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【株式会社エルム 宮原 隆和】世界で唯一「オンリーワン」のものづくりで、グローバル企業に発展。

2022/11/07

Profile

宮原 隆和

株式会社エルム 代表取締役社長

1974年大阪工業電子工学科を卒業し、大阪で企業人として6年間を過ごした。
1980年エルムを設立し代表取締役に就任。2009年株式会社イーエムエフを設立し代表取締役に就任。2011年カラーキネティクス・ジャパンを買収し翌年代表取締役に就任。
ものづくり、開発に特化した事業を展開。コンテナ型栽培システム、LED照明、追尾型太陽光発電システム、光ディスク修復装置、人工衛星自動追尾装置(地上局)などの開発事業を手掛けている。国内外に販売パートナーを持つグローバル企業に成長した。
「無いことがチャンス」を合言葉に、「オンリーワン」のものづくりでグローバル企業に発展したお話を伺った。

オンリーワンのものづくりは世界がマーケット

—— 御社の事業内容について教えて下さい。様々な事業を行っていますが、主軸はどれになりますか?

全部主軸なんですが、複数の柱を持ち社会の変化に強い会社作りを目指しています。具体的にはコンテナ型植物栽培システム、LED照明、追尾型太陽光発電システム、人工衛星自動追尾装置(地上局)、光ディスク修復装置などの開発事業を手掛けています。
元々は「光ディスク修復装置」(CDやDVDの発熱を防止しながら深い傷でも短時間で修復できる装置。光ディスクを繰り返し利用する図書館やレンタルビデオショップで利用)を開発し世界マーケット8割を超える拡大をしましたが、CDとかDVDの需要が減っているので、今はそれに代わる事業をいくつも立ち上げている最中です。 

——コンテナ型植物栽培システムというのは、どのようなお客様が多いのでしょうか?

40フィートの冷凍コンテナを使った野菜や苗の栽培システムで、都市部から寒冷地、熱帯地までどんな場所でも高品質な作物を安定的に計画栽培できます。海外でも事業展開中で、韓国で1番大きな野菜の流通業者と合弁会社を作り韓国で事業展開しています。アメリカにもELM USAがあり、薬用植物の苗生産などが進んでいます。
人工衛星の分野では、大学や企業と取引しています。照明技術に関しては、私どもが直接売るのではなく系列会社を通じて販売しています。系列会社からその先はというと、例えば地下鉄銀座駅の照明、ハウステンボスの光の運河など全国各地の付加価値照明で使われています。
ポリシーは、ものづくりで新しいものを生み出したら、マーケットのトップを狙っていくことです。
マーケットのトップに認められてこそオンリーワンであり、一気に市場を獲得できるからです。

——御社はオンリーワンを目指されているということですが、他社との違いや強みはどういったところにありますか?

製品によっていろいろですが、「光ディスク修復装置」を我々が世に出した当時は、修復機というのは装置というより道具のレベルだったんですよ。人間がいろいろ操作しなければ動かない。うちの会社では、50枚ポンとディスクを置くだけで全部自動で機械が搬送して綺麗に修理して自動的に出てくるものを作った。今までの機械をベースに考えてたら絶対できないことです。
人手がほとんどいらずに全自動でできる修復機は他にない。世界で唯一のものです。アメリカでもヨーロッパでも似たようなものを作っている会社が、うちの機械を見たら競争しても勝てそうにないから取引してほしいということになるわけですよね。
ナンバーワンを目指す場合は、今ある機械をもとにした発想からの作り方をしているんです。弊社ではたくさんのディスクを修復するためには、こういう機械じゃないといけないという道筋で全体を構想して作り上げていくんです。オンリーワンを目指すからこそできることです。
そして、20年以上前に開発した機械ですが、既にインターネット接続機能を持っていて、世界中どこに設置されても、日本からプログラムの改善・更新や利用状況を見ることができる機能も持っていたんですよ。

挑戦する企業に賛同した、ものづくりが好きな人の集まり

—— 社内の雰囲気について教えてください。

この会社を作ったそもそもの理由をお話すると、私は技術者として大阪でいろいろなことを勉強してきました。都会にずっといたいとは思わなくて、田舎に帰って過ごしたいなと思ってたんです。いざ地元に帰ってきて周りを見回してみると、身につけた技術を活かせる会社はありませんでした。

確かに鹿児島には立派な会社があります。例えば、京セラなんかもたくさん工場がありますが、いわれた物を作るだけ。そういう意味ではつまらないなと思ったので、自分で会社を起こしたんです。
鹿児島は人材移出県で、若者たちがみんな出て行ってしまう。そこで、都市部にある会社に負けない一流の仕事をできる会社にしたい、人材移出県である鹿児島県出身技術者の受け皿になろうという思いで創業しました。

鹿児島にある会社のほとんどが、鹿児島・・・とか、とか、場所とやりたいことを表す社名が多いんです。だから、会社名をエレクトロニクス(ELectronics)からELを、測定(Measurement)・メカニズム(Mechanism)・機械(Machinery)・夢(Mu)からMを使い、地域も業種も限定せず呼びやすいエルム(ELM)にしました。
弊社は何でもできるような会社なので縛りがなく、農業から宇宙まで手掛けています。ほとんどが、弊社の理念に賛同したUターンした人たちで会社は動いてますから。ものづくりが好きな人たちが集まっています。

——Uターン者が多いということは、30代の落ち着いた方が多いのでしょうか?

