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【株式会社BitStar 渡邉 拓】「未来の結果で過去の評価は変えられる」 あらゆるクリエイターが活躍できる世界を作りたい

2022/05/12

Profile

渡邉 拓

株式会社BitStar 代表取締役 社長執行役員CEO

慶應義塾大学大学院理工学研究科卒。新卒で入社したスタートアップで、新規事業立ち上げに従事。独立後に友人のYouTuberを支援したことをきっかけに、株式会社BitStarを創業した。
同社は「100年後に名前が残る産業・文化をつくる」をミッションに、エンタメ関連の広告・プロダクション・コンテンツ領域の事業を行っている。YouTuberやTikTokerなどのクリエイター支援も行っており、累計取引クリエイター数は4,000名に上る。著書に『動画マーケティングの新常識 最強のYouTube活用術』

コンテンツ制作から広告周りまで一気貫通でできる

—— 御社の事業内容や強みを教えてください

株式会社BitStarは創業8年、従業員数160名ほどの規模の会社です。主な事業内容は、YouTubeやTikTok周りのクリエイター支援事業と、企業のソーシャルメディアの動画制作や運用を行うコンテンツ制作事業です。

まず、大きな強みはデータやテクノロジー関連に強いということです。BitStarが独自に開発した45万件以上のソーシャルメディアのアカウントのデータベースがあって、それをもとにクリエイターの発掘・育成や、企業とのマッチングの効率化を行っています。

2つめはコンテンツ制作、プロダクション、広告周りのソリューションまで一気通貫でできることです。

様々なジャンルやプラットフォームのインフルエンサーマーケティングやコンテンツ制作のノウハウを幅広く持っており、それぞれが業界内でもトップクラスの実績を誇っています。

もうひとつ挙げるとするならば、BitStarは創業期からエージェントやプラットフォーマーとして事業を展開してきたことから、クリエイターの支援・取引数が累計4,000名を超えていることです。

そのため、業界最大規模のインフルエンサーマーケティングのナレッジ(知見・情報)や、クリエイターのネットワークを持っています。

――社内では、デザイナー、ディレクターなど、どういう仕事をしている方が多いでしょうか

営業部隊が40名弱、コンテンツ制作が50名ほどです。あとはプロダクション関連(クリエイターマネージャー、D2Cブランドマネージャー、グッズ担当、スカウトチーム、育成チーム、ショート動画チームなど)が40名ほどいます。

それとエンジニア、デザイナー、ディレクターが10名ほど、コーポレートが20名弱ですね。

――それぞれの業務・組織で人材を募集していますか。新卒採用の場合、職種や仕事内容はどうなるでしょうか

さまざまなポジションを募集しています。新卒採用は、基本的にタイアップ広告営業、クリエイターマネージャー、コンテンツ制作アシスタントプロデューサーの3ポジションで募集をしていますが、その人の特性に応じて配属先・ポジションを決定するなどフレキシブルに対応しています。

仕事内容は、たとえば営業職の場合、インフルエンサーのタイアップ、YouTubeやTikTok周りでの直営業・代理店営業など販路別に分かれています。そこからゲーム、美容など領域別に細分化されます。

新商品開発の部署、営業企画、マーケティングの仕事もありますね。ディレクションといって、インフルエンサーマーケティングのなかでタイアップ企画が決まったあとの運用チームなどもあります。

東京・関西・福岡に支社がありますが、新卒採用の場合、配属先は東京がメインです。

こうなりたいという熱量重視

—— いろいろな業務や部署があるとのことですが、御社の社風・文化はあるでしょうか


私たちは熱量採用と呼んでいるのですが、こうしたい、こうなりたいという熱量、意思などからくる積極性を重視しています。

ただクリエイターコンテンツが好きという人もいれば、スタートアップの成長できる環境で働いてみたい、若手のうちから役職者についてキャリアアップしたいという人もいます。

ミッションに共感してくれた人もいれば、将来起業したいのでBitStarで勉強したい人もいます。さまざまな人がいますね。

――スキルや学歴、職歴を重視する企業も多いと思いますが、採用の際に熱量とスキルなどの条件面のバランスはどう取っていますか

熱量があるのは大前提で、熱量がないとそもそも採用しないという方針です。スキル面では、たとえば営業であれば広告代理店などでの経験がある人、コンテンツ制作だったら制作経験がある人を優先で採用することもあります。

新卒採用の場合は、職務経験がないので熱量ではかるしかないかなと思います。どれだけ企業について調べてきたか、その上で自分がなりたい姿とBitStarが取り組んでいることの延長線上でマッチするのかというベーシックな部分を見ます。

――熱量がある社員の方が多いことによって、社内の雰囲気はどのようになっているでしょうか

自律・責任・協調社風だと考えています。「こういうことをやりたい」という意見から新たなプロジェクトが生まれ、任せたり、部署横断で協調性を持ってプロジェクトを進めたりすることもあります。

BitStarにはいろんな事業がありますが、それぞれが独立しているしているわけではなくシナジー(事業間の相乗効果)があるので、それが横断プロジェクトにつながります。

――社内の横の繋がりを活性化させる取り組みなどありますか?

