企業の抱える悩みを洗い出して社会課題を解決する
—— 事業について教えてください。
現在は、2つの事業に力を入れています。
ひとつ目は、悩みを抱える顧客と解決スキルを持った企業をつなぐコミュニケーションツール『Dicon(ダイコン)』です。
Diconでは、SMSやチャットツールを使って効率的なコミュニケーションを実現します。あえてアプリを使わないことでお客様はWebから問い合わせしやすくなり、搭載した16言語の翻訳機能によって外国籍の方であってもスムーズにコミュニケーションが取れるようになります。
例えば、入居している住居に水漏れトラブルがあった場合、Webページからのアクセスですぐにチャットで問い合わせすることができます。
利用者と管理者会社の2者ではなく、修理業者も含めた3者以上のコミュニケーションも実現できるため、問い合わせから作業完了まで滞りなく対処できるのが特徴です。
不動産業界に限らず、車検工場やトリミングサロンなど、困難を抱えたお客様と課題を解決する企業のスムーズなコミュニケーションを実現できます。
ふたつ目は、炭素の見える化を実現するGXツール「Enecon」です。
Eneconでは、企業の使ったエネルギー資源やCO2排出量の見える化を支援しており、具体的な数値を使ってカーボンニュートラルの達成度を確認できるのが特徴です。
元々は、商業ビルや事業所向けにエネルギーの利用状況を見える化、レポート作成を支援するシステムを提供していました。
しかし、日本政府が2050年までに二酸化炭素の排出量を実質0にすると宣言したとおり、カーボンニュートラルの達成は、すべての業界で取り組むべき社会課題へと変革しています。
Eneconを使うことで、省エネ法の報告義務に該当するエネルギーを具体的な数値で表すことを実現します。さらに、コンサルティング会社と提携することで専門的な解決策までサポート可能です。具体的な数値で企業の課題を見える化することで社会課題の解決へとつなげています。
——会社の雰囲気はどうですか?
人に魅力を感じるメンバーが集まっています。
価値観も様々で個性豊かなメンバーが多く、お互いにリスペクトし合える環境です。フレックスとテレワークを導入しているため、一人一人が働く時間や場所、また国も様々です。
実際に、インターンで採用した学生が留学先でも勤務していたり、ベトナム国籍の社員が母国に帰国後も弊社で働いていたりします。社内イベントでは、開催前に参加予定人数が上限に達してしまうほど、会社内の雰囲気はいいと自負しております。
——リモートワーク中心ではまとまりづらいこともあるかと思いますが、雰囲気が良くなる秘訣はありますか?
弊社として、
①社内コミュニケーションの活性化
②ドキュメンテーションの徹底
③組織としてのレポート体制
といった情報共有についてのルールを細かく設定しています。この3つがリモートでも問題なく業務を遂行できる秘訣だと思っています。
はじめは苦手意識を持っていたインターン生でも問題なく取り組んでおり、情報共有は成功していると思っております。
他にも徹底しているのは、社内意識の統一です。
全社会という従業員全員が集まる会議にて、経営戦略や事業戦略の見える化をすすめております。全社で共有する価値観として、ビジョン・ミッション・バリューを制定し、誠実性、柔軟性、プロフェッショナルの3つは特に大切に意識してもらっています。
その中でも、誠実性、つまり、相手にも自分にも嘘をつかないことがなによりも大切です。辛くなったら会社を辞めても大丈夫だし、改善するなら一緒に良くしていこうねとメンバーには伝えています。
——今後の課題はありますか?
「炭素の見える化」という、GX(グリーントランスフォーメーション)のマーケットも未だに開拓できていないため、業界内での存在感を持ちたいと考えています。
エコカーやEV車といった世の中の脱炭素の動きに、カーボンの見える化を具現化する弊社の製品はリンクしています。
会計システムの内容にカーボンアカウティングという言葉もあるぐらいで、僕たちが実現するのは炭素の会計帳簿です。チャンスはあるけど、様々な事に対して常にキャッチアップをしていかないと置いていかれてしまうのは課題ですね。例えとしては悪いのですが、ロシアによるウクライナへの侵攻をきっかけに、ロシアからドイツに送っている天然ガスをストップさせる動きも起きています。
誰も予想していなかったのが、天然ガスをやめるついでに脱炭素も一緒に進めたらいいんじゃないか?というシフトチェンジが起こっていることです。
これからどうなるか誰も予見できない世界になってきています。
この脱炭素社会の領域についてずっと勉強し続けなければいけません。
一度ついたレッテルを外すのは大変
—— 過去の失敗談について教えてください
僕が働きはじめたのは監査法人で、キャリアとしては順風満帆なスタートだったと思います。
ただ、会計士って「事業のお手伝い」が仕事なので、基本的には経営者のサポートがメインなんです。僕は小さい頃からサポーターよりもプレイヤーになりたいと思っていて、この仕事を定年までの40年間も続けるのは嫌だと思ったのです。
そこで、事業戦略やクリエイティブな環境に身を置こうと決意して、思い切って転職しました。転職はうまくいって、これから新しい道を歩んでいく未来を見据えていたのですが、人事から提示されたのはなんとCFO(最高財務責任者)への就任だったんです。
下にマーケティング部門がぶら下がっているだけで、結局は会計士としての採用でした。
この会計士としてのレッテルを外すのはしんどいなと思って、渡米してマサチューセッツのMBA(経営学修士)まで行きました。
対外的なレッテルを外すのも大変ですが、もっとも大変なのは自分自身に貼り付けた内面のレッテルを外すことです。
どうしても最初に就いた仕事の色に染まってしまうので、自分の苦手な分野からは逃げてしまいます。
レッテルを外すために、何をしたらいいのか、自分の生きたい方向性とそのレッテルをどのように理想的なイメージに変えていくのか、起業する時には自分自身に貼り付いたレッテルを外すのにとても苦労しました。
想いに誠実であれば楽しい人生につながる
—— チャレンジが怖いと感じる若者へメッセージをお願いします
一番に伝えたいのは「自分に素直に生きてください」ということです。
学校での研究課題も会社で働く他者貢献であっても、違和感を覚えるのは自分の気持ちに正直で正しいことだと言えます。
違和感があるまま頑張り続けると、そこで心が折れてしまうからです。
仮に給料が低くても、自分にフィットしていたらメンタルはやられません。
僕も会社勤めのなかで違和感を覚えて、起業前には何度も思考実験を繰り返しました。
例えば、毎月100万円入ったとしても定年60歳までこの仕事を続けたいか、それとも毎月50万円の給料になってでも自分の好きな仕事に従事する道を選ぶか。
毎月50万円の差は楽しさに勝るものではなく、この道を進むのはきっと楽しいに違いないと判断して、今の会社を起業するに至りました。
他の業界に行くのが怖いと感じるのも成功を納めるには必要なことだと思っています。
恐怖心がないまま動いてもきっとうまくいかないのではないでしょうか。
やりたい事がお金になるかは分からなくても、自分にとって楽しい道であれば突き進んでみても後悔は少ないかと思います。
抱いた恐怖心も大切にして、自分の決めた道に進むのが楽しい人生を作ってくれるのだと思います。