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【株式会社クロスアイ 伊藤 啓輔】ひらめき型とデータ派の経営者が、エンタメ業界に革命を巻き起こす。

2023/10/25

Profile

伊藤 啓輔

株式会社クロスアイ 取締役副社長

「心底楽しむ、楽しませる。」もモットーに掲げるキャスティング会社、クロスアイ。芸能一家に生まれたひらめき型で天才肌の布目社長と、少年時代に極貧を経験し大学を首席で卒業するという努力と秀才型の伊藤副社長が経営の舵を取る、ユニークかつ革新的な会社だ。今回は、伊藤副社長に逆境体験や、それが会社経営にどのように役立っているのかなどを伺った。

リアルに壮絶だった、少年期の貧乏体験。

──逆境経験について教えてください。

色々とあるのですが、人生に大きな影響を与えることになった少年期の「貧乏生活」が一番の逆境体験ですね。1DKのボロボロの部屋に、父と母と祖母と兄弟の6人で中学時代まで過ごしていました。家の場所は近くに著名人の豪邸が建っているような、東京の高級住宅街の中にあり、同級生たちも大邸宅に住んでいたので遊びに行った時に経済格差を肌で感じていました。苦労したのはなんといっても「お風呂がない」ということ。毎日銭湯に行けるお金もなかったので、部活のあとの汗を濡れタオルで拭いたりしていました。

この強烈な原体験が、その後の頑張りの源になっていきます。ただ、お金はなかったですが、両親からはしっかり愛情を受けて育ててもらいましたよ。父と母に対する敬意は今も昔も変わらず、関係性も良好です。貧乏生活は中学校まで続くのですが、その頃横浜の転校先で馴染めず、不登校になるという経験もしました。大学時代はがむしゃらに勉強に打ち込み、おかげさまで首席で卒業。また、バスケットボールの部長としてスポーツにも注力し、そこで社長の布目靖太郎と出会うことになるのです。

卒業後は「ベンチャーマインドを学びたい」と考え、株式会社USENに入社。新人王を獲得するなど順調な滑り出しでしたが、同期たちの凄さなどを横目で見ながらも、ライフステージにおいて当たり前の幸せを求めて、私立大学の職員に転職しました。ここが超のつくホワイトな職場で、極めて安定した環境でした。そこで20代で結婚し、車や持ち家からお墓まで購入するなど、一般的に「必要で欲しいとされるもの」は全部手に入れることができました。特に自分で建てた家のお風呂に入ったときは、少年期を思い出して一人で泣きましたね。しかし、逆説的にはなるのですが「欲しかったもの」を全部手に入れたことが、自分の中での「逆境感」に繋がっていくのです。

すべてを手にして訪れた喪失感が、起業の起爆剤に。

──どのような過程で起業に至ったのでしょうか?

原体験の「貧乏」が強烈過ぎて、「安定した生活」を望んだはずだったのですが、いざ全部を手に入れてみると「生きる上での意味」を失ったような気持ちに襲われました。そこで喪失感を補うために、イベントや物販などの副業を手当たり次第にやり始めたのです。そのタイミングで、学生時代からずっと友人だった布目と婚活パーティーを開催して成功裏に導くことができました。もともと、布目とは「仕事に対して妥協せず、フルコミットする」といった同じ哲学を持っていたのですが、その時にお互いが感じたのは「完全に役割分担ができる」という価値観です。大枠のプランニングを天才肌で感覚派の布目が担当し、細かいディフェンシブなところを私が決めていけば「事業として上手くいく」ことをお互いで確認しあえたのです。そこで「独立しよう」と決まり、今に至ります。

──逆境があったからこそ得られた、会社の強みはありますか?

社長の布目は祖父が浪曲奇術の第一人者で、父が競馬評論家で著名な井崎脩五郎という芸能一家です。生まれも育ちもよく、一言で言うなら『ザ・ハッピー人間』といったタイプです。誰からも好かれるキャラクターで、彼のことを悪くいう人に会ったことがありません。私の方は貧乏だった原体験をハングリー精神というエネルギーに変えた、言わば「叩き上げ」だと思います。当社の武器は、そんな真逆の2人で「豪快な攻め」と「堅牢な守り」を実現できているところだと思いますね。布目はゼロイチに強みを持ちビジネスの種をまくのが得意で、生まれたビジネスの仕組み化やデータベースにするなど1を10に拡大していくのが私の役割です。

お金に対しての考え方もそうで、布目は広告費などに対して大胆に投資マネーを注ぎ込みますが、私は資金管理を徹底し、契約書にはきっちりと必要事項を盛り込みます。これまでも利益を見込んだ案件が炎上しましたが、契約書でリスクヘッジできたケースもあります。布目のエッジを存分に活かすためにも、私が逆境の中で培った、ある種の「ケチ根性」は役立っていると思います(笑)。

企業のPRの最適解を、圧倒的スピードで提案して解決に導く。

──革命的とも言える事業を展開されています。わかりやすく教えていただけますか?

