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【株式会社白寿生科学研究所 原 浩之】二度の逆境を乗り越えた、老舗医療メーカー3代目経営者が描く、次世代の戦略とは?

2023/08/25

Profile

原 浩之

株式会社白寿生科学研究所 代表取締役社長

ヘルスケアを総合的にサポートする事業を展開する、株式会社白寿生科学研究所。健康や幸福の向上を目指す"well-being"を掲げ、「ハクジュプラザ」を全国に450拠点展開している。同社の代名詞ともいえる「ヘルストロン」は1928年に医学博士の原敏之が開発し、1963年には厚生省(現・厚生労働省)から医療機器として承認を受けた。今では累計100万台以上の出荷実績を持つ。一般家庭はもとより地方自治体の福祉センターやクリニックなど約5,000カ所に設置されるなど絶大な支持を集めている。

今回は開発者の孫であり、同社を率いる原浩之社長に事業拡大の中で起こった壮絶な逆境体験や同社の理念などを伺った。

100年の実績を礎に、誠実経営でさらなる一手を。

――御社の事業の特色と、今後目指している方向性について教えて下さい。

祖父が開発した「ヘルストロン」の生産販売のみならず、健康食品の開発から製造販売などを行っています。ヘルスケア情報を地域の方々に伝える「ハクジュプラザ(以下:プラザ)」を全国展開し、健康増進のお手伝いをしているのが特色です。WHO憲章では健康の定義として「肉体的、精神的」に加えて「社会的」も挙げられています。プラザは地域コミュニティの形成の促進にもつながっており、ご年配のお客様から「健康について詳しくなれるだけではなく、年齢を重ねても知り合いが増えていく」という声を聞くと、うれしい気持ちになりますね。

今後は、来年創業100年を迎えることもあり、まずはもっと一般の方への知名度アップを図りたいと思っています。さらに健康に関するビジネスを川上から川下まで幅広く手掛けていることを他の企業にも知っていただき、ゆくゆくは協業を目指すといった「BtoB戦略」にも力を注ぐ方針です。プラザで働くヘルスアドバイザーたちのきめ細やかなコミュニケーションで、毎日約5~6万人のお客様と信頼関係を構築しているのが、当社の特徴です。有益な情報を「伝える」だけではなく、消費者の声を「直接ヒアリング」できるという双方型の独自チャネルを有しています。

都市と地方の地域性についても各店舗が熟知し、ローカルマーケティングにも強みを発揮できています。健康総合企業として企画開発・製造といったものづくり領域から、薬機法やISOに関する知見を持ち、物流マーケティングまでを一貫して行っているため、アライアンスを組むメリットや可能性は業種を問わず、果てしなく広がっていると思います。

――社内はどのような雰囲気でしょうか?

とにかく人間性が素晴らしく、優しいタイプの社員たちに囲まれているのが自慢ですね。承認欲求の方向性も「自分が一番」ではなく「他人の笑顔が自分の喜びになる」というマインドの社員が集まっています。そして活発にコミュニケーションを取り合いながら、時には夢を語り合うような職場です。「自分やお金が中心」という社員はいませんし、そもそも採用しません。

かくいう私自身、実は当社に来る前の銀行員時代は「自分に対する承認欲求」が強く、「あるべき論」を振りかざし「そうじゃなくて!」が口癖でした。当社に来てから「感情に流された言葉」が人に伝わらないことを実感しました。相手に寄り添い、伝え方を変える努力を積み重ねましたね。

訓練した方法の一例をあげると、人に注意すべきことがあったとき、いきなり本人に言うことをやめました。一度手紙にしたためた内容を次の日に読み「これは叱責と受け取られる表現だな」と感じたら別の表現に変えるということをしていました。今は感情をぶつけることなく、何でも話を受け入れるようになったので、昔を知っている友人からは「180度人間性が変わった」と言われています(笑)。

汗と血をともなう構造改革をやり抜いた、全国行脚。

――逆境経験について教えてください。

現在の「ヘルストロン」は直営店でのみ扱い、「頭痛」「肩こり」「不眠症」「慢性便秘」の4つの症状を緩解するという効果を謳っています。しかし、1985年より以前は販売を代理店に任せていた時代がありました。すると、4つ以外の効果もあると謳い売上を伸ばすなど、利益至上主義になってしまう状況が出てきてしまったのです。そこで直営店方式への切り替えを始めました。当時は売上を追求する風土が根強く、さらにヘルストロンを模したジェネリック版が他社から出回るようになりました。当社に対してネガティブなキャンペーンをされることもありました。

そうした製品であっても、お客様や監督省庁から見れば「ヘルストロン」という認識であり、私が入社した頃は高い売上と利益を出しつつも、諸問題を抱えている状態でした。ただ将来のことを見据えると、本来持つ効果以外を謳うことでTVCMを流せなかったり、量販店との取引が難しかったりといった課題を抜本的に解決する必要がありました。

そこで、2003年初頭に改善を決意。上記の「4つの効果以外は言わない」という方針に切り替え、それまでに流布していた悪評を覆すための大きな決断を会社が下すことになるのです。しかし、既存の好業績を真っ向から否定するやり方になるので、大きな反発もありました。「会社が潰れる」と感じるほど大変な雰囲気の中、改革の旗印になる役割の「営業責任者にならせて欲しい」と手を上げたのです。それが32歳のときで、「童顔だったのに、1年で一気に年をとったね」と周りから言われるほど壮絶な苦労がありました。

──壮絶な苦労を、どのように乗り越えられたのでしょうか?

