MiraError(ミラエラ)

【株式会社Leading Communication 細矢 義明】最悪も最高も想定内。マーケットをコントロールするのは「決断力」

2022/05/17

Profile

細矢 義明

株式会社Leading Communication 代表取締役社長

元大手エンターテインメントグループファウンダー。年商100億円の事業に成長させたのち、2017年に「株式会社Leading Communication」を立ち上げ、代表取締役社長に就任した。

同社は現在、プロダクション、PRエージェンシー、ライブ配信アプリ、医療クリニック等の事業を展開。ユニークな経歴やファンコミュニティ形成ノウハウを活用しながら、あらゆる人財が過去のバックグラウンドに縛られず挑戦でき、価値を提供できる新規事業の立ち上げに奮闘中だ。同社に所属するクリエイターの総SNSフォロワー数は4000万人を突破し、独自のメソッドで「質と純度の高いファン」獲得につなげている。

そんな細矢氏にクリエイティブ業界における課題とそれに対する事業展開、また求めている人材について伺った。

クリエイターが消費される現状に投じる一石

—— まずは、御社の主力事業についてお伺いしたいと思います。

現在は、TikTokerをメインにプロダクション事業を展開しており、300名の所属クリエイターの総フォロワー数は4000万人を突破しました。弊社は、クリエイターがもつ影響力をクライアントサイドに投稿するだけでなく、ファンコミュニティを形成し、クリエイター自身の影響力によって経済圏を拡大していこうという思いで事業を行っています。

もうひとつは、TikTokを活用したマーケティング事業を行っており、さまざまな企業様からTikTokを活用したマーケティングの依頼を受けています。マーケティングの企画から動画の制作、運用など、すべて一貫して受け入れているのも弊社の特徴です。「ファンコミュニティの形成によってクリエイター自身の経済圏を拡大していこう」というのは、クリエイターの影響力を利用する形でマス(大衆)に消費されていくのではなく、各コミュニティごとの影響力を重視するという意味合いがあります。

たとえば、TikTokの世界ではとても有名な人であっても、TikTokの事業を行っている我々でも「知らない人だった」ということもたまにあるんです。近年は、コミュニティが縦により深くなっていっているな、と感じていて、マスではなくよりコアな特定のコミュニティに対するクリエイターの影響力が、ビジネスにおいても「熱量」を高めていっていると感じています。

クリエイターが「個」として消費されるのではなく、彼らが中心となって中長期的な人生をワクワクしていける環境にするために「一緒に事業をつくってやっていこう」という考えで弊社は事業を行っています。

弊社は、単純に「案件が来たから引き受ける」というだけでなく、「どのようなクリエイターの動画が、どのような商材に対してどのような反響があるのか」というところを分析してデータを蓄積しています。それをベースにして進めたいと考えているのが「クリエイター達での事業づくり」です。SNSを活用して、クリエイターの事業展開について設計していくということを軸に、さまざまな事業に挑戦しています。事務所やプロダクションにこだわるのではなく、一緒に事業をつくっていくパートナーとして事業を進めた方が、クリエイター自身や弊社のためになると考えています。

――TikTokerの方達は、どのような事業をされるのでしょうか。 

まずは、自分たちのファンとのコミュニケーションを通じて、コミュニティをしっかりとつくっていくというところからスタートしていくことが多いです。SNSが得意な人であれば、アイドルプロデュースを進めていく方もいますし、商品開発などもアクティブに行っています。「いけるな」と感じたところに関しては、リアル、デジタルともにさまざまなチャレンジをしていますね。たとえば、ダンスが得意な人であれば、ダンスを絡めた実店舗づくりからデジタルを絡ませていこうか、など、企画段階から今会社にあるリソースを使った事業開発に着手しています。

