下請け仕事をやりつつも新しいことにもチャレンジ
—— 貴社の事業内容をお伺いできますか。
IT業界でいわゆるシステムインテグレーションやソフトウェア開発と呼ばれるビジネスをやっています。官公庁や自治体、大手企業が必要としているシステムの開発を請け負うビジネスモデルで、元請けと下請けが多層的になっておりゼネコンに似た業界です。その中で我々は下請け企業として社会に貢献しています。
8〜9割はそういった下請け仕事ですが、新しいことにもチャレンジしています。例えば、スマホなどの新しいプラットフォームで、我々が培ってきた経験が活かせないものかと色々トライしています。エンドユーザー(一般消費者)に訴求できるようなものを開発したり、地域の課題をITで解決できないかと行政や様々な団体と共に取り組んでいます。要はソーシャル・ビジネスです。具体的には佐賀県や沖縄の石垣島で地元の方々と共にソーシャル・ビジネスにチャレンジしています。
素直に自分を表現し、お互いの強みを理解し合う
—— どのような人材を求められていますか。
学生さんにもよく聞かれますね。私はいつも「素直に自分を表現できる人」と答えています。自分らしさをいかに出せるか?が社会ではとても大事だと思っています。そうは言っても、「ガンガンいこうぜ!」といったオラオラした体育会系キャラを求めているわけではありません。例えば、静かにコツコツ仕事をするのが得意な方もいらっしゃいます。それぞれの自分らしさを、素直に表現できるのが良いと思うのです。
弊社では社員の「強み(得意なこと、好きなこと)」を可視化するためにストレングスファインダーというアセスメントを全社で取り入れています。例えば、私には未来志向という強みがあることが分かりました。確かに学生時代「こんなことやったほうが面白いのに!」、「もっとこんなことがあったら将来楽しいのに!」と、友人に話していたことを覚えています。当時の友人からも「面白いね」と賛同を得られていましたね。でも、それが自分の「強み」と理解するまではイマイチ活かし方が分かりませんでした。
ただ、強みを可視化しても、それを仕事の向き不向きの判断には使ってはいません。自分がどんな強みを持っていて、周りの人間もどんな強みを持ってるか。それをお互いに理解しあうことが大事です。
例えば、AさんとBさんが同じ仕事をしていても、それぞれ得意なことが異なればその過程と結果が違いますよね。仕事をする上で悩むポイントもAさんとBさんでは異なるのです。もし、それぞれの強みを知っていれば、「Aさんは〇〇で、Bさんは△△で悩んでいるのかもしれない」と、相手を理解することができます。
入社したら机はあったが仕事が無くて直属の上司もいなかった
—— これまでに辛かった出来事はありましたでしょうか
入社した時が一番辛かったですね。私が入社した時は父が社長だったので、鳴り物入りみたいに扱われていたと思います。入社したとき、私の机はありましたが仕事はなく、直属の上司もいませんでした。
驚きつつも、「自分で仕事を作れ」というメッセージだと受け取って色々なことにチャレンジしたのです。それなりに汗をかき続けた結果、社内で自分の仕事やポジションを作ることができました。5~6年ぐらいかかりましたかね。仕事を与えられなかった理由は今でもわかりませんが、父としては特別扱いしないように意識していたのかもしれません。
当時は会社の文句も言いたかったと思います。でも、文句は言わずただただ一生懸命に仕事をしていたと思います。すると、前社長(現会長)が「あれ?誰も松井君のキャリアのことを考えてくれてないよね」と気づいてくれたのです。収入の不安や今後社内でどうやっていきたいかなど、相談に乗ってくれました。そこから少しずつ仕事と責任が増えていき、ようやく収入も上がり始めました。これが入社して5〜6年経った頃の話です。
人生や仕事の舵取りをしていくことを強く意識
—— 逆境の中でどのように仕事に取り組まれていましたか?
当時、採用担当をさせてもらえました。新入社員が入社するまでは、採用担当なので距離が近いです。そのメリットを活用して、共感し合える仲間のような社員を増やしていきました。
私のキャリアは広告でスタートしましたけれども、挫折して退職したのです。それなりにがんばったという自負はありましたけど、入社後しばらく経った頃に「このままでは二の舞。また辞めてしまうのでは」と不安になりました。
そこで、自分に足りないものを知るために社外のセミナーに積極的に出かけて勉強したり、様々な人たちに会って話を聞いたりしていました。すると、ある日コーチングに長けてる方から「松井さんは強い意志を持ってらっしゃる。でも、これまでの人生において最終的な意思決定を、ご自分でされてませんね?」と指摘されたのです。このフィードバックをもらったときは恥ずかしながら号泣しました。「そうや!まさにそうなんや!」って。めちゃくちゃ悔しかったです。それからですね。人生や仕事の舵取りをしていくことを強く意識するようになりました。
人生や仕事の舵取りをするために必要なものを考えたとき、それに気付かせてくれた「人の話を聴く」ことが大事だと感じました。会社を良くするためにも、社員の話に耳を傾けることを意識するようになりましたね。
若手社員の可能性を実験できるような会社にしたい
—— 将来の展望をお伺いできますか。
現在は130人ほどの社員がいます。ベテランから若手まで在籍しており、ベテラン社員については、定年後も勤められる会社にしていきたいと考えています。ただ、若手社員には色々な可能性があるはずです。若手社員の可能性を実験できるような会社にしたいと考えています。
意欲的な若者の可能性を潰してしまうのはもったいないことです。チャレンジができる環境を用意する。そんな気持ちで会社作りをしています。その土壌作りとして、この1〜2年でテコ入れをしたい。そんな状況ですね。
ーー抱えている課題点やギャップがありましたらお伺いできますか。
活き活きと働いている若手社員はたくさんいます。ただ、例えば130人の社員のうち100人が「新しいことをやりたい」と言い始めると、現実的に会社は経営できません。新しい事業の立ち上げまでのスピード感や、意欲的な若い人材を受け入れる企業としての体力づくりが課題です。どうしても新規事業には先立つものが必要になります。でも、まだまだ新規事業のための体力づくりも必要だと感じているので、もっと強化していきたいです。
「自分らしさ」をどうすれば活かせるかを追求する
—— 最後に若者へのメッセージをお願いします。
これからの社会は我々のような大人でさえ、どのように変化していくか分かりません。なので、先が見えていない未来に対して若い人が想いを馳せるのは、あまり意味のないことでしょう。無理に社会に合わせる必要はないです。それよりも、社会に出て、どうすれば「自分らしさ」を活かせるか追求してください。「自分らしさ」が見つかる企業と出会えて、「自分らしさ」に合った仕事が見つかれば、よいのではないでしょうか。
「自分らしさ」を発揮することが本人にとって最大のパフォーマンスに繋がり、会社に貢献することができ、ひいては社会貢献になります。例えば、アイデアを思いつくことは立派な強みです。でもアイデアがあるのに言わないのはもったいないことですよね。なので、アイデアが思いつく若い人は、どんどん誰かに話しましょう。
みなさんも、ぜひ若い頃から「自分らしさ」を活かしてください。そうすれば、きっとよい結果に繋がります!