悪い言い方をすると、口下手な連中が多いですね。30代もそれほど多くないので、もっと年齢を重ねた社員が多くいます。創業42年の会社ですからね。若手をとりたいんだけどとれなくて、エンジニアが減っています。ソフト系のエンジニアはまだいるんだけど、電子回路などのハードウェアやメカニズム系の技術者がなかなか見つからなくて困ってます。その人材不足を解消するためにうちの会社は、外国人のエンジニアも採用しています。
現在韓国人が1人、フィリピン人が一人働いていますが、今後は更に積極的に採用を進めたいと思っています。

後継者へのバトンタッチが最大の仕事

—— 会社の将来の展望について教えて下さい。

正直、私の時代はもう終わりなんです。とっくに引退しなければならない年齢なんですよ。私の思いを引き継いで会社を伸ばしてくれる社員、後継者にバトンタッチすることが私の最大の仕事です。後継者になるような役員もいますので、今バトンタッチへの体制作りを一生懸命やっています。

——後任の方にバトンタッチする上での課題はどんなことがありますか?

今いくつか事業の柱を立てつつあるんですけども、その柱が立てば私はもう引退できるんですよ。会社が未来にわたって成長できるだけの柱が立てば、安心して引退できる。その柱を一生懸命立てているところです。
新しい事業として、農業分野の柱も1本立てようとしてますし、宇宙関連もあるし、照明関連もあります。照明関連の販路として買収、設立した2社は急成長していますので、他の事業、特に海外展開が軌道に乗れば私の役割は果たせることに成ります。

限界のボーダーを引かず、オンリーワンを目指して

—— 最後に、若者に向けてメッセージをお願いします。

今から起業するような若者、あるいは大学生の皆さんに、私は「ナンバーワンではなくて、オンリーワンを狙っていった方がいいよ」という話をします。学生の皆さんだと今からどういうことをやっていこうか模索中ですよね。オンリーワンを目指す理由としては、ナンバーワンだと競い合ってナンバーワンなんです。オンリーワンは競う必要がない。1つしかないから、そういう意味ではずっと楽なんです。
あとは、自分で自分にボーダーを作らないこと。多くの人が自分で勝手に能力の限界を決めて、自分にはできないと思って線を引いちゃうんですよね。だから会社に限界という線をひかないために、エルムは地域も業種も表さない社名にしています。

世の中の多くの人は、自分ができないことを正当化するために、自分の能力の多くをできない理由捜しに使っています。もったいないですよね。自分の能力をポジティブに使った方が絶対
に得するじゃないですか。私がいつも若者にいうことは「できない理由を一生懸命考えても意味がないだろう」と。

それから、世の中にないことを、できないことの理由づけに使うことが多い。そんな技術は無い、そんな経験は無い、そんな部品は無い・・・・・・・全てがしない&できない事を正当化するために使われます。 しかしエルムは、逆にないからやるんです。ないことがチャンスなんです。ないから諦めてできない理由にするんじゃなくて、ないからこそやる理由になる。視点を変えるだけで、見えるものが全然違ってきます。

——できない理由を考えずに、できる理由を探した方がチャンスにつながるのでしょうか?

はい、正にその通りだと思います。世の中に無い新しいニーズに出会ったときに、それを具現化するには大多数の事例で多くの困難が伴います。それにどう対応するか・・・できない理由を探して諦めるか、妥協して中途半端な結果を残すか、あるいは知恵を出して実現するかです。同じ能力や資源を使っても、結果には大きな違いが出て来ますよね。
今までの経験から、できない理由を考えるからできないということが分かってきました。できない理由を正当化するために頭を作ってることが大きいなと感じますね。実現する方向へどう頭を使っていくかが大事ですよね。

株式会社エルム

設立 1980年12月
資本金 4,975万円(2021年8月末現在)
売上高 118,500万円(2021年8月末現在)
従業員数 50名(2021年8月末現在)
事業内容 電子機械器具設計開発
URL https://www.elm.co.jp/ https://www.colorkinetics.co.jp/ https://architainment.co.jp/
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