 ――TikTokを利用したマーケティング方法というのは、TikTokがはじまった頃から構想があったのでしょうか。

弊社は、3年半ほど前の2017年に事業をはじめました。当時は、YouTubeが一番見られている媒体でしたね。TikTokが出てきたときショート動画で、かつレコメンド(推薦)機能が優れていたので「これは伸びるな」と感じていましたが、当時はまだ若い人達がユーザーの中心でした。そのような中で、TikTokはリーチ力(幅広い人に対して情報や商品知識、サービスなどを知らせる力)が圧倒的に高いと感じたので、マスに受け入れられるようになればマーケットを取っていけるほど「購買要求」が変わってくると思ったのがきっかけで、現在の事業をスタートさせました。クリエイターを抱えて育成していくと実際に事業として伸びていったので「再現性をもってやっていけるな」と感じ、進めていった形です。

弊社は現在、医療クリニック事業も行っています。そちらの事業は今あるマーケットにトライしていくというよりも、これから実を結びそうなマーケットに対して潜在層を顕在化していくことに力を入れていますね。私自身が「潜在層を顕在化していく」という工程が好きなのも理由のひとつです。

もともとは、私はエンターテイメントグループのファウンダーという仕事に携わっていました。その経験から「メンズのカッコいいはつくれる」という考えをもっています。「カッコいいのつくり方は知らないけど、時間とお金はある」という人はたくさんいて、そのような人たちに「カッコいいはつくれるんだよ」ということをSNSを通して発信したいと考えていたところから、現在の事業と絡めていきました。

私自身は「体験したときの感動」をとても大切にしていて、それが人生にとってプラスの出来事であれば、多くの人たちに届けたときに必ず反響は継続してあると考えています。

 

最悪も最高も自分でコントロールするからこその「やりがい」

—— これまでに経験した逆境など、苦労したことはありますか。

あまり逆境という状況にあると感じたことはないですね。よく友人にもいわれるのですが私自身には「失敗を失敗と思わない」というところがあるようです。 自分でコントロールできないものって不安になりますよね。運に物事を任せたり、ギャンブル性が高いのに突っ込んでいったり、そういったことは不安に感じて不安定になると思います。

私自身が事業をはじめたのも「潜在層を顕在化できる」という、自分自身でマーケットコントロールできて、戦略も全部描けている状態のときでした。良いとき、悪いときはもちろんありますが、悪いときがあっても「それを含めてどう成長させるか」というのが前提にあるので、失敗というよりはあくまで戦略の通過点という認識です。リスクはあくまで想像できる範疇なので、淡々と対応を続けていくだけですね。

――想定を超えることはありませんでしたか。

ありませんでしたね。つねに最悪の状況を考えてリスクヘッジするので、そのうえでアクセルを踏むようにしています。自分が想像していること以上のことは、今までに一度も起きたことはないですね。

唯一、逆境経験について挙げるとしたら、新型コロナウィルスで緊急事態宣言が発出された最初の1ヶ月でしょうか。それだけは急にきたので、想定していませんでした。最初の1週間くらいは対応に追われることもありましたが、その時点でこの状況が半年、1年、2年と続いたらどうするかというのを、現状のデータから導き出して想定しました。そこまで対応していたので、宣言が空けてすぐに売上も伸ばすことができ、コロナ禍にもかかわらず昨対(昨年比)を超えて2倍くらいの売上になりましたね。

自分の中で全部想定するので、運に任せたり誰かに任せたりすることはありません。20歳で起業してからずっと続けてきているので、とくにプレッシャーを重く感じることもないです。最悪も最高も自分で想定してコントロールしていくからこそ、とてもやりがいを感じていますね。20歳で起業した当時も不安はありませんでした。若いときって自信があったので、それほど深く考えず「できないわけがない」というマインドでした。若い時期の勢いでしたね。

 

