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【モノリス法律事務所/イースター株式会社 河瀬 季】ダイバーシティな採用方針で、時代をリードするビジネスを多岐に展開。

2024/03/27

Profile

河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士/イースター株式会社 代表取締役

東京理科大学に在学中、フリーランスのITエンジニアとして活躍する傍ら、IT専門雑誌のライターとしても才能を発揮。その後、IT企業の経営などを経験するも、28歳で東京大学の法科大学院(ロースクール)に進学し、現在は弁護士という異色のキャリアを持つ河瀬氏。現在はモノリス法律事務所の代表弁護士、イースター株式会社の代表取締役を兼任している。上位2%のIQを持つMENSAの日本支部会員。

今回は、そんな河瀬氏に逆境体験やそこから得た教訓、さらにモノリス法律事務所が法学部以外の学部から「総合職」を積極的に採用している理由などを伺いました。

IT×ビジネスで成功するも、強みを乗算化すべくロースクールへ。

──逆境経験について教えてください。

人生の節目で、最初に逆境のような体験をしたのは18歳の時です。子どものころから勉強が得意だったので、中学校受験で国内有数の中高一貫校に進学。全体の7割くらいが東京大学に進学するような環境のなか、私は合格できず進学した同級生たちに対して「受験に失敗した」という気持ちでした。と言っても、中高生時代はパソコン部に入り浸って受験勉強を怠っていたので、自明の理ではあったのですが。

そして、その体験が「同級生に負けられない」という発奮材料につながります。周りが時給のアルバイトに精を出すなか、自分は小学校から始めたパソコンで培ったITの知識やノウハウを活かせるビジネスに挑戦しようと考えていたのです。最初の発注は、肉親の知り合いの病院のHPの制作で、報酬は10万円でした。そこから紹介などでITの仕事が舞い込むようになったのです。また、当時はパソコン雑誌の全盛期で10万部数クラスの雑誌が数多く出版されていたのですが、ITに詳しい書き手が貴重だったので私のところにオファーが来るようになり、大学生ながらときには巻頭10ページのライティングといった大役を任されることもありました。

次の逆境は、フリーランスを経てIT企業の経営に携わっていた20代のころです。事業は順調だったのですが、周りの経営者たちを見ると「裸一貫で起業し、上場に導く」といった海千山千の猛者たちが戦っており、「社会に対してインパクトのある事業をするには、もっと大きな組織が必要。このIT企業を上場させるのは難しい」と痛感しました。そして「社会で確固たるポジションが無い自分に、何ができるだろう」「先のことを考えたとき、今のITだけのビジネスでいいのか」と疑問や不安などを覚えたのです。

そのころ、年2回ほど海外にバックパッカーの旅に出かけていたのですが、「この国で生まれたら何をしていただろう」を軸に思考を張り巡らせるなかで、行き着いた答えが「ITとビジネスに加えて、もう一つの軸を持って掛け合わせること」でした。それが27歳のときで、自分自身の「好きなことや得意なこと」を振り返ったとき“複雑な問題やパズルを解くのが好き”で“勉強が得意”であるという強みを活かそうと考えたのです。そして3つめの武器として「法律」を選び、ロースクールに進んで弁護士になりました。

まずは手札を把握し、最大限活用する。

──逆境を乗り越えたからこそ得られた教訓はありますか?

得意なことを掛け合わせていくことで、相乗効果が得られるということです。人間には「配られたカード」があり、そのカードを駆使して「勝負する」ほかありません。しかし、出し惜しみをしているカードがあるのは望ましくないです。かくいう私も、若いときには「勉強が得意」というのは恥ずかしくて言えなかったのですが、放浪の旅などを経て「自分の強みを把握し、利用することの重要さ」に気付かされたのです。「法律」を選んだ理由は、参入障壁が高い国家資格だったことと、医者や公認会計士といったほかの国家資格に比べて早く活躍できると考えたからで、それ以外に特別な意味はありません。

ITもビジネスも、勉強もある程度得意でしたが、「それぞれ単独でトップに行ける力」は無いことを自覚していました。例えばITであれば、「インド工科大学首席のエンジニア」には敵いませんし、ビジネスでは「イチから飲食店を開き、早期にIPOした経営者」に勝つのは難しいことです。勉強も「数学者」にはなれないと思います。しかし、その3つを乗算式に掛け合わせると、ほぼ競合となる人のいない領域に辿り着けると思ったのです。

こうした感覚は、私の場合は、放浪の旅で得られたものだとは思っています。発展途上国にいると、「この地に産まれても、結局僕は20代の頃はITでビジネスを行うだろう」「しかしギャングが闊歩する社会で身を守るために、結局、勉強を使う事になるだろう」と感じました。

