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【株式会社横引シャッター 市川 慎次郎】できることを、できるまで足掻き続ける。借金9億円から積み重ねた、「行動」の美学

2022/09/30

Profile

市川 慎次郎

株式会社横引シャッター 代表取締役社長

先代の社長である父の跡を継ぎ、36歳で横引シャッターの社長に就任。先代の遺した会社をつぶすわけにはいかないと事業を継承するも、身内や一部の古参社員が計画倒産を画策している有様だった。現在は創業37年を迎えようとする横引シャッターの社長職を努めながら、取材や講演活動も積極的に行う。
上下に動く一般的なシャッター以外の、特殊シャッターを中心に製造。生産数・品質共に低かった特殊シャッターの生産が停止になったのをきっかけに、「上吊り式シャッター」を開発し、シェアを拡大することに成功した。曲面に対応できる、精度の高いシャッターの製造を請け負い、工場やショッピングモール、発電所を中心に設置している。
マイナスからの出発を余儀なくされた市川社長が、いかにして会社を立て直したか、どんなことを大切にしてきたのか。そして、市川社長が若者に贈るメッセージとは。詳しくお話を伺った。

9億円の借金と、計画倒産。マイナスからの出発

—— 市川社長は、先代であるお父様から事業を承継されたと伺いました。経緯を教えてください。

はい、父から事業を受け継いで、2代目社長に就任しました。聞こえは良いのですが、私が大学を出て入社した頃には、会社には9億円の借金がありまして。何とか6年間で7億円の返済を終えたと思ったら、今度は先代社長が急逝してしまいました。

——それは、大変でしたね…。社長になってから、他にもトラブルがあったのでしょうか?

会社が大混乱していたのはもちろんなんですけど、身内が暴れたのも大変でしたね。身内と一部の古参社員が、計画倒産しようと言い出して。でも私は会社を残したかったので、そこで意見が食い違いました。結局、僕は一度会社を追い出されたんです。後々、戻ってくることになりましたけどね。

シャッターの常識を覆した。横引シャッターの技術と実績

—— 横引シャッターでは、どんな製品を販売されていますか?

主に特殊シャッターの製造をしています。特殊シャッターというのは、ガラガラ〜っと上げ下げする以外のシャッターで、横に開け 閉めができたり、天井や床が開閉できたりするシャッターのことです。

——特殊シャッターを開発されたのは、先代社長のお父様だと伺いました。なぜ開発に至ったのでしょうか?

昔の特殊シャッターは、とにかく品質が悪かったんです。下にタイヤが付いているだけなので、、しばらくするとゴミが詰まって滑らかに動かなくなる。最後には、こんな品質の悪いシャッターを出せないと、多くのメーカーはみんな生産をやめてしまいました。

そこで創業者の先代が、質が高くて滑らかに動く特殊シャッターを作ったんです。上にタイヤを付けて吊り下げる方式にして、カーテンみたいにスムーズに動かせるようにしました。すき間もほとんどなくて、0コンマ5ミリから1ミリくらいの誤差しかありません。

——特殊シャッターの販売先は?

横引シャッターは、工場やショッピングモール、原子力発電所や火力発電所に付いています。原発だと、日本の原発の横引シャッターはほとんどが弊社の製品だと思います。あと空港とか、新幹線が停まるような大きな駅にも設置することがあります。

横引シャッターは普通のシャッターと違って、曲面にも設置できるんですね。だから上下シャッターが付けられないところに、横引シャッターを取り付けます。開け閉めにもあまり力がいらないですし、開け閉めの頻度が多いところに設置することもありますね。

「止まったら死ぬぞ」あきらめずに足掻いた日々

—— 9億円もの借金を返すのは、想像を絶する苦労があったと思います。詳しく伺えますか?

