米国での経験が今の会社のルーツに。
──人生での逆境経験や、乗り越えた手法などを教えてください。
大学卒業後、インテリアデザインを学びにサンフランシスコにある大学院に進学したのですが、そのときに逆境とそれを乗り越える経験をしました。まず最初に、欧米人たちが私たち日本人に対して一定の“先入観”や“偏見”を持って接しているように感じられました。
「逆境に身を置いているからこそ発信をしていこう」と心に決めて、特に英語も得意ではなかったですが、身振り手振りを交えて積極的にコミュニケーションを図り続け、それにより自分自身、外国人に対する苦手意識やプレッシャーが自然と無くなっていきました。
また、「フェアな実力主義」が貫かれているのがアメリカの良いところです。成果を残したら、「学生も教授も、オープンに評価・褒める文化」が根ざしています。その評価システムや努力に対して前向きな環境に感化され、寝る間も惜しんでデザインに没頭していた記憶があります。今思えば、最初に彼らから感じた壁は自分がつくり出したものだったのかもと思えます。
帰国後は、企業ブランディングなどを行う会社に就職し、インテリアデザインを担当。そこはいわば“下積み”の時期で、「年間を通じて、休みが数日しかない」「業務が終わらず会社で寝泊まりする」といった環境で4年間を駆け抜けました。現代社会だと通用しない働き方・働かせ方だと思いますが、若く勢いのあるメンバーで構成された会社だったのである程度そうせざるを得なかったかと思えます。また、当時の自分には思いっきり働いて思いっきり稼いで、といった先輩達のスタイルが格好良く見え、労働としては過酷だったかもしれませんが、いやいややっていた感覚はなかったです。
ブランディング会社でしたので、グラフィックや映像、サイネージなど、インテリアデザイン以外のクリエイティブに関する知見も身に付けることにもつながりました。そこでの経験を礎に、29歳で起業するに至ります。
20代は日々膨大な仕事に追われていた。
──起業後のご苦労や、それをどのように克服されたかなどをお聞かせください。
前職の経験を活かし、「空間デザイン」を手がける会社を立ち上げました。最初はビジネスマッチングやテレアポなどで、多方面にアプローチをしたのですが、知名度が低いことからデザインの案件はほぼ無く、設計図面をひたすら制作し続ける下請け業務がメインでした。本来やりたかった「デザインの案件ができない」という葛藤はありましたが、前職の会社の枠を超えた多くのデザイナーが手がける案件をサポートできたことで、多くのデザインリソースを吸収できました。2年程たったあたりから同時にデザインを担当できる案件も増加し始めていきました。
立ち上げから4年が経過したころにはクライアントのご要望を伺ってコンセプトに落とし込み、構成を立案するディレクターの役割を担っていくように。デザインの細部は外部のプロと一緒に作り上げ、全体を見渡しながら成功に導くのがミッションです。コロナが明けたタイミングから国内のみならず海外の空間デザイン案件も増えていき、シンガポールに海外の空間デザインに特化した拠点も構えました。最近、積極的に取り組んでいるのは、主にシンガポールやタイ、マレーシアに進出する日本法人の出店サポート事業になります。不動産斡旋から契約関係、空間デザインはもちろんのこと、施工までお手伝いし、空間に関係する事は一手に引き受けます。
──逆境や苦労体験から得られた「教訓」はなんでしょうか?
空間デザインの業界は、クリエイターやアーティストと同じで好きな人がたくさん集まってくる世界ですが、「やり続けること」が難しい職種でもあります。20代がむしゃらに走り続けて、30代になったとき、ふと周りを見渡すとライバルたちが減っていることに気が付きます。20代の時は尊敬する人やカッコ良いと思った先輩の真似をして、目の前のことにとにかく没頭する時期で良いと思います。
「空間デザイン+映像といえば、リモード」と言われる世界線を目指す。
──会社の強みや独自性などについて教えてください。
当社の特徴は、空間に映像を持ち込むデザイン手法です。インテリアデザインとして美しく機能的であるのは当然としながら、リアルでは実現できない箇所でも映像なら可能な、アート演出や、プロジェクションマッピングを取り入れた空間設計を得意としています。空間の随所に、訪れた方が楽しみを覚える仕掛けを提案いたします。
VR技術が進み、仮想空間をよりリアルに感じられる動きの一方で、当社はリアル空間にデジタルを組み込ませ、ヴァーチャル体験をより日常的なものにする流れをつくりあげます。今後多くの空間デザイン会社が参入し進化する分野だと思っています。その中でも先駆けとしての立ち位置を確立できるように日々鍛錬していきたく思っています。
融通の効く働き方と空間デザイン・海外に興味のある方は是非!
──若者へのメッセージをお願いします。
若いうちに海外を経験する事をおすすめします。例え、長期滞在でなくても、日本を出ることは、人生の価値観を広めてくれると思います。
「コミュニケーションを楽しみたい」という方にも海外は向いており、なおさら会話の軸となるものがあれば、より深いコミュニケーションをとれます。当社の場合であれば間違いなく「デザイン」を軸に世界の方々とコミュニケーションを取ることができます。
この記事を読んで私や当社に興味を持っていただけた場合はぜひお声がけください。