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【株式会社Satisfill 井上 進太郎】発想の転換で乗り切ったコロナ禍での挑戦!クリエイティビティとホスピタリティに特化した環境を作りたい

2022/05/12

Profile

井上 進太郎

株式会社Satisfill 代表取締役社長

学生時代、一休.comでアルバイトをしていた経験、じゃらんnetを立上げた現DEiBA Company 清水社長と出会い、ホテル業界の知見を深めるとともにこの分野の可能性に着目する。大学卒業後は株式会社マクロミルに入社し、データ分析・解析に携わる。その後、人材派遣など複数のビジネスを展開し、2018年1月に株式会社Satisfill を設立した。

同社は、宿泊施設運営及び不動産コンサルティングを行っている。インバウンド向けの長期滞在型レジデンシャルホテルをブランドモデルに掲げ、全国各地に事業を展開。低コストで宿泊できる民泊と、コストの高いスイートルームの中間の価格帯でサービスを提供している。現在は、ホテルフロント業務のIT化により、ホスピタリティあふれるホテルを目指し、躍進を遂げている。

そんな井上氏に、コロナ禍での逆境の乗り越え方と今後の展望について伺った。

レッドオーシャンのホテル業界で可能性を見出した、ニッチな戦略

—— まずは、事業内容や起業のきっかけについて教えてください。特に、他社との違いや主力事業についてお伺いできればと思います。

インバウンド向けのホテル運営が主力事業です。弊社は、シティーホテルとスイートルームの間の広さや価格帯がないことに着目し、事業を展開しています。

まず、ホテルのマーケットをわかりやすく解説すると、縦軸を料金が高い安い、横軸が広い狭いとした場合、一般的には狭くて安いのがカプセルホテル、狭くて中くらいのランクがビジネスホテル、狭くて高いのがシティホテル、ランクが低いのが民泊、広くて高いのがスイートルームという構図になっています。

学生時代に一休.comというホテル予約サイトでアルバイトをしていて、そのときこの構図の中にぽっかり空いているマーケットがあると実感しました。その後、日本を代表する旅行予約サイトの運営責任者と話す機会があり、シティホテルとスイートルームの間にマーケットがあることを確信したんです。

例えば、インバウンド外国人が10泊、15泊するとき、民泊は選択したくないけれど、スイートルームは費用面で難しいと思う方もいるでしょう。確かに、スイートルームは、10泊すると100万円を超えることもあるので、簡単には選択できません。そこで弊社は、料金や広さに満足できるサービスを提供しようと考えました。

「僕は社員に恵まれている、ひとりじゃなかったから乗り越えられた」

 ――コロナ禍で苦しかったことや困難を乗り越えたエピソードはありますか。

コロナ禍は間違いなく苦しかったです。弊社はもともとインバウンド外国人をターゲットにしていたので、早くから危機を察していました。案の定宿泊客が減り、月に数千万円ぐらいは赤字でした。

――過酷な状況の中、メンタルをどのようにして保っていたのですか。

頼れる社員がいたことが大きいです。コロナ禍で頑張ってくれた社員にお礼がしたくてボーナスを振り込んだとき、ボーナスを会社の口座に振り込み返してきた社員がいたんです。「赤字なのにボーナスはいらないです」と。僕は社員に恵まれている、ひとりじゃなかったというのがコロナ禍を乗り越えられた大きな要因だと思っています。

――社員からの人望が厚いとお見受けします。何か気をつけていることはあるのですか。

創業して4年の会社で働いてくれる社員に対しては、感謝しかありません。入社する決断をしてくれたことと、自分の我慢を天秤にかけたら、おのずと答えが見えてきます。だから、社員を信頼し任せています。任せるからには、あまり口出ししないようにしているんです。

――ところで、コロナに感染した患者さんの宿泊支援はされていたのですか。

感染者の宿泊先としては稼働していませんでした。その代わり、ホテルの客室をワクチン接種のコールセンターにして、1日約500ブースが常時動いている状態を作ったんです。それでコロナ禍をしのぎました。

ただコロナが蔓延した年は、銀行からの借入金を使ってホテル事業を回していたので、新規事業は始めませんでした。コロナ1年目は自転車操業のようなものです。でも、それで覚悟が決まりました。もう1年この状況が続いたら潰れてしまう。少しずつ人流が戻ってきたので新規事業を始めました。

