア『kyozon』に資本を投下。ここでも逆境と学びがあり、当初はSEOによるプロモーションに注力していたのですが泣かず飛ばすの状態でした。しかしあがくうちに、ひょんなことからSEOからではなく、提携メディアや広告からの流入が多いことが判明したのです。切り替えたことで、アクセス数8倍、資料請求ダウンロード数の増加率54倍、粗利が昨対550%を達成。ただし、もっと上を目指しています。メディアをつくる理由は、より多くの人に利用される媒体に育て上げることで、メディアを軸とした展開の裾野が広いからです。

あとは、国内最大規模である、約15万人ものプロ人材斡旋サービス『デジパラ』ですが、最初はデジタル人材に特化しており、在籍2500名に対して月30件ほどの問い合わせという状況でした。こちらも、複数の大手人材会社などとアライアンスを組むことで、人数や職域が飛躍的に拡大。また、一般的には「50%の手数料」が相場ですが、当サービスでは20%に。クライアントは、わかりやすいインターフェースのデータベースにアクセスして条件を打ち込むと、すぐに適したプロ人材が出てくるシステムを整えています。

──これまでの逆境経験から得られたものは何でしょうか。

起業後、試練とそれにぶつかる中で考えが磨かれたり、物事が逆にプラスに転じたことは多いです。私自身、人を判断するときには「その人の逆境体験」を参考にしています。例えば採用では、これまでの苦労と、そこから学んだことを絶対に聞いています。逃げ出すのは論外ですが、「向き合って、コツコツと努力した」という実績があれば、現時点での成績は気にしません。向き合うという「素材」さえあれば、優秀なビジネスパーソンに育成する自信があります。ただ、一方で経営者として逆境から得た教訓は、「損切り」も重要だということです。ダラダラと続けるだけではなく、ときには冷徹な意思決定も求められます。

「AI×有識者×パーソナライズ」で具体的かつ高い精度を。

──直近でリリースされた『トップ営業なれるくん』について教えてください。

LINEやLINE Works、Chatwork、Slack、WowTalkで質問すると、当社独自の名だたる有識者の教師データを実装したAIが連動して、的確かつ具体的な返答が出てくるサービスです。有識者は誰もが知るネット企業の常務や年間5億円以上の売上を叩き出す営業、40社以上の顧問を担当する元上場企業の人事責任者など、大量かつ特別なナレッジが注ぎ込まれています。なおかつ、そのままデータ化するのではなく、何千回も試行錯誤を繰り返し、手間暇も資金もかけました。

特にオススメなのは「自社の営業を育成したい経営層」「経営相談したい経営者」「マーケティング力を強化したい経営層」「新規事業の壁打ち相手がほしい経営層や事業責任者」といったところですが、可能性は無限大に広がっています。おかげさまで、5月27日にクローズドでローンチしたのですが、57件のオンライン商談で50件受注をいただくという好評ぶりです。

サービスの特徴は多々あるのですが、例えば一般的な「AIあるある」として「プロンプトが下手で、明確なアンサーが得られない」という課題があります。当サービスは、正しいプロンプトを出さなければダメ出しが、良ければ褒められるという仕様です。また、事例を挙げると、「トップWebデザイナーを目指しているデザイン学校の生徒」の質問に対して、「興味があることはフッ軽に行動を」といった、小難しい言葉ではなく馴染みやすく心に響くワードをチョイスしてくれます。

ほかにも「テレアポで苦悩している家族がいるが、どんな風に接すればいいか?」という問いに対して、「それは大変やな。愛と感謝の言葉をかけることがまずは大切やで」と、関西弁でまろやかさを醸し出しつつ、一歩踏み込んだアドバイスを得ることができるのです。ちなみに、ほかの方言の拡充も計画しています。

あとは、24時間問いかけがなければ、「大丈夫ですか。疲弊し過ぎていませんか?」と尋ねてくる機能もあります。それに「忙しすぎる」と返すと、その人の趣味や好きなことを反映した答えが返ってくる特徴があります。私の場合だと「自然・読書」といった実践的なアンサーが出てきました。通常のAIは、一般的で「可もなく不可もなく」といった模範解答が多いですが、『トップ営業なれるくん』では、有益な情報を得ることができるのです。

SFや夢物語。今、まさに具現化している最中!

──若者へのメッセージをお願いします。

今は最高の時代で、とにかくチャンスに溢れています。現在、AIが世界を席巻していますが、みんなが知るようになってから、わずかしか経っていないテクノロジーになります。つまり、ベテランの社会人だろうと、学生だろうと同じ土俵で戦うことができるので、一気に経験を飛び越えて、業界の第一人者に躍り出ることが可能なのです。振り返ると1990年代後半にIT革命がやってきて、名だたるIT企業が産声をあげました。さらに2007年に、「初代iPhone」が発売され、世界に変革がもたらされたのです。

それと同様か、それ以上に革命的なことが起こっているので「このムーブメントに乗るしかない」というのが、若者へのアドバイスになります。世の中の不満や不便なことを見つけ出し、「改善できるサービス」を考案した場合、AIを駆使すればほとんどコストをかけることなく開発できるのです。だから、若者こそ立ち上がって「自分で商売をしましょう」と伝えたいです。きっと最高に楽しめますよ(笑)。SFや夢物語とされていたような出来事が、次々と実現したり、具現化に向けて動き出しています。ここから先はさらに加速度的に進むことでしょう。ワクワクを謳歌できる時代です。

株式会社コミクス

設立 2007年9月6日
資本金 7084万円(2024年3月末現在)
売上高 非公開
従業員数 非公開
事業内容 SaaS支援事業
デジタルトランスフォーメーション(DX)支援事業
URL https://www.facebook.com/comix.ceo https://x.com/ceo_comix https://youtu.be/rEpaO6RjK4g?si=5IvARRE9X-POg8Ay
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