部活動は会社から活動費を支給していて、土日に部活に参加している人も多いです。フットサル部、アウトドア部、華道部、トレンド部などアウトドア派・インドア派はどちらもいます。部活でなくても、ゴルフ好きの人、コンテンツ制作をしている会社なのでアニメが好きという人など、いろんな属性の人が集まっています。

仕事のことは仕事で解決するしかない

—— これまでの人生のなかで、「乗り越えられたけど辛かった」というような逆境経験はあるでしょうか

学生の方からすると遠い話になるかもしれませんが、コロナ禍での資金調達ですね。スタートアップというのは、資金を調達して、その資金を使いながら売上を伸ばして、それでまた資金を調達して成長していきます。

ちょうどその資金調達のタイミングがコロナ禍の2020年3月に来て、4月から緊急事態宣言が出されたんですが、資金が入金される数日前にリードインベスター(ラウンドにおける最大の出資者)から「今回の出資はなかったことに」と言われました。

その結果、一時は翌月の給料が払えないかもしれないという状況になりました。コロナ禍で広告出稿が減り、業績も下がっていた時期だったので、これが1番の逆境といえます。

――どのように乗り越えたのでしょうか毎日ひたすら100~150人の投資家や事業会社の方にお会いして、ゼロから資金調達を行いました。

 

そんななかお会いしていた投資家や事業会社の方のなかから会社の成長可能性に賛同していただける方が出てきたり、1度離れた投資家の方も戻ってきてくださったりして、徐々に資金も積み上がっていきました。

内情はなかなかお話しできないことが多いのですが、結果から見ると、前回の資金調達のラウンドでは電通さん、丸井さん、セガさん、エンジェル投資家の方などそうそうたるメンバーで10億円くらい調達できたのですが、裏側はかなり大変でした。

その後は、従業員の頑張りやビジネスの構造転換などをして業績もV字回復しました。従業員の皆の頑張りや、信じてくれた投資家の方たちがいてくれたからこそ今があると思います。

――大変な時期はいろいろな不安もあったと思いますが、どのような心境で乗り越えたのでしょうか

従業員、クリエイター、クライアント、株主などステークホルダーの期待を背負っているということに尽きるかなと思います。デッドラインを超えてしまえば今まで積み上げてきたものがゼロになり、皆に期待してもらっていたことが台無しになってしまうので、それだけは何としてでも防がないといけないという責任感です。

前を向くしかないので、投資家の方へのアプローチ数を増やすとか、目の前のできることに集中して、仕事のことは仕事で解決するしかないというマインドでやっていました。落ち込んで夜飲み歩いていても仕方ないですし、不安やストレスを発散するために時間を使っても根本的な解決にはなりません。

逃げ場はなくて、向き合うしか解決策はありません。後ろを向いたらガケが広がっているので後ろを向くのは精神衛生上良くありません。目の前の現実を直視して、手数を増やす、向き合うということしかありません。

――問題に向き合うというマインドセットは昔からできていたのでしょうか

これはサッカーで身につきました。ゴールキーパーだったんですが、ゴールキーパーというのは減点主義というか、点を決められたらゴールキーパーに責任の一端があるんです。

味方がオウンゴールしてしまったときに、「自分のせいじゃない」というニュアンスのことをいって中学の部活の先生に怒られました。そもそもそこにボールがいかないようにするにはどうすれば良いのかと向き合って考えると、自分自身、成長する余地があります。

基本的には自責で考えるというか、自分でコントロールできるものに対してちゃんと目を向けて、そこに向き合ってやるしかないということを部活を通して学びました。

あとは理系なので、本質的な問題は何なのか、何を解決しないといけないのかとロジカルに物事に向かうというマインドセットが、研究などで身についています。

それと親の教育もあるのかなと思います。言い訳をするなということを昔から言われていました。社会人になる前にマインドセットはある程度固まっていましたね。

 

産業規模にインパクトを与えられるような会社にしたい

—— 株式会社BitStarが目指している方向性について教えてください

従来のTVの時代から新たなソーシャルメディアが登場したことで、新しいスターや新しいIP、最近だとD2Cなどのブランドも定義が変わってきているなかで、企業のマーケティング活動自体も変わり、そこに新しいコンテンツ産業が生まれてくる可能性を感じて株式会社BitStarを創業しました。

BitStarが取引をしているクリエイターは、トップ層はもちろん活躍していつつも、ミドルやロングテールのクリエイターに強いという特徴があります。

BitStarという社名には、インターネット発のスターという意味が込められています。「Bit」は直訳するとニッチなという意味なんですが、たとえばフォロワー1,000人という人でもファンからするとスターで、そんな小さな存在も応援していこうという意味合いがあります。

