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【株式会社ココロミル 髙橋 雄太】「後悔」を無くすという、ピュアな想いが原点の経営陣が切りひらく新天地。

2024/05/24

Profile

髙橋 雄太

株式会社ココロミル COO

小型の医療機器を身に付けることで、日々のココロとカラダの状況を可視化して把握できるという、画期的な自宅で受ける心臓ドック「kokoromil®」を提供する株式会社ココロミル。現在は、日本国内で法人や個人を対象として同サービスを展開しつつ、医療機器メーカーとして新機器を開発・製造しています。同社は、実母をストレスが原因の突然死で失った経験を持つCEOの林大貴氏と、同じく恩師の急逝に直面したCOOの髙橋氏により共同設立。自らの経験から「突然死を世の中から無くしたい」というピュアな想いを原点に、ココロとカラダの健康を守るという社会課題の解決を目指すビジネスへと昇華させた。

林氏は連続起業家として成功を収め、社会貢献活動にも注力しています。高橋氏は大手旅行代理店の法人営業としてMVPを受賞し、最年少で管理職に登用された実績を持っています。今回は髙橋氏に起業時の逆境経験や教訓、「kokoromil®」の開発エピソードについて伺いました。

資金調達に奔走した立ち上げ期。

──逆境経験について教えてください。

現在当社が手掛けている自宅で受ける心臓ドックは、ある医療機器販売会社の新規事業として林と私で原型を作り、立ち上げたことが起点になっています。その会社はもう無いのですが、「突然死を無くしたい」という強い気持ちで事業を始めた私たちに、「ここで辞める」という選択肢はありませんでした。そこで“起業”へと舵を切ることになったのです。振り返ると設立する以前の段階で、逆境からのスタートでした。

起業してから大変だったのは、資金調達です。エンジェル投資家たちにアプローチをしては断られるという日々が続きました。苦戦した理由はビジネスモデルです。そもそもマネタイズが難しいヘルスケア事業であることと、比較できる同一のサービスが無いことに対して、“投資妙味に欠ける”と判断する投資家の方たちが多かったのです。そんななかで、ひたすら私たちの想いやビジョンを訴え続け、共感してくださる方に出会えるように必死で走り回っていました。

結果的にシードラウンドで資金調達ができ、サービス拡大のために、関連業種とのサービス開発や、他業種とのアライアンスに邁進しました。企業の健保組合への導入はもちろん、プロスポーツチームへ選手寿命延伸を目的としたサービス導入や、行政と連携したワーケーションの効果測定など、1年間で累計1,000名にサービス導入を行いました。

そんななかで、当社がメーカーとなり、新しい心電計の開発・製造に踏み切ることになります。理由は、我々が取り扱う心電計の増産ができなかったからです。サービスローンチから私たちが取り扱っている心電計は、実は当社のCTOの岡庭が2015年に開発した機器なのですが、現在では一部の部品が製造されていません。代替の部品を用いて増産しようとすると、再度医療機器の認証を取得しなければならず、費用を要します。そこで、私たちのニーズと医療現場のニーズの双方を満たす機器を新しくつくろう、となった訳です。林と僕でサービス提供するなかで一般ユーザーから集約した「こんな機器がいい」というご希望と、長年岡庭が医療機関と正対するなかで医師から集約した「こんな仕様がいい」というご要望を掛け合わすことで、セルフメディケーションと医療、どちらでも輝く理想の心電計を目指して、現在新しい機器を開発中です。

当然ですが、新機器開発と付随する認証関連の手続きで多額の費用がかかります。ただ、新機器の製造によって、セルフメディケーションと医療の2軸を主要事業とすることができます。これで、さらに多くの人々を救って「病気で後悔しない」社会の体現に近づけると考えました。新たな構想と事業計画を投資家の皆さまへお伝えし、ご理解を得ることができました。

甘言を弄せず、まっすぐに。株主と信念で結ばれる絆。

──逆境から得られたことはありますか?

「自分たちの想いや信念は間違っていない」と信じて伝え続けることが大事だと確信しています。株主となっていただいたの皆さまに共通しているのは、僕たちの信念に共感してくれているということです。私たちは資金調達の際に、首尾一貫して自分たちの想いや実現させたい未来像を曲げることはありませんでした。目先のお金を得るためにうまい言葉を使って思い通りにするようなことは無く、私たちの事業の社会的意義とビジョンを説いて回ったのです。そのことが、頼もしくて心強い同志とも言える株主の皆さまとタッグを組めることに繋がったと考えています。経営層と株主の関係性がフラットで、叱咤激励のスタンスで伴走してくださっています。

そのために必要なのは、「ベクトルを合わせ続けること」だと認識しています。「病気で後悔しない社会へ」をミッションに掲げ、「突然死のような不幸な瞬間を無くしたい」という強い信念を発信し続けることで、ステークホルダーとのベクトルを常に合わせています。そうした、エンジェル投資家の方が礎を築いてくださったおかげで、新たに6社の事業会社とエンジェル投資家の皆さまとの第三者割当増資により、2.7億円の資金調達を実施することができました。文字に起こすと一瞬ですが、代表の林を主としてかなり走り回りましたね(笑)。

──これまでに無かったビジネスを展開されていますが、大手企業の参入はないのでしょうか?

