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【株式会社M&Aクラウド 及川 厚博】テクノロジーの力で、常識を変えていく。「就活形式」の、新しいM&Aプラットフォームのかたち

2022/08/26

Profile

及川 厚博

株式会社M&Aクラウド 代表取締役CEO

2011年、大学生で最初の起業を経験。東南アジアの開発拠点を中心に、オフショアでのアプリ開発事業を展開。4年間で年商を数億円規模に成長させるが、別事業に集中するため売却を決意する。
事業売却の際、M&A業界の常識に触れ、売却価格の算定と買い手探しのアナログな点に苦労。その経験をきっかけに、中小ベンチャーやスタートアップ企業のM&A事業に興味を持つ。こうした課題をテクノロジーで解決するため、M&Aクラウドの設立に至った。
主にM&Aプラットホーム事業と、アドバイザリー事業の2大事業を展開する。プラットホーム事業では従来ブラックボックスとなっていた買い手側のニーズや情報を開示することで、売り手が買い手を選ぶハードルを下げることに成功。
一方のアドバイザー事業では、IT業界のM&Aに特化し、豊富な資金源を用いた資金調達なども担当する。自らがスタートアップであることを活かし、スタートアップ企業の資金調達にも注力。
従来のアナログなM&Aに疑問を持った及川社長は、テクノロジーの力でM&Aを抜本的に変えていく取り組みに注力しています。今回はそんな及川社長に、詳しくお話を伺いました。

「顔出し」を敢行。就活形式のプラットフォーム事業

—— ーーM&Aクラウドのメイン事業は、プラットフォーム事業とアドバイザリー事業の2つとお聞きしました。まず、プラットフォーム事業について教えて頂きたいです。

我々の会社では、『M&Aクラウド』という名前の、M&Aプラットフォームを運営しています。簡単にいうと、転職エージェントのM&A版ですね。

M&Aというのは、会社を買いたい人と売りたい人が交渉して、会社を合併・買収することです。M&Aクラウドは、その手続きをテクノロジーの力で簡単に、早くできるようにしたサービスになります。

まず会社を買いたい人、買い手がM&Aクラウドに登録して、買収ニーズや出資ニーズを掲載します。会社を売りたい人、売り手は買い手の書き込んだ情報を見て、就活のような形でエントリーします。買い手と売り手で交渉して、買収が決まったら、買い手側から手数料としていくらか報酬をもらう。

これが、M&Aクラウドのビジネスモデルです。完全成功報酬型の転職エージェントのモデルと、よく似ています。

 

ーー同様のプラットフォーム事業を展開されている同業他社も、多くいらっしゃると思います。そうした他社との差別化点は、どのような部分でしょうか?

最大の差別化点は、買い手の情報を掲載したことです。実は一般的なM&Aでは、交渉のテーブルにつくまで、買い手側の会社名がわかりませんでした。売り手側がノンネームシートと呼ばれる、会社を特定されない程度の情報を渡して、それを見た買い手側から売り手側に声をかける。これが従来のM&Aのやり方でした。

従来のやり方では、買い手側も売り手側も、プライバシーが守られます。ただ、その状態だと、買い手を探すのに苦労するんです。自分も2015年に自分の会社を売却した経験がありますが、とにかく買い手を探すのに苦労しました。

M&A事業は、買い手をたくさん集めるのが大切です。でも従来のやり方だと、売り手ばかり集まるんですね。売り手ばかり集まってても、買い手が集まらないから、M&Aが成立しにくい。だからM&Aクラウドでは、最初に買い手を集めるシステムを作りました。

M&Aクラウドを始めるまでは、買い手側が「顔出し」状態になる仲介サービスがなかったんです。同じ業界の会社さんにはあまり良い目で見られませんでしたが、売り手側の方には喜んでいただけました。

 

ーーなるほど。なぜ従来の業界になかった、買い手側の情報開示に踏み切ったのでしょうか?

