ユーザー数200万人突破の駐車場サーピス
—— 事業内容を教えてください。
全国の空いている月極駐車場や個人宅の駐車場を15分単位で予約できるアプリを運営しています。akippaのメリットは現金不要のキャッシュレスであること、事前に予約できること、場所によってはコインパーキングより二、三割安いことが挙げられます。
会員数は200万人突破しました。200万人まで伸びたのは口コミのおかげだと思います。akippaを使っている人が多くなれば多くなるほど口コミは増えます。また、検索結果で上位に来るための工夫もしていました。
強い信念が逆境をチャンスに変える
—— コロナの状況で外部イベントが減り、駐車場の利用が少なくなるのではないかという焦りはありましたか
焦りはなかったです。将来的には世界No.1をとるという大きい夢を描いているので、まだ成功はしていないし、世界No.1からしたらコロナはたいしたことではないという気持ちでいました。
コロナを受けて、どのような目的での駐車場利用ががダメージを受けているかを見ていました。イベントが無くなり、イベント利用の売り上げがなくなっていましたが、その代わりに通勤通学利用の売り上げが伸びていました。そこで、通勤のエリアに駐車場を増やせば売り上げが上がっていくのではないかということで、通勤エリアをターゲットにしました。売り上げを見ると、イベントでの売り上げは上がっていないけれど、全体の売り上げは上がっていて、前年同月比でも売り上げが去年よりも上がっています。
しっかりとどこが伸びているかを見て、コロナによってマイナスな側面もあるけれど、コロナによってもたらされるプラスの側面もどこかにあると思っていたので、冷静に見極めていました。
コロナという逆境への強さは、もともとハートが強いというよりそれを実現する信念があるから、大したことに感じなかっただけです。
信念がなかったらしんどいと思うのですが、僕は未来に向けて必要なことだと思っているので、しんどいというよりどう乗り越えるかしか考えていませんでした。逆境への強さは絶対成し遂げたいことがしっかりしているかだと思います。また、そのことは社員にも伝わっていると思います。
おごり高ぶらず世界と自分を比べる
—— 逆境から得られる教訓はありますか?
私たちは常に誰かに助けられているということです。
今回のコロナ禍でもあらゆるパターンを考えて、どの場面でも人に助けられていました。「人徳ですね」と言われることがあるのですが、人としてどうあるべきかを考え続けていたから人に助けてもらえたのだと思います。
「人徳」のためにはおごり高ぶらずに、自分が世界と比べてどれだけしょぼいかを意識しています。ザッカーバーグが同じ歳で経営する会社の売上を見るとすごい差だと思います。
越えなければいけない人との差がものすごく開いていて、自分が現状に満足していない部分があるので、謙虚な姿勢で仕事ができているのだと思います。
例えば、ザッカーバーグは英語ができて、ほぼ世界中の人と会話ができると思います。しかし僕は日本語でしかコミュニケーションをとることができないので、コミュニケーションの手段として自分の言葉で伝えられるように英語を学んでいます。自分の言葉で伝えるということは大切にしたいです。
失敗したときはいかにそこからどう考えるか
—— 三密を避けた野菜直売プロジェクト」など、たった四日間の話し合いですぐプロジェクトを実行されたとお伺いしております。経営においてスピード感は重視されていますか?