参入障壁は高いのですが、正直なところ大手の資本力を持ってすれば、難しくは無いと思います。そう考えて実は大手医療機器メーカーの方に、「弊社のような事業はやらないのですか?」と直球で聞いたことがあります。すると、「私たちは顧客は医療機関で、既存顧客のフォローがメインなので、法人や個人のマーケットを新規開拓をするノウハウが無い」との返答でした。それを聞いて、「当社はメーカーとして医療の領域で強みを発揮しつつ、サービス提供者としては一般企業や個人に向けてヘルスケアを拡充する立場にあるのだ」という自社の優位性を実感しましたね。

私の場合、法人営業として新規開拓や既存の深耕営業をしてきました。しかしながら、大手企業のような認知度は、スタートアップにはありません。そのため、他社とアライアンスを組んで展開することに重きを置いています。現在打ち合せをしている企業、もっと言えば目の前の方が「何を求めているのか」「何に興味を示しているのか」を、事前の情報収集はもちろんですが、打ち合せ中にもアンテナを張り続け、自分なりに考えて企画を提案します。共感をいただいた皆さまのおかげで、現在「kokoromil®」は多くの企業様や自治体、個人の皆様にご利用いただいています。今後はより多くの方にココロミルを知っていただき、サービスを受けたいと思っていただけるよう「どの層に、何をアプローチすれば良いか?」というマーケティング戦略を策定中です。

独自のビジネスモデルそのものが、事業の強みに。

──会社のサービスや強みを教えてください。

「kokoromil®」をわかりやすく伝えるため、「自宅で受ける人間ドック」という説明をすることが多いです。使い方は簡単で、自宅に届いた手の平サイズの心電計を胸に装着するだけ。あとは、心電図のデータが当社に送られてくるので分析したものを、専門医が解析してレポートを作成して可視化。それを本人が確認して「ストレスが多い」「睡眠の質が低い」といった、ココロとカラダの状態を把握するサービスです。睡眠時間を含む最低9時間、最大で24時間計測するため、15~30秒ほどで検査が完了する一般的な「健康診断」や「人間ドッグ」の心電図検査で見逃されてしまう、隠れた心疾患を早期発見するお役に立てます。

当社のサービスを受けた方々の18%は医療機関を受診しており、なかには「健康だと思っていたけれど、実は突然死に繋がる心疾患が見つかった」ことで入院・手術に至ったケースもありました。また、心疾患や脳卒中のリスクを高めるとされている「睡眠時無呼吸症候群」の兆候も検知することが可能です。

このようなビジネスモデルの独自性そのものが強みであり、特徴だと思います。スタートアップの段階から、多額の資金を投入して新機器の開発・製造を自社で手掛けているところは珍しいです。東京都から医療機器の製造販売業の業認可を受けていますが、2021年に設立した当社のように、社歴の短い会社で認めていただけるケースは少なく、社内体制やノウハウを認めていただいていることの証左だと考えています。

守るものが増える前に、たくさんの挑戦を。

──今後のビジョンを教えてください。

海外進出を視野に入れており、基準が厳しいFDA(アメリカ食品医薬品局)やEMA(欧州医薬品庁)といった機関からの承認を目指しています。特にアメリカでは、日本のような国民皆保険制度が無く「病気にならないための対策」に人々の関心が高いので、マーケットフィットしやすいと考えています。日本はもちろん海外でも幅広く使用していただき、病気で後悔しない社会を実現していきます。

──最後に、若者へのメッセージをお願いします。

若いうちにビジネスに携わり、動き回って、成功体験はもちろん失敗経験も積んでみてはいかがでしょうか?私たちよりも若い時に起業して成功し、大きな事業に育て上げた経営者とお会いしてお話していると、こんなことを伺います。「若い時から多くの挑戦をしてきて、成功も失敗もしているからこそ、今の自分があるんだ」と。そのような方の経験や知見は、すぐに得られるものではありません。率直に羨ましいなと思います。もちろん、企業に属して働くことを否定するつもりはありません。ただ、「やりたいこと」があるのに今の環境では取り組めないと考えている人は、起業という選択肢もあるということをお伝えしたいです。年齢を重ねると、どうしても守るものが増えてきますし、現状を変えることに対して抵抗を感じるようになります。そして、このメッセージは学生時代の私自身にも届けたい言葉です(笑)。

株式会社ココロミル

設立 2021年11月
資本金 7,000万円
売上高 非公開
従業員数 非公開
事業内容 ①自律神経及び不整脈を解析する健康情報提供サービス
②医療機器の販売・レンタル業務
③心電図データの情報収集、処理及び管理業務
④心電図データの分析業務
⑤ヘルスケア関連事業
許認可
・高度管理医療機器販売業・貸与業
・第二種医療機器製造販売業
・医療機器製造業
URL https://kokoromil.com/
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