お手伝いと旅を掛け合わせた「おてつたび」の魅力
—— 御社の事業内容について教えていただけますでしょうか。
「おてつたび」はお手伝いと旅を掛け合わせた造語です。ハイシーズンの旅館、収穫時の農家や短期的・季節的な人手不足で困っている事業者などと知らない地域に興味がある人たちが出会えるようなウェブ上のマッチングプラットフォームを運営しております。
特徴としてはお手伝いをすると、最低賃金以上の報酬が得られますので、いろんな地域に行く際の旅費を削減することができます。お手伝いという共同作業を通じて、地元の人から地域の魅力を教えてもらったり、普段だったら行かないような地域にも行くきっかけを作ったり、そんな世界を目指しています。
―― 競合するような会社との差別化はどんなところですか?
完全に競合するところはありませんが、例えばお手伝いしながらその地域で少し滞在するという観点でいうとリゾートバイトさんですね。リゾートバイトさんもすごい素晴らしいソリューションなので、そういった選択肢もあっていいと思ってます。
私たちはどちらかというと、お金ももちろん大事だと思うんですけれども、お金だけではなく、そこの地域のことを知りたい、地域のことを知ってもらいたい、そういったところを根底にマッチングされるところが1つの特徴としてあります。
―― 行く側が何も負担しなくてもいいことは魅力的ですが、費用面の負担はどうされているのでしょうか?
交通費は自己負担となっておりますが、参加者への報酬は地域の事業者さんから支払っていただいています。
そもそも人がいないので、産業を縮小せざるを得なかったり、予約が入ったけど断らなければいけなかったり、中には食事の提供をやめてしまった旅館もあります。そういった人手不足と地域に行きたい人たちをマッチングしています。
「おてつたび」は地域の魅力や地域の人々の魅力を見える化することによって、人がくる仕組み作りに取り組んでいます。
―― そのような魅力発信はどのようにされてるのでしょうか?
私たちのウェブ上のプラットフォームに、地域の事業者さんがご自身で募集ページを作成していただいております。募集ページには、受け入れ先の方々のプロフィールや、地域のおすすめスポットを記入できる項目があり、魅力の発信に繋げています。
―― 地域の受け入れ先の開拓はどのようにされてるのでしょうか?
最近は、おてつたびを利用した事業者からの紹介や、メディア等を見ていただいた方からの問い合わせが多くなっております。自治体、地域のパートナーさんからの問い合わせも増えてきております。
時と場合によっては電話を掛けてアプローチもしますが、現状はあまりそこに力を入れ切れてないですね。もちろん私達からのアプローチも必要だと思っています。
自分のやりたいことを自ら考えて作り上げることに挑戦
—— 社内の雰囲気について教えていただけますか?
社員数は10名で、「おてつたび」のビジョンやミッションに共感しているメンバーが多いと思います。会社の理念に共感できるメンバーであれば性別やIT・スタートアップの経験は不要と考えているため、さまざまなバックボーンをもつ社員が働いています。
社員の8割以上が地方出身というのも特徴です。
―― 例えば旅行が好きだったり、前向きな考え方の人が多かったり、共通しているところがあったりしますか?
受身ではなくて、自分にできることを自ら考えて、仮説を立てながら実行していくメンバーが多いですね。まだまだこれから作り上げなくてはいけないものがたくさんあるので、何でも自分の裁量でやりやすいという意味では楽しめるのかなと思います。逆にマニュアルがちゃんとあった方が自分はパフォーマンスを発揮できるっていう方だと、しんどい環境かもしれません。
―― 異業種から転職してきて活躍されている方も多いのでしょうか?
活躍する上で、業種は関係ないと思っています。実際、全然違う業種から転職してきてるメンバーの方が多くいます。例えば、教育の商材を売ってたメンバー、大手美容予約サイトの営業をしていたメンバー、大手EC会社にいたメンバーがいます。逆にいうと、旅行関係や人材関係で働いていたメンバーは少ないですね。
「どこ、そこ?」といわれる地域は感動があふれている
—— 次に永岡さんご自身のことをお伺いできますか?