実は、借金返済はあんまり大変ではなかったです(笑) 社長の息子が親の会社に入社したのだ から、もう返済するしか道を選べません。返していくしかないんだから、淡々と返していく。やるべきことを一つ一つやっていたら結果が出てきたし、20歳ちょっとの自分の行動がどんどん結果に現れていく。それが楽しかったです。

もちろん大変なこともありました。滞納していた税金の相談をするために労働局にいったら、3時間くらい軟禁みたいになって(笑) 毎月300万ずつ返せと言われましたが、うちの状況では30万しか返済できない。じゃあ差し押さえだ、いやそれは困る…といった具合に、ずっと同じ問答をしていました。

最後には「お前の言う通りの金額でいいけど、一回でも遅れたら差し押さえするぞ」と、机をバン!と叩かれながら言われて。もうほとんど犯罪者みたいな扱いでした。でも向こうからしたら、自分にはそれくらい信用がないんだって気づいたんです。そこから、一つずつ信用を積み重ねていくことを覚えました。

最終的には役所の人ともだんだん仲良くなって、「何かあったら相談に乗るよ」って言われるくらいになって(笑) 小さな行動でも、一つ一つ積み上げて行くのが本当に大事なんですね。

——積み上げる、という教訓を得られたんですね。他にも、ご経験から得られた教訓などがあれば教えて頂きたいです。

本税が返済し終わると、延滞金の支払いが待っています。そんな時に労働局から電話が来て、「延滞金を直近3年分だけ払うなら、あとは免除する」と言われたんですよ。

実は当時、東京オリンピックが決まって、金融庁からお達しが出たそうです。とにかく税金を滞納している企業を減らせ、払えないなら差し押さえて、払えるなら減免して払わせろ、といった具合に。うちの返済が止まっていたのは1年半で、その前の分はすでに支払い済みだったので、払えると判断されたようでした。

頑張っていたら、本当に奇跡は起こるんです。他にも社長になってから今まで、3〜4回くらい小さな奇跡がありました。なんでも積み上げていくと、小さな奇跡が起こります。起こらない時は、まだそこまで頑張っていない、ということだと思っています。

好きな仲間と楽しく働いて、金儲けになる

—— 社風について教えてください。

社員は家族、を地で行く感じです。社員同士や、部署同士も仲がいいですし、仲良くしろーとも言ってます(笑)。せっかく働くのなら好きな仲間と働いて金儲けしたいですし、好きな仲間じゃなければ、社長として全力で守れません。だから私は、今一緒に働いてくれている社員が大好きですし、これから入ってくる人を好きになりたいと思っています。

社内でも福利厚生の一環として忘年会・新年会・暑気払いをやるんですけど、コロナが来てから止まってしまって。社員が家族と楽しめることをしようということで、コロナ禍でもできる福利厚生として焼肉セットやクリスマスケーキを贈りました。あとは一人ずつ、オーダースーツも作りましたね。普段、スーツを着る機会が少ない部署は、葬式やパーティーの時に困らないようにということで。

 

——家族のような会社、素晴らしいですね。福利厚生の内容は、市川社長が考えられているのでしょうか?

企画は私ですが、社員みんなと話し合って決め ます。まだ大きなイベントごとが出来る

世の中ではないので、これからもみんなと相談して決めていきます。みんなで話し合う場も多く作るようにしています。みんな同じフロアで働いてますし、社長室もありません。私、一人だと寂しくて死んじゃうから(笑)。

 

私の考えですが、会社にとっては社長も経営のためのコマの一つだと思っています。将棋みたいに、どのコマを動かしたらいいか?と考えるんです。社長の役割なら社長が動くし、専務の方がいいなら専務に頼む。みんなで相談したり、根回しのやり方を教えたりして、みんなでどのコマを動かすか?を考えています。

 

——最後に、若者へメッセージをお願いします。

大きな夢や希望、目標を叶えたいなら、人並み以上の努力を積み重ねるのが大切です。夢・希望・目標=今できること・今やれること×時間。人並の努力しかしなかったら1をかけてるから、かけた時間相応の結果しか出ない。何もやらなかったら0をかけていることになって、何の成果も得られません。だから叶えたいものがあるなら人よりも多く、0.1でも多く努力をしていきましょう。

若い人は特に、一生懸命色んなことを考えてると思います。でも、まずは動いた方がいい。自分で考えたことをやってみて、ダメだったらやめればいいし、良かったらそこから積み上げればいい。いきなり逆転満塁ホームランはありえません。やってから考える、まず動くことを大事にしてください。

株式会社横引シャッター

設立 1986(昭和61)年4月3日
資本金 10,000,000円
売上高 非公開
従業員数 37名(グループ全体・令和2年4月現在)
事業内容 特殊シャッターの営業
URL https://www.yokobiki-shutter.co.jp/about/
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