タレントやインフルエンサーといった有名人と、企業の橋渡しを担うキャスティング会社です。「日本一芸能に詳しい会社」として、当社にご相談をいただければ“ワンストップでスピード対応”できるのが特徴です。会社としては、広告代理店の「ビジネスマインド」と芸能プロダクションの「エンタメ力」の“いいとこ取り”をしているイメージですね。芸能界はみんなに夢を与える素晴らしいところですが、一方でその閉鎖性や独特の慣習による「わかりづらさ」といった悪しき風習も存在します。そこに風穴を開けるのが、私たちのミッションのひとつです。

ワンストップでスピード対応ができる理由は、まず「独自のコネクション」です。社長の布目の豊富な人脈のみならず、芸能マネージャーや元有名子役、インフルエンサーの経験者が集っているので豊富なコネクションを持っています。また、芸能界だけではなく、各業界の専門家たちともご縁を紡いでいるので「全ジャンルに対応する組織」です。

「圧倒的速度で優位な交渉」ができることも特徴になります。例えば芸能界の一部の企業は現在でも、電話やFAXのやりとりが続くアナログな世界です。とある大手事務所に連絡をとったら「反応までに1週間を要した」なんてことはザラですが、私たちにご依頼いただければ数分でお戻しできます。その理由は、チャットツールで各業界のキーパーソンたちと繋がっているから。すぐに連絡をやり取りできる点は出演交渉以外に「細かいクリエイティブの作り込み」にも役立ちます。たとえば、「1ミリ単位でヒゲの長さにこだわる俳優」の場合でも、スムーズなやり取りで即フィードバックすることが可能なのです。

最後に「ITシステムを用いた提案」になります。アナログで属人化しているスキームをデータベース化することでこれまでは、「何となく」や「長年の勘」に頼っていたものを、全て数値化していますね。たとえば「若い既婚女性に対してPRしたい」場合は、ママタレントやインフルエンサーが、「どの層から支持を受けているか」をデータ解析で見定め、予算に応じてすぐに提案できるシステムを構築しています。

 

どんな経験も絶対に役に立つ。そして運は努力しなければ掴めない。

──若者へのメッセージをお願いします。

「今は一見無駄に思える仕事でも、一生懸命頑張れば将来何かしらの役に立つ」ということですね。当社の場合は、社長の布目がキャスティングど真ん中を突っ走り、私は自らの営業活動に加え、キャスティングを仕組み化し、社員の品質を担保できるようにしたり、法務や総務、財務といった企業の根の部分を担当しています。

具体的な業務でいうと、法務ができるのは、大学職員時代にルールを制定する書類と毎日向き合ってきたからです。クライアントや広告代理店に飛び込み営業にいくこともありますが、これは営業マン時代で身に付いた度胸が役立っているのかもしれません。また弊社はキャスティング業界では珍しい、積極的なIT投資をする会社です。これらは営業マン時代のIT知識、大学職員時代の学生データベースの構築、更には副業でやっていたサーバ構築のノウハウ…といった地道な経験が下地です。

あと、当社は元教員やアスリート、ティックトッカーや芸能関係など様々なバックボーンを持つ社員たちが集っているのですが、そこで活躍してきたことがコネクションになっています。とある教授をブッキングするとき「難しい」と業界関係者たちから言われていたのですが、大学職員時代に身につけた「教員とのコミュニケーション」のノウハウがあったのでスムーズに物事を進めることができました。その時は、しんどい、つまらないと感じることでも、頑張っていると後々報われることがあると思います。

成功要素の一つとして「運」はあるかもしれません。実際に学生時代に布目に出会えたことは人生における大きな「運」だと思っています。しかしながら、当時私が必死で学びやスポーツに取り組んでいる姿をみて、布目との縁が深まったのでしょうし、「運」を呼び込むためには「努力」は不可欠だと信じています。

株式会社クロスアイ

設立 2019年11月
資本金 3,000,000円
売上高 12億円(グループ会社含む)
従業員数 20人(業務委託含む)
事業内容 キャスティング事業 映像制作事業 広告運用事業
URL https://x-i.co.jp https://www.wantedly.com/companies/company_4678913/ https://twitter.com/xi_itoksk
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