さまざまな悩みを解決するために、女性の強みを活かした営業支援を展開
—— まずは、事業内容について教えてください。
弊社は、すべて女性メンバーで、主にBtoBの新規開拓の営業支援を行っています。具体的にはテレマーケティングから訪問営業、また展示会営業支援(展示会に出展している企業さんのブースに立ってリードを獲得すること)や交流会への代理出席など、名刺交換によって成約に繋がるような取り組み方で支援をしております。
さまざまな業種や規模の企業様の支援をさせていただき、なかにはSONYさんや食べログさんなど、名のある大手の企業様もいらっしゃいます。現状では、月に40社以上の企業様の支援をさせていただいております。
――営業支援について、女性だからこその強みはありますか。
男性の場合は、ロジカルで納得感のあるプレゼンをされる方もいますが、警戒されてしまうこともあります。一方、女性は相手の話に共感しながら傾聴できるので、本音を拾いやすいと思います。その点において、女性の強みを活かして、しっかりニーズをヒアリングした上で提案できるのが、全員女性メンバーで構成された弊社の強みだと思っています。
ここは社内でも同じです。メンバーが困っていたらしっかり傾聴してあげて、具体的な対策が出せるように引き出してあげることが、メンバー同士でできています。
だからこそ、チームワークが保たれていると考えています。
みんなで毎日ランチに行き、いろいろな話をしていますが、仕事以外の面も気軽に話せる環境があると、結果的に仕事も効率的に進められると思いますね。
「出産後でも今までのキャリアを積み重ねていけるようなフィールドを作っていきたい」
—— では、女性中心の営業支援事業を起業されたきっかけを教えてください。
起業のきっかけは3つです。
1つ目は女性の社会的背景です。男女間の経済格差に加えて、シングルマザーの半数が貧困状態だといわれています。離婚して養育費を払っている男性は、23.4%しかいないので、経済的にも厳しい状況です。
この現状を知ったとき、女性に経済力がつくようなフィールドを作りたい、そして本当の意味で生涯活躍できるような、会社をつくり、私達が活躍することで社会に影響を与えられるような存在になっていきたいと思ったことでした。
2つ目は実体験です。私自身、前職を含めて出産後に営業職で戻ってきている方を見たことがありませんでした。経営者の方で出産後に復帰した方はいますが、子育てをしながら営業職の最前線で活躍されている方にはお会いしたことがほとんどございません。
だからこそ、出産後でも今までのキャリアを積み重ねていけるようなフィールドを作っていきたいと思っています。営業職は女性から敬遠されがちですが、成果が報酬に繋がる本当にやりがいのある仕事だと私は思いますし、営業職という選択肢をいろんな女性の方に知ってほしいと考えています。
また環境面において、営業職として転職後に多くの男性の中で女性ひとりというケースは多く、男性のマネジメントについていけず、女性の方が離脱するのはよく聞くケースかと思います。女性には女性特有のマネジメントの仕方があるのではと考えています。
女性は納得感があると、サボるという概念はなくなります。基本的に女性は真面目かつ一生懸命で、やると決めたらやり遂げる傾向が強いと考えています。そんな性質を持ち合わせている女性だからこそ、女性の強みを活かした組織マネジメントを行いながら、組織を成長させていけるのではないかという考えがありました。
3つ目は、先のお話しのとおり、女性の傾聴力や共感力を活かしたいという思いがあったからです。営業支援会社のベンチャーに2年半従事し、女性の営業支援チームを2011年1月に立ち上げ、「女性の傾聴力などの強みを活かした営業支援パッケージを展開していきたい」と伝えたところ、当時の経営陣より承諾してもらうことができました。
半年間ぐらい営業支援を続けたところ、クライアントさんから多くの受注をいただき、反応も良好だったこともあり、半年後に独立しました。
「ひとりでも共に頑張ってくれる仲間がいれば、やらない選択肢はなかった」
—— 起業されてから困難や苦難を乗り越えたエピソードはありますか。
現在、私は2人の子供がいるのですが、出産前後での経営は、困難だと感じましたね。
1人目を31歳ぐらいのときに妊娠したのですが、妊娠した年に自社での靴ブランドのリリースもあり、妊娠中に病院でそのサイトの仕様を考えるなどしながら、出産した2ヶ月後ぐらいに靴ブランド「lelys」リリースしました。
しかしながら、出産前と同じように働くのは難しく、毎日6時間ぐらいの勤務を行い、授乳のために早々に帰宅する日々が続きました。そのため、まだ組織の基盤が強固となっていないなか、どうしても今まで通りのマネジメントができず、うまくいかなくなってしまったのです。
そして、その1年後2人目の妊娠がわかったタイミングあたりで、右腕のような取締役メンバーが退職。そのメンバーが辞めたことで、他の部長のメンバーは「私が全部やらなければ・・・」とプレッシャーに感じてしまい、体調不良などで辞めてしまいました。そのとき私は妊娠5ヶ月か6ヶ月くらいでしたが、このような状況だったので、出産する1週間ぐらい前のギリギリまで、新しいメンバーの商談に同行するなど、仕事をしていました。