M&Aクラウドが業界に入るまでは、M&Aの仲介を専門にしている会社がプラットフォームを作っていたんです。イメージでいうと、不動産の仲介みたいな感じですね。

こうした会社さんは、買い手側の情報を出したがらないんです。仲介会社の収入源は仲介手数料で、その手数料は自分のところのプラットフォームで、買い手側と売り手側がマッチングしないと発生しない。

もし買い手側と売り手側がダイレクトにつながったら、仲介手数料が取れません。だから従来の仲介会社は買い手側の情報をブラックボックスにして、会社の名前を載せたがらないんです。仲介料が数千万単位の大きな額なので、これを失うのを怖がっている。

それに加えて、M&Aの業界には、エンジニアのような技術を持った人がほとんどいない。元々、金融関係の人が中心になって立ち上げた業界なので、テックの人が少ないんですね。だから、M&A業界はものすごくアナログ。買い手になってくれる会社さんを見つけるにも一苦労ですし、何より会社の売却価格も人が決めている。

その時、これってインサイダー取引と変らないんじゃないか?と疑問を覚えました。実際、M&A仲介会社の中にも、会社の情報を出した方が良いと考えている方もいて。それで新しく、テクノロジーを使ったM&Aのプラットフォームを作ろう、と思い至りました。

 

スタートアップも手助けできる、アドバイザリー事業

—— ーーでは次に、アドバイザリー事業について教えてください。

アドバイザリー事業の方は、普通の仲介会社とあまり変わらないビジネスモデルです。M&Aクラウドは、どちらかといえばプラットフォーム事業の方が中心だと考えています。アイデンティティともいえますね。

事業の内容でいうと、売り手・買い手の両方を相手にして、M&Aのサポートをしています。M&A戦略や事業承継問題についての相談に乗るのが、主な内容ですね。それに加えて、スタートアップ企業向けの資金調達も、事業の一つです。

 

ーープラットフォーム事業と同様に、他社様と差別化されている点はありますか?

IT企業に特化している点、スタートアップのM&Aができる点ですね。

スタートアップとして普通に起業するとなると、売却やIPO(新規上場)の判断、資金調達まわりを全部自分でする必要があります。そんなスタートアップのアドバイザーになって、事業計画を考えたり、投資家を紹介したりして、資本を作るお手伝いをしていきます。

業界の中でも、スタートアップのM&A支援をしている会社は、なかなか無いと思っています。スタートアップ企業のM&Aができる場所といったら、M&Aクラウドの名前が真っ先に挙がりますね。

「ワンチーム」を大事にする社風

—— ーー社風について教えてください。

M&Aクラウドは、「1 Team(ワンチーム)」を意識する職場です。社員それぞれが担当する仕事は本当に色々あってバラバラなんですけど、みんなが1つの目的、同じ方向に向かって、チームとして進んでいく。そういった意識を持っているチームです。

 

ーーかなり個性が強そうなメンバーですね。社内競争も激しかったりしますか?

前提として同業の会社さんは、社内競争が激しいと聞いています。ただM&Aクラウドの場合は、1つの目的に向かって全員が協力して、頑張っていける環境ですね。色んな職種が混ざりあって団結力を強めていけるように、各部署のメンバーの交流も活発です。

すごくオープンカルチャーというか、お互いの知識や情報をきちんと共有する文化がありますし、社員同士の仲もいいです。社内セミナーやレビュー会、プロダクトの開発プロセスの共有なんかも盛んですね。メンバーはみんな協調性が高いけど、同時に成長意欲も高い。成長がすさまじく早い人も多いです。

 

ーーなるほど。そんなメンバーをまとめるために、意識されていることは?

