家族への愛情が、起業のきっかけに。
──逆境経験について教えてください。
逆境とは少し違いますが、想定通りに物事が進まず方向転換したことがあります。私には年齢が7つ離れた弟がいるのですが、足に障がいを持って生まれ、車椅子で生活をしています。その大切な弟が大学卒業後、数年間就職が決まらなかったことから「一緒に事業をしたい」と考えるようになったのです。当時、東証プライム市場の福利厚生アウトソーシング企業に勤めており、当時最年少で部長に昇格するなど頑張っていたところだったので「今の会社で役員まで出世して弟を支える」、もしくは「自分が起業して一緒に働く」かの2つ選択肢が思い浮かびました。2つの選択肢で葛藤を抱えているとき、個人経営だった父親が脳出血で倒れ、収入が無くなるという事態に陥ったのです。
ちょうどそのころ、有難いことにストックオプションの権利を行使できるタイミングでまとまった資金が入ってきたこともあり、「それを資金にして、父親と弟のためにも起業し、お金を稼ごう!」と一念発起。そして弟と一緒に車椅子で街中を調査で周って、実体験をもとにしたバリアフリー事業を立ち上げようとおもっていた矢先、なんと弟が母校の大学に就職が決まったのです。確かにベンチャー企業はリスクが高いので、弟には兄と一緒に苦しむかもしれない選択よりも、大学の職員としての選択を応援しました。
とはいえ、自分自身は会社へ退職の意思を伝えていたので、自分自身で真剣に決めた起業の道へと進みました。そこからは自身のキャリアの棚卸しをして、私には「新規開拓の法人営業しかない」という結論を出し、当初は個人事業主として、販売代理店業務をスタートしたのです。比較的順調な滑り出しでしたが、某クライアントと条件面で裏切りにあうという生きるか死ぬかの本当に悔しい“逆境経験”がありました。
途中で諦めず、自身で決めた目標設定を探求し続け、行動し実現する。
──経験された逆境から得た教訓についてお聞かせください。
上述したほかにも、幼少期時代から打ち込んでいた空手道で、道場同士の対戦で敗北を喫し指導者から厳しい叱責を受けたことがあります。また、新卒で入社して当初は全然営業成績が伸びず、苦労した経験も“逆境”といえます。
空手道での経験は人生に大きく関わっており、「ラッキーパンチには頼らない。自分の手で掴み取る」という教訓を得ました。決勝で負けたときに叱咤激励を受けたおかげで、「結果を出せなかったのは、努力が足らなかったからだ」と目が覚めたのです。そして、「ライバルが2倍練習をしていたら、自分は3倍!」と決めて地道に頑張った結果、「近畿大会8連覇」「全国大会準優勝」「世界大会準優勝」のタイトルを受賞することができました。目標設定があって、努力し、行動して結果を出すこととビジネスも同じです。「達成するまで探求し、やり続ける」途中で諦めず、実行し続けることがとても大切なのです。
新卒入社のときの苦労から学んだ教訓は、相手の話を聞いてニーズの把握に注力し、「課題を解決に導く力を磨くこと」です。最初は「この福利厚生サービスはお得ですよ!」と、自分が売りたい商材のことばかりを一方的に伝えていたのですが、全く通用しませんでした。それを上司に指摘されてから、「月の福利厚生費はどのくらいですか?」と、じっくりお伺いした上で、「データでは、このくらいの金額が平均的です」と提案するスタイルに変えたのです。すると徐々に信頼関係を構築できるようになり、「実はこんなことに困っているんだけど」と、採用や人事など本業以外の領域についても相談していただけるようになりました。その経験が今の“独自のビジネスモデル”にもつながっています。
あとは、独立後コンサルティング会社の営業責任者としてジョインさせていただいたのですが、そこの代表の探究心やコンサルタントとしての仕事ぶりを間近で学ばせていただいたことがありました。凄腕の代表を見て「絶対に勝てない」と思い知りました。そこで戦略に特化するコンサルティングではなく、クライアントと共に汗をかいて営業の課題を解決するという今の事業内容の方向性に舵を切ったのです。そこで学んだ「探究心」は私にとって基盤になっています。