ロングテールのクリエイター層はここ5年ほどで10倍くらいに増えていて、規模でいうと50万登録以下の人で99.5%くらいを占める状態になっています。これだけ数が増えると活躍できない人も多くなってきます。

従来のエンタメ業界はスターじゃないと稼げないという世界でした。でも、データやテクノロジーをかけ合わせることで、ロングテールのクリエイターが活躍できる、マネタイズできる世界を作っていくことを目指しています。

BitStarは「100年後に名前が残る産業・文化をつくる」というミッションを掲げていますが、産業規模にインパクトを与えられるような会社にしていきたいと思っています。

――今の株式会社BitStarで経験できることはどのようなことでしょうか

BitStarで経験できることは3つあります。ひとつはエンタメ業界のなかで、BitStarは最先端なことに取り組んでいる会社なので、新しいことを今後やっていきたい人にとっては楽しめるんじゃないかなということです。

エンタメ企業のなかでも圧倒的な成長企業であるという自負があるので、自身を成長させられる環境にあるのではないかと思います。

ふたつめは、個人の裁量が大きいため自由度が高く、チャレンジできる環境があるので、自分で考えられる幅が広がることです。ある意味、整備されていない部分が多いということでもありますが、逆に自分でやれる余地が多分にあります。

3つめは、BitStarはスタートアップといっても、会社としてそこそこの規模感になってきていて、コンテンツ制作、プロダクション、広告ソリューションまで複数の事業のポートフォリオで運営しているので、ひとつの会社のなかでできる幅が広いことです。

たとえば、通常YouTubeチャンネルを自社で立ち上げるとなるとけっこうコストがかかるのですが、BitStarでは広告事業と連携することで初めからスポンサーをつけて始められるケースもあります。

プロダクション事業では、音楽的なアーティストをインフルエンサー発で輩出していきたいとしたら、音楽番組などコンテンツ制作事業とセットで始めることもできます。

このように事業部間で連携して、より大きなことを成し遂げられるという、ほかのスタートアップでは経験できないことができると思います。

部署移動も可能で、制作から営業に移ったり、営業からプロダクションに移ったりする人もいて柔軟に設計できるので、新卒の方でいろいろチャレンジしたいという思いがある人には適しているのではないかなと思います。

 

未来の結果で過去の評価は変えられる

—— 最後に学生に向けてメッセージをお願いします

ひとつは同じ志の仲間を学生時代に作りましょうということです。BitStarの創業メンバーは学生時代に一緒に事業をやっていたメンバーです。

そのときつながっていたほかのメンバーも、別で起業していたり投資家になったりしています。そういう昔つながっていた志が高い人たちが、追々つながってくるというのが、この10年間ぐらいで見えてきました。

こういう昔からのつながりはとても大切で、損得勘定を抜きにして話せる関係性が築ける人と接点を持っておくことが重要ではないかなと思います。

ふたつめは、未来の結果で過去の評価は変えられるということです。BitStarを始めた当初、YouTubeを見るのは10~20代前半くらいの人で、YouTuberも数万登録で規模が大きな方だったので、仲間集めにも苦戦しましたし、投資家にもあまりピンと来ないと言われていました。

「こういう風に時代が変わります」と説明しても「本当に?」とか「イケてないことをやってる」と言われていましたが、業績が上がってくると「先見の明があったね」と手の平を返されたりするものです。

こうやって過去の評価はいくらでも変えられます。年齢が上がると今までのスキルに限定されるかたちでプロフェッショナリズムを求められるようになるので、若いうちに恥を気にせず精一杯チャレンジしたほうがいいんじゃないかなと思います。

プライベートにおいても仕事においても、後になればなるほど過去の恥なんて全然関係ないなと思えるようになるので、今自分が思っている以上に評価や恥ずかしいという気持ちは捨てて、チャレンジしてほしいです。

――ここまでつき進めた理由は何でしょうか

偉大な先人たちがいたからです。いろんな経営者の書籍を読んだり、話を聞いたりして勇気づけられました。

波乱万丈なことなく順風満帆にいく人はいないので、先人の紆余曲折を見て「よく考えると解決できないことはないんだな」と思えると、過去の偉人も特別な人ではないなと思えます。

私は前職とまったく関連のないキャリアとしてBitStarを立ち上げましたが、ビズリーチの南さんやソフトバンクの孫さん、サイバーエージェントの藤田さんも、皆次を決めずに辞めて会社を始めています。

それを知っていたので、次を決めていなくてもどうにかなるという感覚がありました。ふわっと諦められるくらいだったら、その夢や目標は大したものではありません。本当にやりたいことは、研究して、周りにも相談しながら取り組めば、自信を持ってやれると思います。

 

株式会社BitStar(ビットスター)

設立 2014年7月10日
資本金 13億7,932万8,902円(資本準備金含む)
売上高 非公開
従業員数 139名
事業内容 ・クリエイター支援事業 ・コンテンツ制作事業
URL https://corp.bitstar.tokyo/ https://corp.bitstar.tokyo/career/ https://speakerdeck.com/bitstar/we-are-hiring
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