最初は揶揄されることもあった、発信活動。
──逆境体験はありますか?
事業を立ち上げたころ、「TikTokはただ踊っているだけのアプリなのに、ビジネスになんかなるわけがない」と、批判を受けることも多くありました。そういう意味では「逆境からのスタート」になると思います。ただ、そうした事態も分析してノウハウとして取り込んで次に活かすので、あまり逆境としては捉えていません。私の場合、そもそも自分がTikTokerとして「バズっている状態」でそれを見た周りの人たちが、「うちもやって欲しい」というのが起点です。世間的にはともかく、身近な人たちから支持を受けている状態からのスタートだったので、実際のところ立ち上がりは良かったんですよ。
大変だった体験は、TikTokerとしての活動をスタートしたときですね。現役の医大生として、「医療の豆知識」などを発信していたのですが、それがバズると医療関係者からは「浅い知識をひけらかしている」という風に揶揄されました。一般の人からは「せっかく猛勉強してエリート街道を走るはずの医大生が、うまくいかなくて変なことをしている」と評価をされてしまう時期があったので、それを辛いと感じたこともありました。現在は会社経営者になって実績を重ねているおかげでほとんどなくなりましたが、当時は知人たちから茶化されることもありましたね。今は、実習に行ったときに先輩の医師たちから「あ、有名人が来た」的なイジられ方を、たまにされるくらいです。
──発信活動はなぜ始められたのでしょうか?また、バズらせるコツを教えてください。
今はインフルエンサーとして活躍している幼馴染の“かとゆり”がTikTokを始めてすぐにバズるようになり、「やってみたら?」と誘われたのがきっかけですね。私たちはYouTube世代で、その市場が出来上がる様子を中学生のときにリアルタイムで経験しました。当時はやってみたい気持ちはあっても「どうやったらいいのか」がわからず躊躇していました。大学2年生でコロナ禍がやってきて、部活がなくなり授業もオンラインになって時間ができるようになり、大学生になると行動力も生まれたので挑戦することにしたんです。時代的に「ショート動画が来る!」と思っていたので、TikTokを選びました。
しかし、やってはみたものの全然伸びません。そこで、データに基づき研究を重ねました。バズる動画の「最初の1秒がどうなっているのか?」「それがAIにどのように判定されて、“おすすめ”の項目に出てくるようになるのか」を分析して、仮説を立てます。それを試してみて、数字が上がればそこを追求していくイメージでアカウントを育てていきました。
周りが遊んでいても自分を貫いた、受験勉強が糧に。
──辛いことを乗り超える原動力は何でしょうか?
受験勉強をしてきた「プロセス」ですね。本格的に受験勉強に打ち込みだしたのが、高校3年生の春ごろなのでかなり遅いスタートです。そこで合格するための計画を立てて、そのスケジュール通りに1日15時間ほど勉強を続けました。その火をつけるきっかけになったのも“かとゆり”で、「Studyplus(スタディプラス)という面白いサイトがあるよ」とすすめてくれたんです。これは学習総合サイトのプラットフォームで受験や勉強に役立つのですが、中でも私は「Studyplusの週間ランキングでトップになること」を習慣化することで無事に医学部に合格することができたのです。
とはいえ、周りの文系志望の友達たちはすでに進路が決まって遊び回り、SNSで楽しそうな様子を拡散している環境でした。その中で自分は「1日も遊ばない」わけですから、しんどかったですよ。ビジネスだとやれることの幅が広いので飽きることはないですが、勉強はカフェに行って「ひたすら覚えて考える」ことの繰り返しで、やることも風景も変わらないのは辛かったですね。しかし、それを乗り越えたことで最短で最高のパフォーマンスを出すためのプランニング力と実行力を磨くことができ、それが役立っていると思います。
──大変な経験から、得られた教訓はありますか?また、会社の強みを教えてください。
「やるべきことを、的確に実行する」というシンプルな教訓を得ましたね。楽天の三木谷さんが「成功するまでやり続ける」とおっしゃっていますが、その通りだと思います。TikTokも道半ばのころに色々と言われましたが、「その人たちが手のひらを返すようになるまで、やり続ける」と心に決めてやっていました。ゼロイチの事業を立ち上げると、周りから批判されるようなフェーズがあります。しかし、世間から認められるとその評価はガラリと変わるので「最後までやりぬくこと」の大切さを肌で感じましたね。
会社としては、揶揄されるような時期を乗り越え、コツコツとノウハウを積み重ねてきたことが最大の強みです。私も含め、平均年齢24歳という若手の現役インフルエンサーが戦略の立案段階から加わり、具体的に効果の出る施策を実施しています。これまで約150アカウントの運用代行をお任せいただき、毎月2,000本以上の動画を制作しているという豊富な実績があるので「説得力」が圧倒的に違うと自負しています。
──過去の生い立ちの中での成功体験が、ビジネスマインドに活かされていると思われる点について教えてください。
暁星小学校で野球をしていた経験も活きていると思います。学力もそうですが、物心が付いたころには「主力打者でエース」というトップの役割を任されていました。そこがデフォルト設定になっているので、「少しでも落ちていると感じたら、修復する」という感覚が身についています。ビジネスでは、“先天的にトップ”ということはないのですが、ハングリー精神で這い上がるというよりも、あらかじめ到達すべきポイントを決めて、あとはその差分を埋めていくという考え方を意識しています。
改革の野望は心の奥に秘め、まずは事業を拡大する。
──順風満帆に事業が拡大していますが、医師になられる予定でしょうか?
医師免許は取得しますが、今の医療業界で働きたいとは考えていないので、まずは当社の成長をもっと促進する方針です。2030年に1,000億円規模の企業になることを目指しているので、その後も行けるところまで突き進む方針ですね。自分たちが巨大な影響力を持ったあとに、医療業界を改革したいという野望は、心の奥に秘めています。もちろん、今の医療が悪いということではないのですが、若手がITや効率化を推進しようとしても阻まれる構造ができあがっているので、未来を考えたとき「このままではヤバいな」と、中にいるからこそ感じるのです。
医師という存在は一般的には「優秀な人たち」と認識されていると思います。確かに勉学に励み、世のため人のために尽くすという方が大半です。しかし、専門領域以外のビジネスなどついては、驚くほど知らない方も意外と多いのです。ビジネスセンスを磨いた優秀な方が、多岐にわたる選択肢の中で「やっぱり医師になりたい!」と参入してもらえるようイノベーションを起こすことが、私の目標のひとつです。
低い山を攻略して満足しない。目指すのはエベレスト。
──若者へのメッセージをお願いします。
「目標を高く持とう」ということですね。今の時代「起業したい」と思えばすぐにできますし、少しでも影響力を持っているインフルエンサーであれば、早々に小さな成功を手にすることでしょう。でも、「そんな低い志でいいの?」と問いかけたいです。私たちが目指してるのは、「SNSの産業を作り上げる」ということ。消費活動が刻々と変わっていく時流に応じて、採用や集客をSNSで担う“企業総発信時代”を本気で創造しようとしています。先述の通り、2030年の達成目標は1,000億円企業ですがそれは通過点であり、その先は1兆円も目指しているのです。
目標を高く設定した方が、組織も個人も頂点に向かうことができます。だから、その辺りにある低い山を攻略して満足するのではなく、どうせ登るなら「エベレスト」に挑戦した方がいいと思うのです。高い目標をクリアするために仲間とともに切磋琢磨していくうちに鍛えられ、成長した結果として社会に対して大きなインパクトを与える存在になれると思います。当社はそんな「志の高い人材」を求めているので、興味がある方はぜひ門を叩いてください。