「死」をも頭をよぎった、学生時代の究極の逆境。
──逆境経験とそれを乗り越えた方法について教えてください。
幼少期の頃から身近な存在の方が経営者で、その方の人間力も含めて尊敬する存在であり「自分も経営者になりたい」という憧れを高校生くらいから抱くようになりました。そこで大学は経営学部に進学したのですが、「過去のことを座学で学ぶよりも、実践したい」と考えるようになり、在学中に営業会社に入社。おかげさまで半年後には歴代最高営業本数という成果を残し、管理職を経てCOOという大役を務めたのですが、「もっと自分のやりたいことを追求したい」と考えて独立を決意。それが19歳の時のことです。
そうして右も左もわからない状態で起業し、人材に関わるビジネスをスタート。当時は勢いにまかせて、契約書を交わさずに事業をドンドンと進めている状態だったのですが、その最中に“詐欺”に巻き込まれてしまったのです。私が知らないところで、“先輩の先輩”という少し離れた存在の方が契約した先で起こったことでしたが、証拠もなく当方の責任になりました。自分の情報リテラシーの低さから「多額の借金を背負ってしまった」というのが、最大の逆境体験ですね。それが20歳のときで、今思えば本当に未熟でした。
乗り越えた方法としては「自分との対話」です。というのも、当時の私からはあまりに大きすぎる金額だったので誰にも相談することができず、「死」が頭をよぎることもありました。そんなギリギリの精神状態の中で、「なぜこんな不幸に遭遇してしまったのか」を自分の中で深く掘り下げ、徹底して自己対峙したとき「生きる」ことへの意義を見出すことができました。そして自分の“核”となる部分を探り当て、“生きていく上での目標”も明確になりました。今では冷静に振り返っていますが、当時は友人たちとも半年ほど会うことなく内省の日々を送り、その間にビジネス本や哲学書を200冊ほど読みましたね。
折しも世間ではコロナ禍が広がり、その不安定な情勢につけ込んだ詐欺が横行しており、そのような被害にあった学生たちからの相談が、私のところにも数多く舞い込んできました。自分が騙されたとき、誰にも頼れなかった経験や社会に対する義憤が重なり「Z世代を徹底サポートし、Z世代が輝ける社会を創る!」というのが、“生きていく上での目標”に定めました。それを達成するために、GOAT株式会社を立ち上げたのです。
鍛えられた精神から、「恩返し」の気持ちが芽生える。
──逆境から得た教訓は何でしょうか?
大きく2つあります。失敗したとき周りに対して本当に迷惑をかけましたし、自分が味わった辛さを思い返してみても、二度と経験したくない出来事です。ただ、その経験があったからこそ、「ビジネスにおいて仲が良かった仲間と、袂を分かつことになってしまう」といったような、悲しいことが起こっても「あのときほどではない」と、前向きに気持ちを切り替えることができるようになりました。これが教訓の1つ目です。心の中の洞窟を巡る旅は過酷でしたが、それをあきらめずに乗り越えたからこそ精神が鍛えられ、状況が好転して理想を追いかけることができています。
2つ目は、「多くの方々に助けてもらった」ことです。逆境を迎える前は、正直「人に尽くす」というタイプではありませんでした。むしろお金や影響力を持ったことで“天狗になっていた”という時期もあったと思います。しかし色々あった後、たくさんの方の優しさに触れる中で「この人たちに恩返しがしたい」と感じるとともに、人間という存在全体に対する感謝の念が心の底から芽生えました。今進めているビジネスでは、「感謝の気持ち」をベースにして展開しています。
──会社を経営されている中で、「教訓が役立っていること」はありますか?