学生時代はどちらかというと、それほど積極的に外に出て行くタイプではありませんでした。ボランティア活動やサークル活動には参加していましたが、東京に来てみて、東京の学生の子たちの比じゃなかったなと痛感しました。社会人になってから、人との出会いが自分の価値観や選択肢を広げていくと実感しています。
自分が学生だった時の価値観や選択肢はすごく狭かったなと感じることが多いので、もっといろんな生き方や考え方に触れることで、自分の好きなことを知るヒントになるんじゃないのかなと思っています。
「おてつたび」は自分が大学生のときに欲しかったサービスなので、大学生の時におてつたびがあって4年間使い倒せていたら、また違った人生の選択肢が増えたかもしれないと感じるところですね。
―― 学生時代は教育学部にいらっしゃったそうですね。大学在学中に経営者になりたいと思っていたのでしょうか?
いいえ、経営者になりたいとは一切思っていませんでした。私自身は両親や親戚に経営者がいたわけでもなく、大学も地方国公立だったので周りに学生起業とかも少なかったです。そういう意味で起業は選択肢の中にも入っていませんでした。どちらかというと、小学校の教員になりたい気持ちの方が強かったです。
なので、社会人になってからもそれは変わらず、大学卒業後は修行のために3年間は社会人経験をしてから教員になろうと思っていました。その中で民間企業の楽しさを教えてもらい、そのまま企業で頑張りたいという思いが芽生えてきました。2社目の会社では仕事で全国いろんな地域を訪れる中で、私の出身地のようなところがたくさんありました。一見「どこ、そこ?」って言われがちなんですけれども、行ってみると何て素晴らしいんだろうと思うような感動があふれている地域がたくさんあるんです。
一方で、自分の出身地のような地域にスポットライトも当たらずになくなってしまうことへのもどかしさ。そういった地域の方が面白いけど、仕組みがないだけなんじゃないかという課題の発見がありました。
そこで、自分の出身地のような地域の魅力を伝えられるのか実際に現地で体感したいと思いました。東京の家も解約して、さまざまな地域を巡りながらどんな構造になっているのか、何故そういう事象が起きてしまっているのか、自分の目で見て肌で感じて、耳で聴きながらサービスを作ってきました。そして、1年後に「おてつたび」を創業しています。
地域を支え合っていく未来を作りたい
—— 今後5年10年後、長期的なところで目指したい世界感や目標はありますか?
私たちが目指しているのは「どこ、そこ?」って言われてしまう地域にも、当たり前のように人が訪れて、その地域のことを好きになって帰っていくような未来を作りたいと思っています。「どこ、そこ?」って言われちゃう地域は、行く目的がないだけなんですよね。
行っても何をして楽しんでいいか分からないですし、魅力が見えにくい。友達がいたら行くけれども友達がいなかったら選択肢にすら上がらないのではないでしょうか。私たちがお手伝いという新しい目的を作ることによって「どこ、そこ?」と言われるような地域にも当たり前に訪れてもらい、皆さんの日常の選択肢の1つになっていくことが大事だなと思っています。
例えば夏休みは「旅行に行く?」「おてつたびに行く?」じゃないですけれども、それぐらい当たり前の世界を作っていきたい。人口減少の歯止めがきかない中でどうやったら地域が存続していくのかを考えたときに、そこに住んでないけれども、まずは「おてつたび」を通じて時々お手伝いに来てもらう。さらにその先に、地域のことを好きになってくれて地域の物を買い続けてくれたり、ひとりが何役も担いながら、支え合っていく未来を作りたいなと思っています。あくまで「おてつたび」というソリューションは第一ステップというような形ですね。
―― 最後に、若者に向けてメッセージをお願いします。
「とりあえずやってみよう」ですね。とりあえずやってみて、いろいろ自分で選択して、価値観を広げていくところなのかなと思ってます。
いろいろな人や地域に出会って価値観や生き方の選択肢を広げてほしいです。もちろん家にいていろいろ考えて頭を使うことも大事だと思いますが、外に出ていろいろアクション経験を積んでいくことは何ものにも代えがたいはずです。人生には無駄なことはないから、気になったら自分の直感を信じて一歩踏み出してほしいですね。