仮説が当たるまでPDCAを繰り返す。
――事業における逆境体験について教えてください。
しいていえば、2019年の大学1年の時にアフィリエイト目的でブログづくりを始めたものの、1年やっても成果に繋がらなかったことでしょうか。1年で240記事くらいは書いたのですが、その1年間で5万円も稼げなかったと思います。時給換算すると、多分100円ないですね。そこで、コロナ禍となってYouTubeが盛り上がってきたのを見て、YouTubeチャンネルの動画制作・マーケティング支援にピボットすると、思った以上にうまく行ったのです。それ以来は順調に推移していて、逆境と感じるようなことはありません。
――なぜYouTubeマーケティングはうまくいったのでしょうか?
そもそもYouTubeが盛り上がっていたこともありますが、ブログづくりでマーケティングは仮説どおりに行かないことがほとんどであると学んだからかもしれません。そこで、「ならば仮説が当たるまでPDCAを繰り返せばいい」と気づいたのです。AをやってダメならB、BがダメならCという具合に、Zぐらいまで繰り返してきました。そうしたなかで、徐々に「こうすればうまくいく」という成功法則を見出して、1000発に1回から500発に1回、100発に1回と確度を上げてきています。ただ、数打つだけではなくこの確率を最大限まで高めるのが当社の仕事と考えています。
――いわば「成功するまで諦めずにやり続ければ、失敗はしない」ということですね。
そう思います。重要なのは、成果が上がらない可能性をクライアントともコミットしていることです。YouTubeマーケティングの初期費用は概ね500~600万円ほどですが、私はクライアントに「その予算を捨てる覚悟はありますか?」と意思確認をしています。マーケティングは思ったようにはいかないことが普通で、それを前提に取り組むべきだからです。そして、「当社は最善を尽くします」と約束します。その上で、契約書にサインしてもらい、後は成果に繋げるまでPDCAを繰り返すわけです。
――クライアントにも本気になって一緒に取り組んでもらうわけですね。
世の中には、中途半端な結果で終わる同業者が多いと感じていますが、当社は最初からできないことはコミットしません。逆に、成果を出せない理由をはっきり伝え、納得してもらいます。そこが信頼に繋がっているのかもしれません。ありがたいことに、これまで累計30社近くの運用支援をさせていただきましたが、ほとんどのお客様から契約更新時にご継続いただいています。
解約に至ったお客様のなかでも、そのうち1社は「自社にノウハウが溜まったから」といった理由でした。また、YouTubeチャンネルで目標の成果に繋がらず打ち切りとなっても、別の案件で継続して取引しているというクライアントもあります。
高校・大学の野球部で公式戦出場“ゼロ”ながら、チームプレーの重要性を知る。
――では、これまでの人生の中で苦しい体験はなかったのでしょうか?
子どものころから野球をやっていて、中学時代はレギュラーとして活躍し、将来はプロ選手になるという夢を持っていました。そして、高校は2016年の春の選抜甲子園大会に21世紀枠で出場した兵庫県立長田高校に進学します。
そこまでは良かったのですが、実は高校からの3年間、ただの一度も公式戦には出場できませんでした。卒業後は、近畿学生野球連盟1部リーグで優勝実績のある大阪市立大学(現・大阪公立大学)に進学し3回生まで続けましたが、大学でも一度も出場できなかったのです。
――挫折感を味わった経験がおありだったのですね。
自分が否定された気がして、悔しかったです。高校も大学も野球はそこそこのレベルで、ほかの選手は自分から見ればうまい人が多かったのは確かでしたが。
――その逆境体験から得た教訓はありますか?
自分ができることに集中すれば何とかなる、ということです。
自分は確かにレギュラーにはなれず公式戦に一試合も出場できませんでしたが、背番号はもらえていて、ベンチ入りはずっとできていたのです。つまり、限られた枠の中には入っていられた。その要因は、自分はベンチワークが上手だと監督やコーチから思われていたからではないかと思っています。その当時はさほど自覚はなかったのですが、ランナーコーチをすることが得意でした。自分のコーチングで得点できると嬉しくて、やりがいを感じていたのです。自分なりに一生懸命やるので、ベンチには必ず入れてもらえていたのではないかと考えています。
――試合には出られなくても、縁の下の力持ちとして貢献していたのですね。
それで野球部に居場所をつくることができていました。教訓とすれば、仕事も全く同じではないかということです。自分がお客様に価値提供できることをひたすら追求する。そうすれば価値を認めてもらえるということです。当社の場合、YouTubeマーケティングにおいて同業者には負けないと自負しているのは、ひたすら自分が得手にしているYouTubeマーケティングで試行錯誤を繰り返し、ノウハウを蓄積してきたからです。
また、野球からはチームプレーの重要性も教訓として得られています。自分はランナーコーチでの限られた貢献であっても、投手やバッターが優れていればチームとして勝つことができます。仕事も同じで、自分が不得意なことは、それが得意な専門家に任せればいい。当社では、こうしたプロフェッショナルをネットワーキングしています。
――例えば、どういったプロフェッショナルを活用しているのでしょうか?
例えば、「TikTokで有名になりたい」という個人からのオーダーがあるとします。私は100%事業者をクライアントとして、その売り上げ拡大などの成果に貢献することをミッションとしているので、「個人が有名になる」という目的で価値提供できるとは考えていません。ロジックでストーリーは考えることができても、TikTokの特性を踏まえて個人をプロモートする動画制作の勘所を掴めているとはいえないわけです。そこで、若いインフルエンサーの仲間に依頼して動画をつくってもらっています。
また、YouTubeチャンネルの反響は得られても、商品単価が低くてコストに見合わないクライアントの場合、反響のあるYouTubeチャンネルを止めるのはもったいないので商品単価のアップを検討することになりました。そうした商品企画は私の専門外なので、詳しいプロフェッショナルに手伝ってもらいました。
目の前のワンプレーに集中する、“タスクフォーカス”が大切。
――今後のビジョンや目標をお教えください。
当社はスタートしたばかりですが、1社でも多くのクライアントに最適なWebマーケティングを提供していきたいと思っています。当面は100社のクライアントの獲得を目標に、組織風土づくりとしては、「働いていておもしろい会社」にしたいです。そのためには、みんながひとつになって目指すものを掲げます。高校野球をやっていておもしろいのは、「甲子園に出場する」という目標があるからです。その点、当社の目標はその都度変わるとは思っていますが。また、個人を尊重してやりたいことがやれるよう支援もします。ゲームが好きなら、定時で即帰ってゲームに興じられるようにするなど、会社とプライベートのどちらも楽しめる会社にしていくつもりです。
――最後に、若者に向けてメッセージをお願いします。
“タスクフォーカス”が大事、ということを伝えたいです。世の中には、自分がコントロールできることとできないことがあります。例えば、自分の努力でブレイクしていけること、それが難しい場合のふたつがあるとします。いつブレイクできるかは、周囲の情勢や時の運も重要な要因で、自分ではどうしようもないことです。なので、そのことに思いわずらうのは時間の無駄に思うので、誰と何をどのようにやるかという、自分でコントロールできることだけに徹するべきです。そうすれば、いずれ周囲の環境も自分の味方をしてくれると信じています。それをやれば誰でも成功できるとは限りませんが、成功している方は皆それをやっているのではないかと思います。