それぞれの強みを活かした組織づくりを心がけています。メンバーの中には、1人でその職種を担当していて、上司がいないことも多いです。それくらい細分化されたチームなので、採用やマネージメントが難しい面もありますね。

一番つらいのは、結果のない努力

—— ーー及川社長のご経験の中で、もっとも辛かったことはなんでしょうか。

自分の考え方なんですけど、起業はすごく楽しいものだと思っているから、起業してからのことはあまり大変だと思っていません(笑)。一番つらかったのは、高校で空手部に入っていた頃ですね。

当時は自分の全てを練習に費やしていました。結果的に全国大会には出られたんですけど、相手が強くて勝てない。特にスポーツでは、自分よりうまいやつが必ずいるし、高校3年間という時間制限もある。

空手は、自分の努力が結果に現れやすいスポーツです。だから頑張るんだけど、自分の努力では一番になれないんだな、と途中で冷静に感じてしまった。でも部活だから頑張らなきゃいけない。結果が出ないのに頑張らなきゃいけない、このギャップが結構つらかったです。

 

ーーM&Aクラウドを設立されてからも、苦労されましたか?

起業は自分の得意なことをやるものだから、絶対に一番になれる自信があります。だから彼手に比べたら、起業は全然つらくなかったですね(笑)。元々、脱臼してても練習に出るくらいタフなのもあるとは思うんですが(笑)。

業界に入って辛かった、というかショックだったことは、同じ業界の人から反発をくらったことです。同業他社さんはもちろん、ベンチャーキャピタルからも猛反発がありました。辛いわけではありませんでしたが、ビックリしたしショックでしたね。

ただ今では、反発をしてくれた人たちに感謝しています。もし受け入れられていたら、それは他に前例があるということになりますから。反発があったおかげで、自分たちが新しいことをやっていると実感できました。

M&Aクラウドを、ナンバーワンのM&A企業に。

—— ーー今後の展望について教えてください。

3年後に、M&A業界でナンバーワンになることを目標にしています。今後はもっと色々なプロダクト、例えば事業承継にも着手したいですね。10年後にはM&Aクラウドで、年間1万件のM&Aを成立させたいと考えています。

最終的には、革新的なプラットフォームを作って、時価総額1兆円を目指します。目指すとは言ったものの、逆算したら絶対に達成できる、という確信があります。そこまで確信、自信があれば、ビジョンに共感してくれる人も集まってくると思います。

実際、今年の上半期で、23人が新しく社員に加わりました。今は社員全員合わせて、70人くらいですね。

 

ーー最後に、若者へ向けてメッセージをお願いします。

空手部や起業の経験を通して学んだのは、「努力は夢中に勝てない」ということです。自分は努力ができる人間だけど、夢中でやってるやつには勝てない。好きじゃない分、エネルギーをかけたり、燃費を考えたりしないといけないから。

だから、自分が夢中になれる、楽しいものを見つけるのが大事。だから最初は努力したいこと、努力できることをやって、ある程度続ける。なんでも続けてないと楽しくならないし、楽しいものをいつまでも見つけられない。だから継続することも大切ですね。

それで言うと、M&Aクラウドは力を持て余していて、暴れたりないくらいエネルギーを持った人に来てほしいと考えています。M&Aのスキルは今後、どの業界でも必要になると思いますしね。

自分に自信があるなら、ハイリスクハイリターンとか、ミドルリスクミドルリターンの環境に入ってみると良いと思います。M&Aクラウドには過去に1000億円規模の会社で働いた経験のある人がたくさんいるので、良い経験になるでしょう。

今年入ってくれた新卒の社員は2人、インターンから上がってきてくれたメンバーです。採用人数も多くないし、狭き門ですが、エネルギーを持った人に来てほしいと思っています。

株式会社M&Aクラウド

設立 2015年12月7日
資本金 12億4千万円(資本準備金等を含む)
売上高 非公開
従業員数 約70名
事業内容 プラットホーム事業・アドバイザリー事業
URL https://corp.macloud.jp/ https://www.wantedly.com/projects/690468 https://www.wantedly.com/companies/macloud/post_articles/378745
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