求めるのは未来を想像してトライできる人材

—— 今御社で求めているのは、どのような人材でしょうか。

弊社では現在、採用にとても力を入れています。私達は「ドリームキラー」と呼んでいるのですが、さまざまな場面で「それは危ないよ」「それは無理だよ」といってくる人がいると思います。本質を理解していっているのであれば、そういってくる人達は皆成功しているでしょう。どちらかというと、そのような発言をする人は、自分達が成功することを望んでいないことが多いと感じています。自分にできる以上のトライをしていかなければ、事業もキャリアも成長していかないと思っているので、自分が貫けることに対して「未来を想像してトライできる人」を採用するようにしています。

今までになかったものをつくっていかなければならないので、過去の事例ばかり引き合いに出しているのは過去の模倣でしかないですよね。過去の事例をもとに、仮説をたてて新たなことにトライできる人じゃなければ、弊社では一緒に働いていけないと思います。「ほかでできない経験を圧倒的スピードでやっていく」という考えです。弊社の社員達が打ち出した目標は、ほかの人達が見れば100人中100人が達成できないというでしょう。でも、社員たちは無理だと思っていません。実際にこれまで100%以上の達成率を実現させています。「みんな無理だというからこそチャンスだよね」と思える人達が集まっているからこそだと思います。

弊社の人材には、マーケティング経験者ももちろんいますが、さまざまな業界出身の方がいます。ただし、批判や否定ばかりする人は採用しません。できない理由ではなくて、できる理由を考える人達が集まっているので、そこは重視しています。社員同士とても仲が良いんですよ。もちろん重要なのは結果なので、会社の目標達成に向けて、意見を言い合える環境があるうえでの仲の良さがあるのは良いことだなと感じています。社員の年齢層も幅広いですが、年齢関係なく目標を達成していけば一気に評価が上がっていきます。

企業の戦略を支える「人」を重視した採用

—— 現在御社が向き合っている課題はありますか。

課題はやっぱり「人」ですね。そこに尽きると思っています。戦略として描いているイメージを実行する人が弊社に入ってくることを、今はとても大事にしています。初期の頃は、TikTok採用なども行っていて月に数十人応募がありましたが、想定しているペルソナがきませんでした。部署によっては採用に繋がる部分もあるとは思います。弊社は今スキルを求めている部分もあるので、応募者の方々とのやりとりは月に数百人単位で行っている状態です。結構厳しい目で選考を行っているので、今の弊社のフェーズではTikTok採用は適していないと思っています。

カルチャーフィットとスキルの両方を重視した採用を行っていますが、若い方に関してはカルチャーフィットを重視していますね。若手が育つ環境をつくっていきたいという考えはあるのですが、今はマーケットをしっかりと取っていくことを優先しているので、なかなか難しいところです。中途で人材を採用しつつ、教育環境を整えていきながら若手の採用も行うというバランスを取っています。現在弊社は若手社員が多い環境ですが、若手の方が会社の文化に馴染んで結果を出すスピードは早いなという印象です。

 ――最後に若者へメッセージをお願いします。

私は、それぞれ人の能力値において極端な差はないと思っています。考え方次第で成長の幅が大きく変動するというイメージですね。伸びているマーケットに対して、時間を投下してリターンを得るというのが事業です。若い人は、若いときだからこそ、チャレンジできて経験というリターンが得られます。若い人ほど吸収力も伸びしろもあると思うんです。

失敗が怖いからこそ、今チャレンジするという考え方に転換していった方が、将来的な安心につながると思っています。周りの同調圧力に屈して、自分が信じた道にトライしないことの方が、きっと後悔するでしょう。周りの人たちは、自分の人生に責任をもってくれませんからね。考えて決定していく決断力を身に付けるには、習慣化が大切です。今日食べる食事など小さなことや成功した人の真似からで良いので、自分自身で分析し、考えて意思決定することを習慣化すれば決断力もつくと思います。

 

株式会社 Leading communication

設立 2017年7月
資本金 非公開
売上高 非公開
従業員数 非公開
事業内容 プロダクション事業/SNSマーケティング事業
URL https://www.le-commu.co.jp/
この記事が気に入ったら
いいね ! しよう