ゲノム編集を事業にした徳島大学発のベンチャー企業
—— 企業の成り立ちを教えてください
弊社は徳島大学発のスタートアップ企業となり、徳島大学に本社・研究所があります。現在はゲノム編集を利用して新たなサービスの提供、ものづくりにチャレンジする会社です。
そもそもゲノムとは人、動物、植物などあらゆる生き物が持っている遺伝子です。細胞の中にはそれぞれの生物の特徴を定める暗号があり、DNAに収納されています。
ゲノム編集では遺伝子情報を消したり、加えるといった編集作業ができます。約10年前から扱えるようになりました。徳島大学では培養細胞で効率的なゲノム編集ができるVIKING法、ゲノム編集因子を卵の中に高い確率で入れられるGEEP法を開発しました。
そこで開発者とテクノロジーベンチャーを立ち上げようということでスタートしたのがセツロテックです。
——企業の事業を教えてください
現在の事業は研究支援とPAGEs支援から成ります。研究支援事業では主に製薬会社とか大学医学部・歯学部・薬学部の先生が使用するツールを提供しています。具体的にはゲノム編集マウスやゲノム編集細胞をオーダーメードでつくり、顧客に届けています。
PAGEs支援事業は従来の大学や製薬会社とは全く異なる業界にゲノム編集技術を提供することを目指しています。具体的には品種改良した動物を、畜産生産者などに提供しています。2019年からスタートした事業ですが、現在すくすくと成長しています。
——他の企業と大きく違うところは?
そもそもゲノム編集技術を事業化している企業は国内で10社ほどしかありません。さらに畜産分野でゲノム編集技術を活用できる会社は世界でも片手で数えるほどです。ゲノム編集は一般企業ではまだ扱えず、大学の研究者が使うような技術です。大学発のベンチャー企業ならではの特徴といえます。
海外での展示会の参加も。成長意欲の高い博士号取得者が営業もこなす
—— 営業活動はどのように行っていますか
紹介やリピーターもありますが、ホームページからの問い合わせも多いです。また私がWEBマーケティング会社で働いていたこともあり、オウンドメディアなどのWEBを通じた広報活動にも力を入れています。
一方、学会や展示会での出展、飛び込み営業といったアナログな営業活動も行っています。やはりリアルな営業はお客さんにとっても利便性は高いですし、とても効果的ですね。
弊社の特徴として営業も大学院卒が多いことが挙げられます。実際に営業はバイオ系を専門とした修士卒や博士号取得者もいます。社内全体ですと30名中10名は博士号取得者で占め、一般企業と比べると博士号取得者の割合が高い会社です。
もちろん呑み込みが早ければ新卒や専門外でも十分戦力になれます。たとえば研究支援部門の部長は法学部出身ですが、サイエンステクノロジーをしっかりと理解していますよ。
——博士号取得者をどのように採用していますか
自分できっちりと情報収集をした上で弊社ホームページから応募する方は優秀な場合が多いですね。また国が制作している研究者向けの採用サイトもありますから、そこからの応募も少なくありません。
最近はエージェントをはじめとした人材紹介会社も利用していますが、費用面でハードルが高くなっているのが現状です。もし弊社を希望するのであれば、ぜひ弊社ホームページから応募してほしいですね。メンバーは成長意欲が高く、自分の専門を通じて社会に貢献しようという方が多いですね。
——将来の展望は
ここ最近、新たなゲノム編集因子の特許が取れました。これは弊社にとって大変重要な出来事です。特許が取れる前から少しずつ営業を始め、日本の製薬会社20社くらいからヒアリングをし、そのうち数社から前向きな興味を頂いています。
またアメリカでも展示会を行い、海外企業にプレゼンを行いました。そこでは弊社の技術に興味を持つ会社が多数あり、契約締結まで進むような話ができました。また技術の認知度や実用例をどんどん増やしていきたいですね。
課題としては新技術の特許は取得しましたが、まだまだ世の中には知れ渡っていません。営業を通じて、しっかりと広める必要があります。また営業をする上で必要となるのが実験データですが、まだまだデータが足りません。お客さんが喜んでもらえるような情報やデータを提供する必要があります。
現場に足を運ぶ行動力と率直なコミュニケーションが大切
—— 今まで逆境経験はございますか
私が2社目の経営に着手した頃ですね。友人と1社目の会社をつくったのですが、1年目に仲間割れを起こし、私が会社から身を引くという経験をしました。1社目をつくった際に持っていたお金のほとんどを会社に突っ込んだので、無一文に近かったです。
そこからまた会社をつくり、いくつかの事業を立ち上げ、売上を一つずつ伸ばしていきました。結構綱渡りの状態だったということもあり、かなり大変でした。
今から思うとできるだけ早い段階で社内のコミュニケーションをとるべきでした。つまり遠慮せずに、話し合うことですね。後ろ倒しにすればするほど問題が大きくなることを学びました。
——最後に若者へ向けたメッセージをお願いします
チャレンジしないと何も始まらないので、どんどん突っ込んでいくべきですね。考える、勉強することも重要ですけど、勉強だけでは世の中は切り開けないので、実際に現場に足を踏み入れることが重要だと思います。
そうすることで、勉強すべきことが見えてくると思います。弊社でもインターンシップはやっていますし、インターンで自分の勉強がどのように役立つかということを、社会で学ぶべきだと思います。私は博士課程の時にインターンシップをやっていました。ビジネスの世界に出たいのであれば修士課程や博士課程の時にやっておくべきだと思いますね。