画期的な「課題、ニーズからの逆算型営業」のビジネスモデルを構築。
──会社の強みや独自性などについて、教えてください。
強みは、私が営業のプレイヤー及びマネージャーとして培った知見を活かした「営業顧問」と「SS/A(サブセールス/エージェンシー)」の大きく2つの事業になります。コンサルティング業務に留まることなく、組織づくりや改善といった課題に対して戦略から戦術、アクションに至るまでを並走型で推進するのが特徴です。
“独自のビジネスモデル”としては「SS/A(サブセールス/エージェンシー)」があります。これは各業界で活躍中の営業パーソン約80名と当社がアライアンスを組み、自社では解決できないお客様のニーズや課題を営業パーソン、または営業部より当社が買い取り、ソリューションできるクライアントに紹介する“ニーズや課題からの逆算型営業”が可能なスキームです。
例えば、証券会社の営業の方が経営者へ訪問した際、証券以外のお困りごとである「オフィスの内装を変えたい」「集客効果の高いHPを制作したい」「福利厚生を拡充したい」といった課題を引き出すことができた場合、自社では解決できていませんでした。せっかく経営者は信頼して相談をしているのに、自身の会社の評価に繋がらない紹介はしないといった機会損失が営業現場では多く起きています。そこで「SS/A」を駆使すれば「内装であれば内装に強みをもった施工会社」「HPは集客に強い制作会社」「福利厚生の拡充を実現する福利厚生会社」に、それぞれ紹介することができるので、今まで紹介するリソースをもっていない営業の方や自社評価ばかり気にしている営業の方が、目の前のお客様のお困り事を解決することができ、そこから自社商材を採用いただく近道となるのです。営業パーソンへは、当社からのインセンティブとお客様の課題を解決し信頼関係が強固になり、「SS/A」のクライアントは、成約率が向上していく。三方よしの実現が可能なスキームとなります。
事例をひとつ挙げると、ある宿泊施設で約1億円のコスト削減に成功したケースがあります。完全成功報酬で請け負い、相応のインセンティブに加えて、社長からは「あなたのお陰で助かった。ありがとう!」感謝の声をいただきました。
目標に向かって一歩ずつ前進すれば、必ず掴み取れる。そして、柔軟性やバランス感覚も大切。
──若者へのメッセージをお願いします。
私も苦労はありましたが、それでも「目標に向かって一歩ずつ前進すれば、必ず掴み取れる!」という言葉を送りたいです。諦めず喜怒哀楽を経験し、目標を達成する喜びを、自分の手で掴み取る経験をして欲しいと思います。いきなり大きな目標だとハードルが高いので、まずは小さな目標から始めて、徐々に高くしていくことをオススメします。目標を決めたら、諦めないことも最も大切です。
目標は「自分の働きたいところに就職したい」「独立を狙っている」など、それぞれ違うと思いますが、言葉にしているだけでは状況は変わりません。行動あるのみです。まずは、経験を積んだり、信用できるパートナーに出会ったりするために挑戦をしてください。そのとき「自分が欲しいと考えているものに、あとどれくらいの壁があるのか」を把握し、乗り越え続けると自分の夢を叶えることにつながります。また、どんな経験も無駄ではなく、自分の財産になります。
また、日本社会の構造では決裁者は40歳以上というケースが多いため、なかには「上の世代が保守的で、斬新な意見が通らない」という局面に、歯がゆい思いをしている若い方もいらっしゃることでしょう。そんなときに、自分のやり方を貫くのもすごいことではありますが、一方で上の世代に合わせながら自分の考えを通していく柔軟性やバランス感覚を養うと、スムーズに物事が運んだり、かわいがってもらえたりするので有益です。
もしこの文章を読んでいただいて「松本と話してみたい」と思っていただいた方は、相談に乗るのでぜひお声がけください。私も上の世代からたくさんの学びをさせてもらったので、これからは次世代につなげていきたいと思っています。