タフな経験も修行に。前向きなパワーで乗り切り、糧にする。
──これまでの逆境経験について教えてください。
どんなことがあっても、基本的にポジティブに捉える思考回路なので「ほとんど感じたことがない」というのが本当のところです(笑)。ただ、自分のなかで強烈なコンプレックスになっている挫折経験は、中学~高校と早稲田に通っていたのでそのまま早稲田大学に入学予定が、別の大学に進学したという出来事です。ここは後に就職活動をしたときに面接官から「なぜですか?」とよく聞かれるポイントだったので、嫌な気持ちになったこともありましたが、それをバネにして就活を頑張ることができました。
ただ、これまでの経歴を振り返ると「前向きなタイプじゃなければ、辛かっただろうなあ」と思うことは色々あります。まず就活のときは就職氷河期だったことと、広告代理店を中心とした人気の大手企業ばかりを受けていたので、「お祈りメールの連続」という袋小路に行き当たりました。最初は落ち込むこともありましたが、すぐに「将来活躍するであろう私を採用しないのは、会社の方に見る目がない!」とスイッチを切り替えて臨んだところ、TOPPAN株式会社(旧凸版印刷株式会社)に内定が決まったのです。
入社後の仕事は非常にハードでした。このときのタフな経験により肉体的にも精神的にも鍛えられ、「あのときと比べたら、なんでも対処できる」という冷静さや強靭さを身につけることにつながりました。次に、時代がWebに移りゆく最中だったので、Webマーケティング支援事業を手がける株式会社セプテーニに転職しました。SEM事業部の立ち上げに携わらせていただき、リスティング広告の運用などのWebマーケティングの基礎になる知識などを身に付けることができ、今でも感謝しています。
そして24歳でスピンアウトし、取締役として起業に参画しました。立ち上がったばかりで実績がない状態で、当初は営業面での苦労がありましたが、社会全体でWebの需要が急増している時期だったため、徐々に業績は伸びていきました。
DJの原体験から生まれたポジティブシンキング。
──逆境にへこたれない、ポジティブなメンタルが育まれた理由はなんでしょうか?
中学3年のころからDJをするなど、「楽しいことに没頭してきた」という体験があるからかも知れません。この経験は、メンタルのみならずビジネスの基礎的なところを学ぶきっかけにもなっています。高校卒業の際には、複数の学校と共同でパーティを企画。お金のことや円滑なコミュニケーションなどの重要性を知る機会になりました。大学時代は、そうした実績を知ったクラブ側からオファーをもらい、数多くのイベントをオーガナイズし、稼ぎ方や集客の仕方、イベントを通じて事業をどのように展開するかの感性やスキルを育むことができたのです。
企画するのが好きで、事業化する手応えも感じていたので「30歳までに起業し、世の中に何かを仕掛ける側に回ろう」という戦略を練っていました。実は、新卒のとき「大企業狙い」だったのもその布石で、「自分に信用を付けるために、大きな組織で社会人としての実績を残す」という、自分自身のブランディングを狙ってのことでした。現在も社長をしながら、経営者や起業家たちが集うようなビジネス寄りのDJイベントを行なっています。カジュアルな雰囲気を大切にしているので、「仕事の話ばかり」ではなく、遊びの要素も取り入れた堅苦しくない交流会です。
──Web広告業界に、一石を投じる書籍を刊行されておられます。反響はいかがでしたか?
この世界に足を踏み入れ、試行錯誤を繰り返しながら、運用などを行なっていく上で感じたのは、「この界隈にうさんくさい人たちが跋扈していることで、真面目にやっている人が報われない」という憤りでした。それを正したいと思って出版したのが、『ウェブマーケティングという茶番(幻冬舎)』です。悪い反響はなく、むしろ同じような考え方をお持ちの同業の会社から「協業しませんか?」というお誘いをいただくなど、プラスになる展開でした。
まずは、クライアントに勝ってもらうことが先決。
──会社の強みについて教えてください。
まずは、Webマーケティングに携わってきたなかで培われた知見や技術力です。加えて「SEOのみ」や「クリエイティブに特化」といったスタイルではなく、総合的に網羅してきた古株なので、全体を見渡しながら提案や実行ができることも強みだと思います。あとは、「顧客目線」を徹底して重視しているところでしょうか。例えば「小さい予算しかとれないので、他社で断られた」という案件であっても、しっかりと対応します。
実は、限られた予算内でも運用が上手であれば効果を出すことは可能です。「潤沢な資金がなければ、結果を出せない」というのは自信がない現れだと思っています。むしろ、コストをいかに抑えてパフォーマンスを最大化できるのかが、マーケッターとしての腕の見せ所ではないでしょうか。ちなみに、「Webマーケティング」を標榜し、社名で検索すると「SEO 営業電話 ウザい」といった悪評のランキングがサジェストに表示される企業が見受けられますが、当社はテレアポを一切行なっていません。案件はWebからの問い合わせや紹介がほとんどで、社員はプランニングや運用、クリエイティブといった専門業務に専念でき、より高い効果をもたらしてくれています。
あと、当社はクライアントとの直接取引がメインになりますが、同業他社との協業もしています。「リソースが足りないから助けて欲しい」という声があればお手伝いするなど、敷居を高くすることなく、柔軟に対応する社風です。
──ビジネスで最も重視されていることは何でしょうか?
「第一にクライアントに勝ってもらう」ことです。相手のメリットになることであれば、受注していない状態であっても、当社の売上に直接結びつかないようなことでも提案するスタンスです。対価以上の貢献をした後に、当社も利益を得ることを大切にしています。
「他人に尽くす」と、頼もしい味方が仲間になってくれる。
──若者へのメッセージをお願いします。
私の根幹的なところでお伝えすると「他人に対して、何をするか?」を、軸にして考えて行動しています。学生時代に「相手のことを第一にする」ことで、素敵な仲間たちに巡り会えました。それを社会人になっても貫き続けたことが、今のビジネスがよいサイクルで回っていることにつながっているので、確固たる信念として私のなかに根付いています。「ギブアンドテイクを大切にしている方」か「そうではない方」かは、初見では判断できないので、若いうちは幅広くお付き合いをすることが大事ではないでしょうか。
ただし、「最初から見返りを求めるような精神性」は、結局のところ自分本位な思考回路なので、起点はあくまでも「人のため」が大切です。周りを見渡すと、「自分よりも、先に他人のこと」を重んじる若い経営者の側には、素晴らしい仲間や顧客が集まり、事業も順調に伸びています。あとは、やはり「一生懸命頑張る」ことも重要です。その姿勢が味方を増やし、何か困ったときには助け舟を出してくれる協力者が現れます。
理想としては社会の仕組みが、「自分が上の世代から学んだことを、次の世代に伝えていく」ことを重んじる、循環型の社会になって欲しいと考えています。当社はそれを実践し、新しい仲間に惜しむことなくノウハウを伝えています。興味を持ってくださった方は、ぜひ当社の門を叩いてください。