そんな厳しい状況のなかで頑張ってくれたのが今の部長です。出産を終えて約2週間後から毎日出社していましたが、2人目は1人目と違い、育児についてどうすればいいかなんとなく理解はできていたので、仕事にも専念することができ、さらに今の部長がうまく立ち上がってくれたおかげで、翌々年からV字回復、現時点で過去最高売上を達成することができるほどになりました。
(豊島社長の息子さん)
ーー右腕がいなくなるのは、代表として心境的に辛くはなかったですか。
手塩にかけて育てたメンバーがいなくなるのは辛かったです。ただ、ひとりでもついてきてくれるメンバーがいたら、やらないっていう選択肢はなかったです。命がなくならないかぎり、必死でどうにか売り上げを元通りにして、むしろ向上できるようにするにはどうしたらいいのか考えました。
私はコツコツ努力しないと結果が出ないタイプで、天才肌ではありません。ただ、コツコツ努力すれば必ず結果に繋がると思い、努力してきました。努力は裏切らないと思っています。
余談になりますが、ここで少し「靴のブランド」についてお話しさせていただきたいと思います。
弊社は、営業支援事業の他にも、「lelys(ルリス)」という靴のブランドを展開しています。靴ブランドを立ち上げたのは、私自身の経験が大きく関係しています。
長期に渡り営業職をしていたとき、歩きやすくてデザインも良いパンプスが本当にありませんでした。
歩きやすい靴だとどうしてもフォルムがイマイチだったり、自分で買いたいと思えるような靴に巡り合えなかったり、デザインによっては痛くて歩けないようなものもありました。
他の営業をやっているメンバーに聞いても同じような反応で、靴に悩んでいる営業職の女性がすごく多く、そこを解決したいという思いが昔からあり、靴事業の立ち上げにいたりました。
女性が生涯真に輝くことができる場所をつくろう
—— 今後の事業の展望はありますか。
弊社のビジョンとしては、女性が生涯活躍できるリーディングカンパニーとなることです。また、出産後の離職率を減らしたい、変えていきたいとも思っています。出産後でも半年から1年あれば、十分復帰はできる状態です。
でも、今までは出産後に仕事に復帰できるという選択肢は少なかったと思います。だから、少しでも選択肢を広げていきたい。子育て中でもシングルマザーの方でも、経済力をつけて欲しい。私はそこをリードしていけるような会社にしていきたいと思います。
その背景として、日本のジェンダー・ギャップ指数があります。日本の順位は156か国中120位です。さらに、女性と男性の生涯所得の差は、5,000万から6,000万といわれています。出産後に女性が離職する数は46.9%。その中で離婚するカップルは3組に1組です。
シングルマザーの方は、今日本で120万人いるんですよね。その半分の方が、年収177万円以下で相対的貧困状態なのです。だからこそ、女性の社会問題として、女性が経済的に自立できて、活躍できる環境を作っていきたいと考えています。
人生一度きり、悔いのない時間を送ってほしい
—— 最後に若者へのメッセージをお願いします。
私は、学生時代のころから「父を越えるような経営者になりたい」と漠然と思っていました。まずは、20代で起業することを目標にしていたので、20代はがむしゃらに働きました。「お金をもらって、修行できるなんて・・・」、営業職は独立したいと考えている私にとって最高の職種でした。私は、新卒で営業会社に入社できたことを、心から「良かった」と思えています。
ただ一方で、目的意識のない方は、そう思えない方も多いかと思います。
例えば、私は「誰にでもできることを、誰よりも多く、早く、正確に」しようと思って仕事をしていました。先輩にご飯に誘ってもらえる機会があれば、本当に嬉しかったですし、むしろ土日も先輩と一緒にいたくて先輩とばかりいました、、、(笑)隙あらば先輩の横で「この前は、どうやって受注したんですか?」と聞いて、吸収しようとしていました。
しかし、仕事に対して目的意識がないと、週末が楽しみで仕方がなく、月曜日が億劫だという方も少なくないのではないでしょうか? 私は、夕方5時になって、もうすぐ仕事が終わりだと思い気分があがるという感覚になったことがありません。「もう金曜日なんだ。もっとやりたいことがあるのに」という心境です。
仕事って人生の中で1/3ぐらい占めると思います。大学を卒業してから死ぬまで、仕事をしているウエイトはかなり大きいと思います。その仕事がつまらなかったり、歯車のような感じで働いていたりするのは、私は絶対嫌だなと思います。
どんな仕事であっても、将来どうなりたいかを考えてワクワクできる、一緒に働くメンバーを尊敬することができて、組織の成長を楽しめる、そんな環境で働くことをお勧めしたいと思います。
人生一度きりですから、悔いのない時間を送ってほしいと考えています。
(2022年3月石垣島社員旅行写真)