会社運営は楽しいだけではなく、大変なことも多々あります。例えば、立ち上げ当初は完璧な事業計画があるわけではないので、「どのように売上をつくっていくか?」という部分からのスタートです。ゼロから始めて、実務の中で学び成長していくのが当社流なので最初のころは苦戦しました。あとは、「飲食店を手掛けたものの利益が伸びずにロスカット」「大手企業の案件を引き受けるも、企業文化の違いなどから撤退」など、上手くいっている事業の影に、トライアンドエラーも結構隠れているものです。
以前の私なら、失敗を引きずることもあったと思いますが、今では「失敗から学んだことを、次に活かそう」とポジティブに捉えて、そうした経験もすべて糧にしています。あとは、「相談すること」の大切さを覚えました。1人で抱え込むのではなく、何かあったら逐一相談することを徹底するようになりました。
Z世代に特化したPR事業を展開中。
──会社の強みを教えてください。
デジタルネイティブ世代の採用や集客といった「Z世代に特化したPR事業」を主軸に展開しています。当社の前身である『学生団体GOAT』として活動していた時期から、500~600名の学生と継続的につながりを持っているので、アンケートをとったり実際に商品を使ってもらったりするときに“生の声”を用いたリサーチが可能です。それをもとに企画を立て、SNSなどで発信するといった事業を行なっています。強みとしては、私たち自身がこれまでの歴史に存在しなかった“デジタルネイティヴど真ん中”なので当事者ならではの発想を用いた企画を立てることができ、さらにZ世代の生データに基づいたビジネスを構築できるところですね。
例えば、あるアパレル事業の展開をお手伝いした事例があります。そのお客様は新規ビジネスとしてアパレルブランドを立ち上げられたのですが、「若者への発信の仕方がわからない」「SNSをどのように使えばいいのだろうか?」とご相談にこられました。これまでも店舗を持たずに広告などを使った運営をされていたそうですが、「広告費が高すぎるのに効果が低い」といった課題も抱えておられました。そこで当社が企画したのが、当時流行っていたキャラクターを意識した「VTuberのキャラクターをつくり、活動する」という施策でした。
そして実際に運用を始めると、3か月で150万のインプレッションを集めることができ、フォロワーは7,000名に増加。以前は広告に頼っていた売上の半分が、SNSからの購入へと変わりました。
Z世代の活躍をサポートし、企業の最適解を促進。
──お話をお伺いしていると「熱い想い」をお持ちだと、ひしひしと感じます。
「Z世代と企業の架け橋になる」という理念には、少子高齢化社会を迎えた日本を「私たちが当事者となり、本気で変えていく」という想いがこもっています。そのためには、まず自分たち自身の変革が必要であり、当社はその後押しをする覚悟です。例えば、日本式の「新卒採用」や「年功序列」といった制度は、個性を台無しにしてしまう旧時代の悪しきしがらみでしかありません。私たちは、Z世代の多様な才能を最大限に発揮できるような“最適解”を常に模索しながら事業を運営しています。それが、この国の繁栄を築く財産になると信じています。
──若者へのメッセージをお願いします。
「夢見る若者」はたくさんおられますが、成功の過程ばかり見すぎて「失敗」に目を向けない方も多いと思います。私がまさにそうだったので、同じ間違いを繰り返して欲しくないと考えています。自己啓発本などには「成功した事例」ばかりが取り上げられていますが、「起業に失敗した本」はほとんどありません。しかし、実際のところ「成功に方程式はない」のですが、「過ちには一定の法則がある」のです。ですので、逆境で得た体験を通して「失敗にこそ価値がある」ということを伝えたいですね。あとは、「自分ひとりの力はたかが知れている。みんなで協力することで大きなことを成し遂げることができる」ということも知って欲しいです。
もし、何か悩みや思い詰めていることなどがあれば、私でもいいですし周りに相談してください。当社としても利害に関係なくお話を伺ったり、できる限りサポートできる体制を整えています。「若者が輝くこと」が当社の役割だと考えているので、気軽に相談してきてください。そして、このインタビュー記事を読んでいただいて、「Z世代から世の中を本気で変えていきたい!」という理念に賛同してくださる方は、ぜひ当社の門を叩いて欲しいです。