スピード感については、段階があると思います。皆が社長の考えに振り回される可能性があるので、大規模なプロジェクトでしたらもっとよく考えないといけないと思います。そこでまずは小さく実証実験をします。
会社のリソースが100あったとして、2か3のリソースで一箇所だけでまずテストしてみようというものです。考えるよりもまずやってみたほうがわかります。小さな実証実験をして、良かったら全社に展開し、良くなかったら撤退するという形です。
一番良くないのは小規模で、失敗を恐れて実行しないことだと思います。何事においても失敗はつきものだと思います。失敗したら失敗したで、そこからどうするかを考えればいいと思います。メッシやロナウドも何回も失敗してきていますよね。
自分が心躍るものを見つけよう
—— メッシの話が出ましたが、金谷様自身学生時代にサッカーをされているということで、学生時代の経験が今に生きていると感じるときはありますか?。
勉強もそうですけど一つのことに一生懸命取り組むという継続する力が今に生きていると思います。勉強してきた人はもちろんすごく評価されているけれどスポーツをしている人も同じように努力をしてきているわけで、教養も身についていると思います。
サッカーで役立ったのはリーダーシップですね。どうすればやる気もってみんながやるのか、どうやったらみんながやる気がなくなるのか考えた経験は今に生きている気がしますね。
継続するコツは、自分が心躍ることを見つけることだと思います。自分が心躍らないことは継続せず、心躍ることは、自分の好きなことだから継続できると思います。僕にとって起業も同じでした。
僕自身、これまでいろいろなことに手を出しています。高校の時はサッカーの他、バンドをしていましたし、23歳から24歳の頃はラップバトルの大会も出ていました。
何でも試してみて、自分が合っているものを見つけています。その中でも向いていないと思うものはすぐに辞めています。
信頼を得るコツはいかに自分をさらけ出せるか
—— 採用と組織づくりにおいて、どのように組織の課題と向き合っていらっしゃるかお伺いしたいです。
2009年に会社を作り、akippaを作る2014年までは会社は知り合いと新卒ばかりでした。akippaは初のプラットフォームサービスでしたので、Googleや楽天、Yahooグループから採用しました。いろいろなタイプの人が入ってくるので組織として問題が起こることはあるのですが、ここで大事なものが二つあると思います。
一つは、リーダーに明確な芯があるかです。会社としてミッション、ビジョンに通じた芯をもって、対応することを心がけています。問題が起きたときはそれを判断軸にしています。
もう一つは社員の幸せを考えています。あまり辞める人はいないのですが、会社を辞めないことを正しいことだとは思っておらず、社員一人一人が幸せであるかどうかが大切だと思います。問題が起きたときには、それも判断軸になっています。
今は会社に80人から90人ほどいるので全員とはできませんが、ランダムに皆と話す機会は作っています。コロナで一時期リモートになって、リモートでは発生しえないリアルコミュニケーションの大切さに最近気づきましたね。社内でしたら例えば「顔色悪いね」とか「あれどうなっているの?」とかさりげなく聞くことができます。また組織としての熱狂を作ることはリモートでは難しいと感じました。
基本的に皆さんミッションやビジョン、サービスに共感してくださる方が多いのですが、採用において一番大切なことはいかに包み隠さず話すかだと思います。どれだけ自信があったとしても、どんな会社にも課題はあると思うので、その部分を話すことで信頼を得ることができると思います。
実際にGoogleから入ってきた方は、いろいろな会社からオファーがあり、他の会社は「いかに自分たちがイケているか」を話していたけれどakippaだけは自分たちの会社は「何ができないか、何が課題か」を話していたというのが決め手だったそうです。このように、自分の弱みもさらけ出すことで、「自分が力になれる」というモチベーションを相手に持たせるようにしています。
考えるよりもまず実行することから
—— 最後に若者へのメッセージをお願いいたします。
僕は常に実行することを考えてやってきて、まだ成功はしていないけれど形にはなってきているかなと思います。
ハーバードの最高峰のビジネススクールでよく言われる話ですが、もともとハーバードではthinking(考える力)を重要視して、考える力があれば成功できるのではないかと考えられていました。しかし、なかなか成功が出なくて、次は何が必要かとなった時にdoing(実行力)が必要となりました。考える力があって実行すればそこそこ成功できるということです。言い換えると、考えても実行する力がなければなかなか成功できないというのがあると思います。
もう一つ、更なる大きな成功を目指すにはbeing(人としてどうあるべきか)が必要だとハーバードでは言われています。一人ではできないことが前に進めば進むほどでてくるので、やはり応援してもらえることは大切です。そのために、まずは考えるだけではなくて、実行する所からやってみてください。