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【ノウンズ株式会社 田中 啓志朗】「モヤモヤの解決」から始まった、画期的なデータ活用ビジネス。

2023/12/12

Profile

田中 啓志朗

ノウンズ株式会社 代表取締役

慶應義塾大学卒業後、株式会社リクルートで事業戦略やマーケティング、新規事業の立ち上げなどに参画したキャリアを持つ田中社長。現在は「あらゆる人に、データという武器を。」をミッションに掲げる、ノウンズ株式会社の代表を務めている。同社は消費者ビッグデータを誰でも簡単に分析でき、多面的で豊富なデータを礎にして、企画立案やクリエイティブにつなげる『Knowns Biz』といった画期的なサービスを展開している。

今回は田中社長に逆境体験や、それが起業や今の会社運営にどのように活かされているのかなどを伺いました。

「不毛な作業」という逆境が、アイデアにつながる。

──逆境を感じたことや、その経験から学んだエピソードなどを教えてください。

苦労したエピソードとしては、大きく2つあります。1つ目は今のビジネスモデルの原点につながっているのですが、新卒入社したリクルートで事業戦略やマーケティング、新規事業に携わっていた経験です。ビジネスパーソンとしては、みなさんのおかげでさまざまな事業で経験を重ねることができたのですが、業務における「データを収集する上での非効率さ」にモヤモヤとしたものを感じていました。例えば、新プロダクトを立ち上げる際には、企画の礎となるデータが必要ですし、上司たちを説得するにもファクトとなるデータが必要になります。

例えば、WEBのアクセスデータや注文・予約のデータなど既存サービスのデータは社内に豊富にあるのですが、新しい施策や新規事業の場合は根拠となるデータはほとんど社内にありません。ゼロから消費者の動向などを調べるため、徹夜に近い状態で大手検索サイトなどで情報収集をしていました。ただ、苦労して明け方まで作業しても「求めているデータそのもの」が出てこないケースもあり、それでやむなく企画書を作って提出すると、「データ不足だから差し戻し」という憂き目にあうといったこともあったのです。そもそも自分が「データが大好き」でデータの収集や分析を得意にしていたので、その部分が思い通りにならないことが、大きなストレスでした。

世の中には消費者の動向を調査する会社はありますが、予算がかかる上に結果が出るまで時間を要するので、「明日や明後日のプレゼン資料に必要なデータを、すぐに引っ張ってくる」といった日常業務で気軽に使うことはできません。そこで、エビデンスになる情報の収集に悪戦苦闘するわけですが、極めて非効率で生産性が低い作業なのです。そこで「もっと簡単に、素早くデータが集められる手段はないだろうか?」と考えるようになりました。そして知人のマーケッターや企画畑の人たちに聞くと、みんな同じような悩みを抱えていることもわかりました。

会社を創業する前に、趣味のサウナに入りながら「どうすればリクルートに在籍していたときの、あの不毛な作業を無くし、もっとクリエイティブで建設的な業務に時間を使えるか」という考えに思い巡らせていました。それが現在の、消費者のビッグデータを扱うという当社のビジネスモデルへとつながっています。いわば、モヤモヤやフラストレーションといった“逆境体験”が起業の原点です。

「心理的安全性を重視する組織」の必要性を痛感。

──2つ目の逆境体験と、そこから学んだことについて教えてください。

まだ私がリクルートに在籍していた際に、学生時代の友人が、PCやスマホを扱っている人の感情や行動を、ビッグデータとAIで分析するサービスを手掛けるベンチャー企業を立ち上げました。今は「AI×ビッグデータ」は当たり前ですが、当時はほとんどなかったので新鮮でしたね。リクルート在職中に、自分の担当しているEC事業のサービスにそのサービス導入したところ、CVRが伸び、売上が伸びていくのを目の当たりにしました。ある日、その友人から「うちはエンジニアしかいない会社なので、サービスを普及するためのビジネス部門の推進を任せたい」というお誘いを受けたのです。もともと「スタートアップに興味がある!」という気持ちがあったので、良い経験になると思い転職を決意しました。

私が7番目の社員という、創業期から参画。1年後には社員は30名以上に急増していたので、まさに伸び盛りの会社でした。日本を代表するようなEC会社にも導入され、私も日本全国を飛び回って売上の拡大に貢献するなど、ビジネスとしては「順風満帆そのもの」でした。ただ、その急成長が組織に歪みを生み出す引き金にもなっていたのです。スタートアップにありがちな状況なのですが、高い能力を持つ人材の“個”を優先するあまり、組織としては脆弱な側面がありました。それが、アクシデントにより顕在化し、組織崩壊にまで至ってしまったのです。

