「居心地の良さ」を追求する、社名に込められた想いとは。
――SEOなどデジタルマーケティングを手掛けておられますが、事業の強みなどについて教えて下さい。
デジマ領域は結局のところ、プロ人材の腕に左右されます。有名な会社に頼んでもそれを担うエンジニアが優秀でなければ、望む効果は期待できません。当社の強みは、ずば抜けたノウハウや知見を有し、豊富な実績を持つエンジニアが在席しているところですね。たとえば、技術のトップであるCTOは2~3時間睡眠のショートスリーパー。彼にとってWebやエンジニア業務は、もはや趣味のようなものであり、起きている間はずっと楽しんで作業しているというスタンスです。常に貪欲に新しい知識を吸収し、仕事に没頭するタイプで、学んだことをPDCAに活用するといったプロ人材です。(もちろんそんな身体を酷使する働き方は一切推奨しませんし、寝て欲しいです。笑)私はエッジのきいたエンジニアとお客様の架け橋となるコミュニケーションの部分を担当しています。現在私以外は全員エンジニアで、合計5名の少数精鋭体制ですが、今後人数を増やしていく方針です。
──競合他社との違いはどこでしょうか?
「ブラックボックス化しない」ことですね。お客様に寄り添うことで、Webの知識やノウハウの向上を促しながら共に歩むスタンスです。たとえば、「30万円払いたい」というお客様であっても、Webに関する理解が伴っていない場合は、あえて5万円のベーシックプランを提案することもあります。施策やサービスの内容、料金の妥当性を的確に把握してもらった上で、導入プランを決定しています。
──「Cominka(古民家)」に込められた、「居心地の良さ」について詳しく知りたいです。
ミッションやビジョンはこれから策定していきますが、理想として“古民家”のような「居心地の良さ」にこだわっています。これは決して「ゆるいから良い」ということではなく、多種多様な人材たちが個性を生かしきれる風土を作り上げることが目的です。ゆくゆくは当社と関わるステークホルダー全員が「居心地の良さ」を手に入れることを目指しています。
この理想を掲げるきっかけとなったのは、Web業界全体を見渡したときに提供されているサービスや価格、企業の体制など至るところが「ブラックボックス化」されていると認識したからです。一人ひとりは頑張っている方たちばかりなのに、全体で見ると「悪しき土壌」になってしまっているので、それを変えたいと思ったのです。人も組織も良い方向に変わり、社会全体の幸福度を向上させていく「居心地の良さ」を追求していきます。
古き良き時代の日本には、みんなが周りを支え合うような空気がありました。私たちは最新のテクノロジーを駆使しながら、「人のあたたかみ」を大切にする社会への回帰をあと押ししたいのです。
失敗から得た教訓で、現在の徹底した「顧客主義」に。
――失敗経験とそこから学んだことについて教えて下さい。
最初に入社した会社で、自分たちの売上を追いかけるばかり、大きな失敗をしてしまったことがあります。関西でトップの成績を残し、2年目で部下を持つ立場で売上至上主義に染まってしまっていたのです。価値基準は「自分とチームの売上必達」のみでした。そのミスが3年目くらいにわかったときも、腑に落ちてはいませんでした。理解できたのは退職後で、お客様ファーストでなく売上にとらわれ「お客様だけでなく、仕事で関わる全員の期待を裏切ってしまった」という事の重大さにハッと気づき、後悔の念が襲ってきたことを覚えています。妻からも一言、「あのときはおかしかったよ」と言われましたね。それでも現在、こんな自分を可愛がってくれる当時の先輩や、同僚・後輩には感謝しても仕切れないです。これは自分の大きな挫折体験で、「人とか絆」を絶対大事にしたいって心から思ったのもこのタイミングですし、その失敗から、考え方やスタンスが「顧客主義」へ切り替わりました。
──今だから言える「逆境体験」はありますか?
私が事業運営を担当し、相方であるCTOは生粋のエンジニアなので「経営と技術のバランスがとれた、シナジー効果が高い組織」というのが当社の武器です。ただ、これを胸を張って言えるようになったのは実は最近のことです(笑)。それまでは、「画期的なサービスやプロダクトを考えたので、リリースしたい」というCTOと、「お客様から求められているものを提供するのがビジネスだ」という私との間で、火花が散ることも少なくありませんでした。これはどちらが悪いとかではなく、双方が「正義」です。当初はお互いに牽制しあった期間もあったのですが、どんなに細かいことであっても腹を割って話し合う努力を重ねましたね。今はマーケティング目線とエンジニアの視点を持ち寄り、建設的な議論になっています。
──「顧客主義」を標榜されていますが、業界全体を見渡して課題に感じることはどんなところでしょうか?
