2019年に設立後、コロナの大ピンチに見舞われた。
──逆境体験について、教えてください。
2019年に当社を立ち上げたのですが、直後のコロナ禍で大きなピンチを迎えました。当時は営業代行やウェブマーケティングを軸としたビジネスを展開し、アルバイトなどを含めると20名くらいのスタッフがいたのですが、コロナ禍の直撃を受けて資金繰りが一気に悪化したのです。「今月の支払いなどに影響が出てきそうだ」というタイミングで申請していたコロナの緊急支援の書類が通り、クラウドファンディングサポートに事業転換。それが現在、当社の主軸ビジネスになっています。
立ち上げてすぐのころは、「とにかく受けた依頼全てに関わり、相手のことを24時間考える」というスタンスで臨み、20社ほどのお客様を対応していたので非常に大変でしたね。また、みっちりミーティングをしてフルコミットしても入ってくるお金は微々たるものだったのでビジネスとしても苦労がありました。今では、「この領域は当社が担当。ここから先はお客様に任せた方がうまくいく」という判断ができるようになりました。さらに、同事業のパイオニアとしてトップクラスの実績とノウハウを有することにつながったので、今後はさらに攻めていく方針です。
当時のことを思うと「大変だったな」とは思いますが、貴重な経験を積めてチャンスにつなげることができたので“逆境体験”かと言われると微妙なところというのが正直な所感ですね。
──学生時代に起業されていますが、きっかけはなんでしょうか?
大学で情報工学を専攻しており、学友たちのほとんどが大学院に進学している中、私は就活に励み内定を貰っていました。ただ、一番行きたいと思っていた企業にだけ受からず、「それなら自分でビスネスをしよう!」と考えたのが、起業のきっかけですね。もともと家族が経営者だったので、起業に対するハードルを感じることはありませんでした。起業前にフリーランスで営業代行をしたり、大学1回生のときから学生が集まって作ったベンチャー企業に所属したりしていたこともあり、法人化もスムーズでした。
何度も「起業に立ち会う」大変さと、それ以上のやりがい。
──苦労したからこそ、得られた教訓はありますか?
コロナ禍後の立ち上げ期に、多数の新サービスや商品の展開など「新規事業やプロジェクトが始まる前の段階から担当」させていただいたことで、豊富な知見や教訓などを得ることができました。お客様と並走しながらクラウドファンディングサイトに掲載する内容や訴求ポイントを一緒に立案するとともに、実際のページ制作に至るまでを丸ごと担っていたのでノウハウが蓄積され、成功するパターンもわかるようになりましたね。
成功するプロジェクトは、内容もありますが実は携わる方の「本気度」「誠実さ」といった人間性も重要です。組織の場合は「チーム力」も大切です。専門領域はクライアントの方が当然詳しいですが、同様にクラウドファンディングに関しては当社はプロなので、お互いに尊重しあえる関係性を構築できたプロジェクトはおおむね成功します。
また、新しいお客様をサポートする際に、積み重ねてきた知見を応用できる点や、私も含めメンバーたちは「毎回、起業に立ち会う」という経験を積むことができたので、大きな成長につながったのもうれしい副産物でした。深くお客様と関わる中でお互いの強みを活かし、苦労をともに乗り越えることでサポートしあえる絆を育めることもありがたいと感じるところです。
──新事業に挑戦された理由を教えてください。
営業代行やウェブマーケティングは、競合他社だらけのレッドオーシャンですが、クラウドファンディングサポートは当時はほぼ皆無の状態でした。「利用してみたい」という個人や会社は多いものの、「やり方がわからない」という人がほとんどなので、ブルーオーシャンが広がっていたのです。ビジネスモデルとしても面白く、クラウドファンディングは「資金調達」以上に、新ビジネスやプロダクトなどを幅広い層に訴求できるPR効果が極めて高い手法なのです。さらにそこからTVで取り上げられたり、ネットで拡散するケースは多いですよ。
他の追随を許さない、独自のノウハウと豊富な実績。
──自社を分析すると、どのような強みをお持ちだと思いますか?また、相談内容や成功事例のエピソードについて伺いたいです。
まだクラウドファンディングサポートに特化した企業は少ないので、そもそもビジネス上の優位性があると考えています。その上で、たくさんのお客様のおかげで多数の実績を持てたことと、苦労しながらも成功に導く中で知見やノウハウを得られたことが強みだと思いますね。今後も、業界の先駆者として道を切りひらいていく覚悟です。
ご相談いただく内容は「新規事業を立ち上げるので、PRしたい」「海外ブランドの総代理店になろうと思っているが、どうやって販売すればいいかわからない」といった中小企業からのオファーや、個人の方から「今まで自分で挑戦したプロジェクトが20万円の支援しか集まらない」といったものまで様々ですね。ちなみに、この方の売上はご依頼いただき、500万円以上の支援を集めることができました。他にも、新店舗の出店に向けての訴求や新たな食品のPRを手掛けたこともありますし、発明家の方からご相談をいただき「どんなプロダクトを開発すれば、消費者に喜ばれるか?」といったところからご一緒させてもらったこともあります。
現在、新規のお客様は既存顧客からのご紹介やクチコミが多いです。「どれくらいの影響をもたらすことができたか」といった実績をご存知の上で、ご相談をいただくことが多いです。プロジェクト終了後にクラウドファンディングをやってよかったというお声をいただけることは、大変ありがたいことだと感じています。
若いうちの失敗は、必ず糧になる。恐れずにやりたいことをやろう。
──若者へのメッセージをお願いします。
本気で「やりたい」と思ったことは、思い切って挑戦した方がいいということですね。若いうちなら、失敗をしたとしてもいくらでも取り返しがつきます。私自身もそうでしたが若ければ若いほど、たとえば「学生のうち」にチャレンジして失敗した場合、間違いなく得難い財産になるのです。これが年齢を重ねて「守るべき家族ができた」という人生のフェーズになると、思い切って挑戦するのも難しくなるとも思います。
私の話をすると、学生のうちからビジネスを始めて社会経験を積んだことで、良いところも悪いところも見ることができ、世の中の仕組みなどを学ぶことができました。大手企業に入って社会のことを勉強するものひとつの方法だとは思いますが、独立して経営者になると早期に濃厚な経験を得られます。泥くさいことも多いですが、そうした部分こそ若いうちに肌で感じておいた方が将来の役に立つと信じています。「いきなり独立はちょっと」という方は、当社なら新規プロジェクトにイチから携わる“起業経験”を毎回積むことができますよ。
これまでの失敗や経験を通して、経営者の視点が養われてきたことを感じます。以前の私は「全部、自分でやってしまう」というタイプでしたが、数多くのプロジェクトに参画する中で「線引き」ができるようになりましたし、事前に「成功への確度」への感性を磨くことができたことが大きいですね。経験を経て「地に足が付き、リアリストになってきたな」という実感があります。25歳の私もみなさんに近い年齢だと思うので、ともに頑張りましょう。