そこが第2の逆境でしたね。当時、私はビジネス部門のメンバーを引っ張っていく立場だったのですが上昇気流の中で、「売上がどんどん伸びる中、個人個人のテンションに任せたリーディングをしてしまった」という反省がありました。健全な成長のためには、みんなが心理的安全性を持つことが重要で、そのためには「思いやりや配慮が不可欠」だということを思い知らされたのです。

その教訓を活かして、当社では「親しき仲にも礼儀あり」を徹底し、良い意味での距離感を保つという工夫をこらしています。年功序列制度も撤廃し、私自身はインターンの学生に対しても敬語で接するなど、みんなに同じような意識を持ってもらえるように規範となるような行動を心がけています。

データを網羅し、「推しキャラ」の影響力も一瞬で可視化へ。

──画期的なビジネスモデルで事業を展開されています。強みなどを教えてください。

これまでの消費者ビッグデータは、「必要になったら、その都度アンケートなどを実施する」というものでしたが、当社では先に『Knowns App』という自社アプリを通じて多岐にわたるデータを収集し、そのビッグデータを企業に提供するというビジネモデルです。例えば、「ビール」を例にあげると、「各メーカーのブランドが、どのような客層に好まれているか?」といった基本的なことはもちろんのこと、「親和性や訴求性の高いタレントは誰か?」「そのタレントがどの客層に、どのような効果をもたらしているか?」といったところまで網羅。ビジュアライズされているので、結果が一目瞭然である点が、当社の『Knowns Biz』の特徴です。

おもしろいところでは、エンタメの「推しキャラクター」の影響力の数値も一瞬で可視化できます。ほかにもCMの評価データや日々の消費者の食卓のデータなど、幅広い領域をカバーし、過去に「50時間かけてエビデンスになりそうな情報を集めていた」ような状況から、『Knowns Biz』を使えば、5分以内でデータの抽出・分析ができるようになります。非生産的な時間を削減し、企画立案やクリエイティブな業務に注力することができるようになるのです。現在、大手広告代理店やナショナルクライアント、コンサルティング会社などに急速に導入が進んでおり、累計2,500アカウントまで利用者が増えています。「このサービスに出会えて良かった」という声を聞くたび、うれしい気持ちになります。

──今までになかったビジネスモデルだと思いますが、思いつくに至った知識などはどうやって得られたのでしょうか?

もともと、好奇心が強かったことと、趣味で上場企業のIR情報を閲覧し、「ビジネスの仕組み」を読み解くのが好きだったことが起因していると思います。企業の中長期戦略の資料を見てボトルネックなどを探し出したり、自分なりに分析して改善点を考えたりしていたので、思考力が鍛えられました。さらに、友人の会社時代にSaaSビジネスの知見を得られたことも大きかったですね。

早期にプロ意識を持ち、実力を磨き続けよう。

──最後に、若者に向けてメッセージをお願いします。

私は新卒大企業、その後スタートアップというキャリアですが、「会社が実現したいことと、自分が叶えたいことが一致している」「社長の理想やサービス・プロダクトに共感できる」という共感を大事にして働く組織を選ぶことを、強く推奨したいですね。自分の目指す道やキャリアと同じ方向性の会社であれば、逆境を迎えたときなどに立ち向かう原動力になります。一方で、ワークライフバランスも大切です。若いうちは「がむしゃらに頑張る」でいいと思いますが、人生単位で考えると仕事だけでなくプライベートの充実も重要になります。私が起業しようと思った直接的なきっかけも、2人目の子どもが生まれたタイミングで「仕事と子育ての双方を大切にするため」でした。

あとは、「プロ意識=当事者意識」を持つことです。労働市場が流動化する中、「育ててもらう」という感覚よりも早々に「何かしらのプロ」になると意識されている若い方が増えてきていると感じています。自分も若手のときに一番意識していたところであり、振り返ると大事だったと感じます。

最後に「仕事で誰かを喜ばせて、驚かれるような経験を積む」ことも、キーポイントになるのではないでしょうか。例えばお客様から「ここまでしてくれるとは思わなかった」と感謝の声をいただけると、心の奥の根源的なところで気持ちが良いものです。若いうちに、こうした成功体験を重ねることで「プロとして、人を幸せにする」というメンタリティーが養われると思います。

ノウンズ株式会社

設立 2019年12月3日
資本金 5億4988万8614円
売上高 非公開
従業員数 58人
事業内容 消費者分析SaaS「Knowns Biz」の開発
消費者向けアンケートツール「KnownsApp」の開発
URL https://biz.knowns.co.jp/ https://knowns.co.jp/ https://knowns.co.jp/recruit/customer-success
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