当社は「顧客主義」に基づいて設立以来王道を歩み、ノウハウや知見を磨き続けています。Webマーケティングは難しく専門的な知識が必要なため、お客様は業者へ任せるという判断になることがほとんどです。その結果、分からないと思って必要以上の金額を請求したり、ずさんなコミュニケーションをとったりする悪徳業者も存在し、問題が起こるケースもあります。クライアントと適切なコミュニケーションを取りながら一緒に前に進むべきだと、それが一番大事だと考えています。
時代に即応したテクノロジーで、中小企業に対して寄り添うビジネスを。
――今後のビジョンについて教えて下さい。
決まりきったビジネスモデルは無く、あえて「わからない」をビジョンに掲げています。というのも、ChatGPTを始めとする生成AIが世の中を席巻するなど、社会全体が目まぐるしく変化しています。事業ピボットが起こるのが前提の現代において、この業界でサービスに特化したドリブン戦略に振り切るべきではないと考えているからです。また、私自身ビジョンについてとても重要視しており、熱くなれるようなビジョンができるまでは無理に置きたくないと考えています。
ただ、従業員を増やすことは目標で50人、100人と拡大していきたいですね。今のトレンドは少数精鋭の組織で、余剰業務は外部に委託するのが流行っていますがそこに魅力を感じません。「仲間を増やし、楽しい会社にしたい」という理由は、サークルを主催したり野球でチームプレーを楽しんだり、私の地元の大阪府堺市で盛り上がる「ふとん太鼓」というお祭りの青年団の団長を務めた中で育まれたメンタリティであり、私の信念ですね。
──先日、新プロダクトをリリースされたと伺いました。
現在DXが叫ばれていますが、進んでいるのはほとんど大手ばかりで日本の根幹を支える中小企業は置いてけぼりです。私たちは中小企業にフォーカスを当てて「わかりやすい」「速い」「コストを抑制」したサービスを提供し、世の中に貢献したいと考えています。先日はその第一歩となる、ChatGPTを使った「yoriaiチャットボット」をリリースしました。生成AIなどの最新のテクノロジーを身近なものとして、気軽に使ってもらいたいと思います。あと、Webマーケティングの情報サイトとして「IRORI」というメディアも展開中です。
人間力を磨き、大切な人を守り抜く「絆」に重きを置こう。
――最後に、若者に向けてメッセージをお願いします。
以前、部下に良く言っていたのは「一番汎用性が高いスキルは人間力」ということです。生まれ持った資質も存在しますが、経験が人を成長させて「人間力」が磨かれます。そのためには「自分がどれだけ挑戦できるか?」「周りがチャレンジしている環境か?」が重要です。いきなり成功体験を得ることはできません。失敗を経て成功の道が開けるのです。だから失敗を恐れずに、立ち向かっていって欲しいですね。失敗も成功も経験することで人間力が磨かれ、育まれます。
昨今、こういう言い方をすると「意識高い系」と揶揄される風潮がありますが、嫌な言葉ですね…。チャレンジするのは普通のことですし、それを「当たり前」という感性の方と一緒に働きたいと思います。どんなにAIが発達しても、「人間力」は汎用性が高いポータブルスキルとして輝き続けるでしょう。
また、妻や恋人、友達や家族といった一番守るべき存在のことも忘れてはいけないと思います。どんなに有名な経営者でも「家族を放っておいて、事業に専念した」と言われたところで尊敬できません。先日も社員に「ちょっと遅い時間からだけど、会議しても大丈夫?」と言ったところ、「彼女の誕生日ですけどOKです」という返答があったので「今すぐ帰れ!」と帰宅させました(笑)。公私共に大切にするというバランス感覚は重要であり、「何かを犠牲にする」という考え方は違うという価値観です。
振り返ると、経営者だった父親は「絆」を重んじるスタイルでビジネスを展開していました。「居心地の良さ」や「絆」を成功の方程式だと考える思考は、少年の頃から培われた感覚だと思います。大切な人を優先的に考える思考回路を持ち、仕事もプライベートも充実させて欲しいですね。