 ――ホテル事業をたたもうという発想はなかったんですか。

たたもうという発想はなかったです。むしろ、条件が良ければホテル事業を拡大していました。実際にコロナ禍で3棟オープンしているんです。世の中のホテル事業が縮小すると、不動産のオーナーにも連鎖し、経営が苦しくなります。だから、僕らがコールセンターにして家賃を支払い、経済の循環を生み出しました。

攻めの姿勢は普段でも変わりません。例えば、10億円で物件を購入し、こうすれば12億で売れるというように、社員がストーリーを描いて提案してきます。その後、僕が銀行に行って交渉するという形です。

「省人化により社員がホスピタリティに特化できるようにしていきたい」

—— 今後の事業の展望はありますか。

今後の展望としては、「ホテルの運営」、「不動産の開発」、「人材事業」の3つについて考えています。この3つがすべて目標を達成すると、ホテル事業は拡大すると思っています。

まず、ホテルの運営に関しては、他のホテルより省人化のオペレーションにしたいと思っています。鍵の受け渡しはiPadにしてQRコードで完結するようにすることで人を省き、社員がホスピタリティに特化できるようにしていきたいです。

2つ目の不動産開発については、多くのホテル建設を進めてきましたが、保育園や病院、オフィスなど、非日常ではなく、日常に関わる売上のポートフォリオを増やしていきたいと思っています。

3つ目の人材事業に関しては、空き室を稼働させてコールセンターにするなどです。現在、コロナワクチンのコールセンターの仕事もしていますが、今後はGoToや地方創生SDGs系のコールセンターの案件に対応するなど、多方面で案件を増やしていきたいです。

――事業展開を進めるなかで、採用はどのように考えていますか。

採用は強化していきたいです。そして、ホテルのオペレーションのルールを属人的ではなく、IT化していきたい。人に任せるのではなく、社員がもっとクリエイティブな仕事をした方が、採用力に繋がると思っています。

仕事内容が魅力的になればなるほど、採用力は高まるのではないでしょうか。社員がクリエイティビティとホスピタリティに特化できる環境を作るために、フロントでのお金や鍵のやり取り、タオル交換やアメニティの自動販売機対応など、社員が考えながら対応することで創造力が発揮されます。

ある社員は、お気に入りの飲食店と提携してハンバーガープランを作ったり、サラリーマンが出張時に使えるお得なプランを作ったりしました。サラリーマンは、宿泊費が経費になることがありますよね。だから、経費で支払う1万円以外にフグの食事券3,000円分がもらえるプランを考えたのです。

他にも、近隣で建設中のマンション工事の職人の方に営業をかけ、工事日程を調査し長期の工事ならホテルの宿泊を勧めるなどもしています。ホテルは待っている仕事が多いですが、社員は自分なりに企画を考えたり、営業へ出向いたりしながらチャレンジしています。

このように、ただのホテル会社とは違い、ここではホスピタリティやクリエイティビティな仕事ができると思うと、採用も活発になりそうです。そのために、アフターコロナに向けて運営を整えていく必要があると思っています。

僕が20代に起業して走り続けてきたとき、銀行の支店長から言われた印象的な言葉があります。「井上君、今25歳で70歳くらいまで働けるとして、45年働けるから年間1,000万円返すとしたら、4億5,000万円ぐらい貸しても大丈夫だね」と言われたんです。

例えば、20代で4億5,000万円あったら不動産も買えます。だから、若くて年上から好かれるというのは強烈な武器になる。僕がやってもらって良かったことは、若い人にも経験させてあげたいんです。

 

 

失敗を恐れない!「勝率が51%以上あれば何でも挑戦してみること」

—— 最後に若者へのメッセージをお願いします。

勝率が51%以上あったら何でも挑戦してみることです。みんな勝率を気にして80%あれば成功すると思いながらも、20%の失敗を恐れて行動しない。とはいえ、50%以下だと負ける確率が高いからやらない方がいいとは思います。

ただ、こう言えるのもある程度、基盤事業があるからなのかもしれません。最初にコールセンターを始めたときは、仕事を請け負ってこなすだけだったので、失敗する確率がほぼゼロに近かったんです。だから始められたのもあります。

成功すればするほど、90%成功するものは行動するし、80%、70%、51%と成功確率が下がってもチャレンジできる。極論を言うと、51%の勝率があれば、とりあえず行動したら良いと僕は思います。考えるよりまず動く、若いうちに挑戦することは何より大切なことではないでしょうか。

株式会社Satisfill

設立
資本金 3,000万円
売上高 非公開
従業員数 95名(2021年7月現在)
事業内容
URL
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