組織として迎えた、マネジメント面での逆境。
──逆境経験や、経営者としての「苦悩」などについて教えてください。
個人としては、逆境や苦労をあまり経験してこなかったかもしれません。独立を見据え、PL(損益計算書)、BS(貸借対照表)といった財務の分析や経営、キャッシュフローなどを実地で会得するために、滋賀銀行で3年ほど経験を積みました。その後、独立しフリーランスとして活動していたのですが、会社を立ち上げることになったのは、中学時代からの後輩であり現在当社でCOOを務めている辻井から、「ビジネスを立ち上げたい」と相談を受けたのがきっかけです。
その際に、個人ではなく組織をマネジメントしていくという面で苦戦しました。私は物事の伝え方がストレート過ぎる傾向があり、自らレクチャーするような人材育成が苦手なのを自覚しています。もともと辻井が大学のアメフト部の部長であり、100名以上の部員をまとめあげた経験を活かし、マネジメントを担うと奮起してくれたのです。私が組織を拡大していく上で苦手部分を補ってくれるだろうと思い、起業を決意しました。ただ、辻井も経験豊富というわけではなかったので、当初は「組織としての逆境」を迎えました。
そこで、私が以前働いていた会社の執行役員で上司でもあった畠を1年かけて誘い続け、当社にジョインしてもらうという方法で解決に導きました。マネジメントに関するスペシャリストぶりを目の当たりにしていたので、なんとしても仲間に加わってほしかったんです。現在当社では、経営会議は私とCOOの辻井、CROの畠で実施し、そこでの決定事項を現場に通達する仕組みにしています。
ほかに「苦悩」があるとすれば、「IPOするか、しないか」という経営判断でしょうか。例えば、今所属しているコミュニティーが上場企業の会社ばかりで、「IPOで資金調達し、M&Aで拡大路線を走る」という経営者が多いなかで、当社は「上場しない」という選択をしているのですが、それが正しいのかどうか葛藤はあります。
個々のスキルアップを促進。経営と現場の乖離を防ぐ。
──「組織として逆境経験」などを経て、どのような教訓を得られましたか?
EQ(心の知能指数)を高めるマネジメント手法を導入しました。当社では会社全体・チーム・個人でそれぞれミッション・バリューを策定しています。それを、大リーグで活躍するアスリートも取り入れている“マンダラチャート”に落とし込み、目標達成のための戦略的思考を磨いたり、モチベーションをアップさせたりすることにつなげています。重視しているのは、組織にとっての生産性だけを追求するのではなく、「個人の自己成長」を促進することです。会社の指針や空気感と、個人のやりたいことの整合性を大切にしているので、当社ではフルコミットする社員だけではなく、副業や兼業で働く従業員もいます。
──経営陣と現場の乖離が起こる要因についてどうお考えでしょうか。
私はコンサル事業をしているなかで、失敗のケースは「従業員のエンゲージメント」「キャッシュフロー」など共通している部分が多いかもしれないと考えています。例えば、経営者は“良かれ”と思って従業員をねぎらうために、高級な飲食店で会食を催しているのに、社員たちは心の中で「だったら、給料を上げて欲しい」と考えているといった「経営と現場の乖離現象」が起きています。そうした乖離が起こる要因としては、現場を知る社員の声が経営に反映されていないケースや、逆に経営陣の高い熱量が現場に届いていないということもよく見受けられます。マンダラチャートはそれぞれの成長を定量・定性で追い、コミュニケーションを取り合うことで、経営と現場の乖離を防ぐという目的もあります。
あえての「属人化」。全員が自らの脳で考え、行動する。
──会社の強みを教えてください。
MA/SFAを活用した上でのマーケティングやセールス、ファイナンス面での支援においては、元MAツールベンダーの第一線で活躍していた人材たちが集っており、テクニカルな施策提案はもちろんのこと、本質的な課題を見つけ出して改善に導くことができます。建築で例えるならば、一級建築士が図面作成の段階から参画。全体を見渡しながら、自ら建築も行うというイメージです。さらに、「図面作成」に大きく工数を使っているのも当社の特徴です。具体的には、クライアントの課題を的確に把握した上で戦略の策定~提案を行う「一級建築士」の領域から、ニーズに応じて運用や内製化のサポートする「土木作業」までを、当社1法人が担うような形式です。
成功事例としては、とある上場準備中の会社に導入されていたCRMシステムを、ほかのシステムと連携がしやすい海外のSFAツールに切り替えることを提案しました。監査法人の確認が始まるタイミングでは、ヒューマンエラーが出るリスクも減点の対象に入るため、そこでの問題点を解決できる、ツールをご提案したのです。この企業は監査法人が入る際に、この点がツールによって解決できるということをご存知でなかったため、問題が起こる前に改善できました。この提案が上場までのプロセスをスムーズに進める上で一助になったと考えています。
ちなみに当社では「誰がやっても同じサービスを提供する」という組織ではなく、あえて「属人化」を推奨しています。企業ごとに課題は違うため、近しい業種や規模に対し、ご支援させていただいた際でも、運用方法はそれぞれ違います。当社の担当コンサルタントが顧客の事業を最も理解し一緒に考え続けるからこそ、クライアントの課題に応えて「プロフェッショナル」として力を発揮できると考えています。そんなコンサル事業を主軸に据え、ほかにも教育やコンテンツ作成といったビジネスも展開しています。
時代のニーズに即した専門スキルを磨き、市場価値を高めよう。
──若者へのメッセージをお願いします。
最初に「ファイナンスを覚える」ことを推奨します。わかりやすいところだと、「メンバーの生産性」です。各々のメンバーがどれだけ会社に利益をもたらしており、どれだけ給料として還元されているのかを的確に知る必要があります。社会に出ると「頑張ったからお金をもらえる」わけではなく、「どれだけ結果を出したか」が求められるので、自分自身の市場価値を知るのが第一歩です。
私の場合でいうと参入障壁はある程度あるけれど、経験を活かしつつ、参入できる事業を選びました。あくまでもBtoBマーケティングが「自分や会社のビジョンを体現でき、これからさらに成長する」と判断し、自分の市場価値を上げるためにMAツールを開発・販売している企業に転職して、独立に至っています。
ちなみに当社では、教科書通りにはいかない多種多様なクライアントの課題に対して、“自分の頭で考えて、行動する人材”をお迎えして育成しています。「将来、独立したい!」という方も歓迎します。
また、当社では採用に関して「入社時点ではIQを見る」「IQ至上主義」という価値観を掲げています。というのも、EQは後天的に鍛えられる分野だからです。実際、大手優良企業のなかには、入社後にEQを高めるマネジメント手法を用いて人材育成に取り組み、成功している事例も多くあります。その点は私たちも力を注いでいるところなので、もし当社での仕事にご興味があればぜひご応募ください。