自社ブランドを持たない化粧品メーカー
—— サティス製薬では、どのような事業を展開されているのでしょうか?
主に、スキンケア製品の開発・製造をおこなっています。開発する化粧品はすべてOEM(Original Equipment Manufacturer、相手先ブランド製造)で、サティス製薬自体はブランドを保有していません。
私たちは、どんな人がどのような肌悩みを持っているのかを考え、開発して製造します。その先の販売は、当社の顧客であるパートナー企業が担ってくれているんです。
——なぜ、自社で販売を行わない事業形態を?
ユーザーであるお客様に、自社の化粧品を確実に届けるためです。化粧品は一人ひとり合うもの・合わないものがあって、世の中にはそのニーズに応えるように多くの化粧品が出回っています。その中から何を買うかは、お客様自身がお店や通販、広告、あるいはインフルエンサーの投稿を見て判断するわけです。
そんな複雑化した市場の中で、自社の化粧品を届けることは、困難としか言えません。じゃあどうやって手に取ってもらうのかと考えると、その分野に詳しい人に頼るしかないんですよね。それぞれのターゲットや販路などに熟知している販売会社とパートナーシップを結んで、お客様に届けてもらっています。
——そうした売り方以外に、他社との差別化点はありますか?
確かに弊社は独自の販売経路や技術を持ってはいますが、それだけで他社との違いが生まれるとは考えていません。弊社と他社に違いがあるとするなら、それは「お客様を綺麗にする」ことに、日本一真剣に取り組んでいることだと思います。
少し化粧品業界のことを話すと、この業界では商品を販売する際、商品そのものより、広告にお金をかけるのが当たり前なんです。商品の価格のうち、原価はたった5%なのに、広告費には30%を使用しています。
確かにビジネスは大事ですが、私たちは化粧品を使って人を綺麗にすることを第一に考えています。だから他社よりも、お客様と商品に向き合い、必要な技術を開発する。他社と違うのは、そういうスタンスだといえますね。
利他が循環する会社
—— 社風について教えて下さい。
弊社では、社長も社員も「利他」の考え方を大事にして、仕事をしています。というのも、利他の心がなければ、仕事に必要なチームビルディングができないんですね。チームビルディングができない事業部が成果を上げた前例を、自分は聞いたことがありません。
なので、ギブアンドテイクの精神を持って、相手に「ギブ」できる人を大事にしています。
——社員全体を見て、何か特徴などはありますか?
本当にいろんな人がいる、個性豊かな職場です。例えると、淡水魚と海水魚が混ざっているくらい、様々な特徴やキャリアを持った人が集まっています。
今はグループ会社を含めると400名ほどが在籍しているのですが、最初の100名くらいは弊社がまだベンチャーと呼ばれる規模だった頃に採用した人たちです。その100名は特に起業家マインドにあふれた人が多いですね。一方で後から入ってきた社員には、学歴の高い人が多い傾向にあります。ただ一つ、人に良いものを届けたいという心は、みんな同じですね。
——そのような多様な人材がいることの強みは?
様々な人のニーズ、価値観に寄り添いやすくなることですね。今の社会は個人が重要視されるようになってきた一方で、自分らしさを失うことにコンプレックスを抱えている人が多い。だからこそ、多様性に対応することがもっとも大事なんです。
それに、似たり寄ったりの社員ばかりだと、対応できる価値観に偏りが出てきます。今みたいに多様性のある職場だからこそ、お客様の求める多様性に対応できています。
ゴールに向けて、動き続ける。
—— 今を生きている若者たちに向けて、伝えたいことは?
最初に、自分にとっての成功は何か、定義を決めることが大事です。ウサギとカメのお話がわかりやすいんですけど、この二人は成功の定義が違いました。ウサギはカメに勝つことが目標だったのに対して、カメは最初からゴールすることだけを考えていたんです。
最初から、ゴールつまり成功の定義を決めていれば、とるべきスタンスや必要な情報が見えてくる。そうしたら、チャンスを掴みやすくなるんですよ。チャンスに備えて必要なもの、必要な力をつけて、いざというときにチャンスを掴み取ることが一番大事。だから来るべき時に向けて、自分の成功に必要な行動を毎日とることが大切だと考えています。
——そうした考えを持たれたきっかけはありますか?
どちらかと言うと、歴史が証明しているということが大きいですね。歴史を研究してきた人は、過去に成功した人の行動を見て、そこにある法則を見出しています。それらが、孫子の兵法やランチェスター戦略といった様々な形にまとめられている。そうした歴史から得られることは多いです。
そういう成功法則に共通しているのが、「時間を使うこと」。教育でも家柄でもなく、成功するために必要なことに対して時間をつぎ込むことが大事なんです。時代錯誤かもしれませんが、人よりも集中して時間を使い、行動することは、とても大切だと考えています。
「人を綺麗にする」ことにもっと真剣な業界に―。
—— 今後の展望について教えてください。
今後は世界、特にアジアへの進出を目指しています。日本の化粧品会社の代表として、人を綺麗にすることを追求していくつもりです。
ただ、規模を広げることで、本質が薄れてしまうのであれば、やらない方がいい。あくまで、一人ひとりに寄り添った綺麗を、一つひとつ丁寧に実現していくのが展望です。
わかりやすく言えば、化粧品業界でナンバーワンになりたいですね。2030年をめどに業界トップになって、業界の構造そのものを変えていきたいです。具体的には、先ほど話した業界のコスト構造を変えて、高品質な化粧品がきちんとお客様の手にわたるように、必要な部分にコストの厚みを持たせることができるようにと、変革させていきたい。
——では、現状の課題はなんでしょうか。
課題は山積みですね。数えるのも億劫になるくらい、多分400個くらいの課題をクリアしていく必要があります。
その中でも一番大変なものを上げるとすれば、自分含む経営陣の力量を上げていくことでしょうか。経営チームをリビルドしながら、経営力をさらに上げていきたいと考えています。