一歩先を見据えた会計数字を提供。お客様に寄り添い続ける。
――事業内容や強み、税理士として大切にされている想いなどを教えてください。
立ち上げ当初から意識していたのは、税理士として税金を正しく処理することは大前提であり、お客様である経営者に寄り添った提案や行動を大切にするということですね。ただ淡々と決算業務をこなすのではなく、将来を見据えた「予測値」を正確に割り出すなど、“未来会計”に重きを置いています。当法人としては「税理士はサービス業である」と捉え、当然のことをしているという認識ですが、その「当たり前」をお客様から評価いただいているようです。
私自身、税理士事務所に勤めていたときは会社員だったので、「経営者の苦悩や課題を完全に理解しているか?」と言われれば疑問符が付いていたと思います。考え方が変わったきっかけは経営者からの「当社のことを本気で考えているのか?」という指摘でした。そこでお客様から必要とされているのは“税に関する事務作業だけではなく、数字のプロとして経営に関するアドバイス”が求められていることに気づいたのです。
税理士として大切にしていることは「お客様との間に壁を作らないこと」ですね。接しやすい態度はもちろんのこと、難解な専門用語を使わないようにしています。また、より要望に応えるために、伴走型のコンサルティング事業も展開中です。お客様の財務を正確かつ客観的に把握した上で、課題を見つけて解決に導くことができる税理士とコンサルの組み合わせは最強だと思っています。
――社内の雰囲気について教えて下さい。
「明るく活気的ですね」とお客様から言われることが多いですね。元MIT教授のダニエル・キム氏が成功循環モデルとして提唱しているように、「関係性の質」を上げることが成果に繋がると考えているので、社員同士の結びつきに関して意識して力を注いでいます。具体的な方策としては社内で運動会をしたり、飲み会を多く開いたりして交流を促進しています。
また、当法人では各々が得意領域で力を発揮してもらうために“完全分業制”を取り入れているのですが、ミーティングの場を設けることで「部署間の関わり合いが希薄にならないようにする」といった施策を実施しています。あとは楽しく働ける職場にするために“怒らないこと”も重要ですね。ミスなどがあっても「個人の罪ではなく、会社のルールや仕組みが悪い」と分析して、改善を行います。
お客様との間に育まれた信頼関係が、ピンチをチャンスに変えた。
――逆境経験とそれを乗り越えた方法について教えて下さい。
基本的に「とりあえず、やってみる」という行動原理なので、成功もあれば失敗も数多くあります。割合的には10分の1くらいが長続きしているイメージですね。たとえば、チャットツールのChatWorkやクラウド型会計サービスのマネーフォワード、事務作業を自動化するRPAといったビジネスツールやソフトウェアをいち早く導入し、今では社内に定着しています。自分たちが使ってみて良いと思ったツールをお客様におススメしているので好評です。
最大のピンチと言われて思い出すのは、社員からの申請制にしていた残業代が未払い状態になってしまい、労働基準監督署から連絡が入ったことですね。税理士事務所はどうしても決算の時期などは労働時間が長くなりがちで、私たちも当時はピーク時の残業が月80時間近くになっており、残業時間を正確に把握できていなかったのです。正直、経営を揺るがすようなピンチでした。
そこでまず収益性を高めるため、お客様に値上げをお願いして回りましたね。さらに完全分業制を徹底。現在の月平均残業時間は20時間未満です。ピンチに直面したことで、今の体制に切り替えることができました。
──お客様との信頼関係はどのように構築されたのでしょうか?
お客様が「何を求めておられるのか?」を常に掴むようにしています。たとえば、日々の業務に忙殺されている中小企業の場合、決算に必要な書類の作成がギリギリになってしまい「支払いの3日前に納税額が判明して、税理士に相談する」ということは日常茶飯事です。私たちはそうしたリスクを事前に回避するため、定期的に情報を提供しています。また、北海道の中ではいち早く料金を定額設定にしたことも大きかったと思います。それが当たって既存のお客様からの紹介が増え、急成長につながりました。振り返ると「独自性の高いビジネスでシェアを拡大した後に、価格を見直す」というマーケティング戦略を、図らずも実行していた形ですね。
──旺盛なチャレンジ精神は、お客様へのサービスにもつながっていますね。
新しい経営理念に「みんなで成長を楽しもう!」というフレーズが入っているのですが、これは私たち自らが率先して常に変化をし、お客様の発展につなげるという意味を含んでいます。実際、当社が試行錯誤を繰り返すことで得たノウハウはすべてお客様に還元していますね。今後も進取の気性に富む社風を貫く方針です。
税理士という仕事の醍醐味を、もっと多くの若者に届けたい。
──ビジョンである「集合天才」という発想や概念は、どうやって生まれたのでしょうか?
「1人でやれることには限界がある」ということに思い至り、開業当初からのメンバーである4名がそれぞれの個性を活かせる仕組みづくりを考案しました。税理士の世界は“全業務を自分で完結する”という一匹狼的なタイプの方が多いのですが、当法人では“組織”として対応しようと考えたのです。私の場合はお客様とお話しをするのが好きなので、コミュニケーションの部分を担当しています。
――将来に向けて、どのような展開をイメージされているのか教えて下さい。
まずは「従業員100名」と「売上10億円」を目指します。前者については、2023年10月に税理士法人マッチポイントと統合することが決まっており、グループ全体での従業員数が50名から80名に一気に増えるので達成まで目前です。後者についても順調に推移しています。規模拡大の狙いは影響力を高めて、一石を投じることですね。北海道のビック5の牙城を崩し、私たちの「当たり前」を業界の常識へと浸透させていきたいという想いがあります。
イメージしている展開は、税理士が楽しく頑張っている姿を見てもらうことで、「素晴らしい仕事だ」と若い方や学生たちに思ってもらえるようにしたいのです。現状では私も含めて、税理士たちが自らの仕事を十分にPR出来ていないと感じています。当初は「自分たちがトップになれば、それを実現できる!」と思っていたのですが、当法人だけでは到底なしえません。そこで、業界全体で上を目指す必要があるという考え方に切り替わりました。
得意なことを見つけ出して強みにしよう。
――最後に、若者に向けてメッセージをお願いします。
「好きなこと、やりたいことを見つけて欲しい」ということですね。これは高校生の息子に向けての言葉でもあるのですが、自分が楽しめることを見つけ出し、それを磨き上げて欲しいと思います。日本を代表する戦略家・マーケターの森岡毅氏も、自分の子どもに向けて書いた著作の中で同じことをおっしゃっていたのが印象に残っていますね。
やりたいことを見つける方法のコツは、とにかくアンテナを張ってチャレンジすることです。その過程で辛いことや、ストレスがかかることもあるでしょう。しかし、体験しなければ「何が嫌いで、苦手なのか?」ということもわかりません。先入観による食わず嫌いをすることなく、一度挑戦することをおすすめします。
経験を通じて研ぎ澄まされた「好き・得意」「嫌い・苦手」を嗅ぎわける感覚や、得意なことを見つけ出して培ったスキルは自分だけの武器になります。私自身、大人になってから「お客様とコミュニケーションをとるのが自分の強みだ」ということを知り、この年齢になってもコツコツと磨き続けています。自分が得意なことでなおかつ社会に対して、どれだけの価値提供ができるのかを追及するためにも、まずはやりたいことや得意なことを見つけ出してください。そして、自分だけの強みにしてもらえたらと思いますね。