「自分の持つカードの見つけ方」については、色々なことを経験するしか無いと思います。例えば、当法律事務所では法学部とは関係のないインターン生を積極的に受け入れているのですが、ほかでは出来ないような体験をしてもらっています。先日は、数学科で統計学を専門に学ぶ学生と、KPI(重要業績評価指標)に基づいたビジネスフレームワークを一緒に立案しました。法曹関係を就職先に選ばない学生であっても「法律事務所という場所にきたら、何ができるのか?」を実体験してもらうことで、新たな自分の扉を見つける一助になればと思っています。私たちとしても、全く異なる視点から学べるケーススタディになるので貴重な機会です。

総合職を迎えることで、複合的に課題を分析。弁護士が解決へと導く。

──モノリス法律事務所では「総合職」として、法学部出身者以外を積極採用されています。

昔ながらの法律事務所は、ビジネス目線で分析した場合、扱っている商材が「法律相談」「書面作成」「紛争解決」の3種類だけだった思います。この3種類だけを担うのであれば、総合職は必要ありません。しかし、当事務所では総合的に課題を解決することがミッションなので、ITコンサルなどを担う人材を“総合職”として積極採用しています。

例えば、ある企業の誹謗中傷がSNSなどインターネット中で拡散されていたとします。それが「採用面などで、どれだけの被害を与えているか?」を調査し、定量把握するのはITコンサルなど総合職の業務です。そして「紛争解決」を担うのが、弁護士の領域です。顧客の課題を総合職と弁護士が連携し、パズルを解くようなプロセスを経て、最終的に「法律相談」「書面作成」「紛争解決」という3つの種類に分解し、解決に導きます。

別の言い方をすると、我々は、いわゆる「ロジックツリー」のような、「ツリー」の構造で問題を分析しています。クライアントが抱える課題が、「誹謗中傷がインターネット中で拡散されており、求人に悪影響が出ていること」であるなら、その課題を解決するために何をすべきか、「ツリー」の構造の下で問題を分析する必要があります。その結果、最終的に地面の上で行うべき事柄が、例えば、「紛争解決」である、という構造です。

──未来について思っておられることを、採用や人材の側面から教えてください。

昨年は「生成AI」の業界進化が大きな話題となりましたね。私も「生成AIと法律」といった書籍に複数関わりました。また、生成AIが弁護士業務を「奪う」のではないか、といった話題もよく取り扱われました。

ただ、生成AIは、先ほど述べた「ツリー」の、下層部分をテクノロジーの力で解決するためのものです。そして、数十年スパンで見れば、「テクノロジーの進化」の速度は、「ツリーの肥大化」の速度より、遅いと思います。生成AIに代表されるテクノロジーは、そもそもコンピュータというものが登場した以降、進化を続けていますが、弁護士が解決するべき、企業や社会が抱える「課題」のサイズは、それ以上の速度で肥大化を続けている。
弁護士の業務が、先ほど述べた伝統的なものから、例えばM&Aなどに拡張され、したがって伝統的な法律事務所だけだった業界に、「ローファーム」という、コンサルファームのような組織が誕生したのは、もうずいぶん昔です。

ITやインターネットの分野でも、先ほど述べたとおり、「課題」は、肥大化しています。そして、今後もこの肥大化は、進んでいくでしょう。だからこそ、クライアントニーズに合わせることが重要で、私たちはいち早くコンサルファームのような今のスタイルを実現しています。

「抽象度を高く思考する」ことが、問題を紐解く糸口に。

──若者へのメッセージをお願いします。

当社のインターン生に伝えている内容なのですが、「ちょっと飛び込むだけで、色々な体験をできるのは学生の特権。だから、気軽に職業体験のつもりでインターンを楽しんで下さい」ということです。特に当社は総合職を積極採用していることもあり、法律とは全くの関係の無い学部の方に向けて広く門戸を開いていますので、ご興味のある方はぜひご応募ください。

また、社会人経験をお持ちの若い方へのメッセージとしては「ある程度抽象度を高く考えた方が、広い視野で物事を捉えられる」ということです。例えば転職のシーンで「この業界しか知らないから、ほかでは働けない」という呪縛に囚われているならば、少し俯瞰的視点で自分を見つめ直してください。すると、「自分はこんなことが好きで得意だから、職種にこだわらなくて良い」ということに気付かされるなど、新たな道がひらけてきますよ。

モノリス法律事務所

設立 2017年3月
資本金 非公開
売上高 非公開
従業員数 弁護士20名、スタッフ85名
事業内容 IT・インターネット・ビジネスに強い東京都・大手町の法律事務所
URL https://monolith.law/
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