北海道から九州まで全国を飛び回り、「会社の未来のために、方針転換が必要だ」と一生懸命に説いて回りました。当時入社して6年の32歳の若造だったので、既存の手法で成績を残してきた社員たちから厳しい言葉が投げかけられることもありました。一方で現場を支える仲間たちからの賛同の声も多く出てきました。これまでのやり方を続ければ、いずれどこかで行政から指導が入ったり、消費者から見放されて会社が倒産するかも知れません。そうなれば仲間たちと一緒に仕事をすることができなくなる…そう考えたとき、みんなの顔が脳裏に浮かび「この会社が好きなんだ」ということを自覚しました。「変革することで、仲間たちを守り抜こう」と腹をくくりましたね。

この全国行脚によって、ほぼ全員と向き合い腹を割って話し合うことができ、新たな会社の方針を浸透させることができました。

「コンプライアンス」にまつわる事件が耳目を集めるより前に、そして2009年に消費者庁の創設に先んじて改革を成功させ、クリーンなイメージへと刷新。20年を経た今は、TV番組で取り上げていただいたり、日経媒体の新年特大号で有名女優と私との対談が掲載されたりしています。私自身が地方FM局で司会を努める番組が制作されるなど、メディアから注目を集めています。また、量販店との取引や行政・大学との連携なども進み、官公庁や医療、アカデミックな方面からも信頼される存在になりました。

未曾有のコロナ禍も経営決断と、現場力で乗り切る。

──「コロナ禍」の難局で、陣頭指揮をとられたと聞いています。

コロナ禍が社会を襲ったとき、地方在住の方が「都会の人間は来るな!」と発言するニュースが流れるなど、感情論が噴出していたことは記憶に新しいかと思います。私たちのプラザは都会にもあるのですが、主力は地方です。というのも、当社の製品は効果を感じて購入していただいたお客様からの口コミで広がっていくことが多いので、関係性が薄い都会よりも地域コミュニティが活発な地方の方が拡大しやすいのです。それがコロナ禍では裏目に出ました。結束力が高い地方では情報がすぐに拡散されます。当社の社員が都会ナンバーの車で地方に行ったときには、冗談抜きで“生卵を投げつけられるような雰囲気”がありました。フェイス・トゥ・フェイスでヘルスケア情報を発信し、地域で起こっていることやニーズを汲み取ることができなくなってしまったのです。

──どのように試練に立ち向かわれたのでしょうか?

とにかく打てる手はすべて即断し、実行していきました。全店舗休業もしましたし、マスクやアルコール、体温計などはすぐに購入。アクリル板も5万枚用意して配置に工夫を凝らしましたね。毎日が経営判断の連続で、一つクリアしたら次の課題が出てくるような状況でした。

ただ、そうした試練の中で全国で起こっている状況を吸い上げ、本社が的確に把握できる仕組みができあがりました。本社からの伝達は全部スマホに切り替えて情報を配信。店舗から固定電話やファックスを無くし、アナログな状態から一気にIT化を加速させて時代に即応する体制が整いました。現在、店舗によってばらつきはあるものの概ね着実に回復している状況ですね。

「人の役に立ちたい」という仲間が集う組織。

――若者に向けてメッセージをお願いします。

先日、桜美林大学の授業で健康講座を行いました。そこでイスラエルの指揮者、ダニエル・バレンボイムの「Knowledge is the Beginning(知識は始まりである)」という言葉を引用して、健康についてお伝えした内容があります。ヘルスケアには「ゆとりある精神」「適度な運動」「バランスのとれた食生活」が必要ですが、それを知らなければ健康を損なってしまうのです。そうした「健康における前提知識」を若いうちに持って欲しいですね。たとえば「ダイエットのために、朝ごはんを食べない」といったことを続けてしまうと今は問題がなくても、徐々に蓄積されて悪影響がでてくることにつながるります。生活スタイルには気を配ることが重要です。

──御社で働きたいと考えている方に、伝えたいことを教えてください。

健康総合企業の当社には多岐にわたる仕事がありますが、どの職種にも共通しているのが「人の役に立ちたい」というマインドです。プラザに来られるお客様に対して、ただ「ヘルストロン」を提供するということが目的ではありません。お客様のニーズに合わせ、役に立てることはないかという視点を持つことで、関係性を築くことができ、真のヘルスケアのサポートが可能になるのです。採用方針としては、書類の情報だけが重要ではなく、面接後に実際に店舗を見てもらったり、先輩たちと顔合わせをしたりする中で「ここで働きたい」と感じてくださった方を採用しています。そのため「入ってみたけど違うと感じ、1ヶ月で退社」といったミスマッチがありません。「利他の精神」をお持ちで、社会に貢献したいと考えている方にぴったりの会社だと思います。 

株式会社白寿生科学研究所

設立 1964年
資本金 1億円
売上高 非公開
従業員数 255名
事業内容 家庭用・医療用ヘルスケア機器及び健康食品などの開発ならびに製造販売
URL https://corp.hakuju.co.jp/
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