コロナ禍の影響を受けて売り上げが約40%減になった
—— 貴社の事業内容をお伺いできますか。
ブランド品の卸売り事業を中心とした会社です。輸入した時計・バック・服・靴・ジュエリーなどを、国内の小売店さんやブランドショップへ、または一部をアジアに輸出をしています。でも元々は高級時計の卸売り事業から始まった会社でした。
会社の理念は「ビジネスを通じて、みんなで幸せになりましょう」ということを掲げています。「お客様の要望に答えられる限り答えていこう」と営業をやっていたら、高級時計だけの取り扱いだったのが、服やバックなど他の取扱商品が増えていって、今の業態へと至ったのです。
ーー逆境体験をお伺いできますか。
一番厳しかった逆境体験は、2年前に始まったコロナ禍です。弊社は8年間で売上が約30倍伸びています。そのペースで成長していった会社なので、ビジネスを拡大していくことに一生懸命に取り組んでいました。ですが、ビジネスの基盤を固めることが全然できておらず、コロナ禍の影響を受けて数十億円あった売り上げが約40%減になりました。
さすがにここまでの経験をしたことがなく、初めて「このまま会社が潰れるのか……?」といった不安が頭をよぎりました。会社を維持するために、様々な経費を削減しないといけません。申し訳なくも従業員に「給料を下げさせて欲しい」という話もしました。当然、私の給料はゼロです。とにかく、できることはすべてやりました。
コロナ禍で最初の緊急事態宣言の頃は、いつまでこの状況が続くかわからず大変でしたね。弊社の取引先の小売店さんがすべて休業になってしまい、営業が全くできない状態になったのです。そのようなゴールが分からない状況だったからこそ、できることを全部やりました。
コロナ禍をキッカケに会社経営を強固なものに変えることができた
売上が40%下がると業務も減るため、社員が暇になってしまいます。その時は、社員のみんなに休んでもらっていました。弊社のオフィスは1つのフロアで約150坪ありますが、そこに2人しか出勤してないこともありましたね。さすがに気持ちが暗くなりましたが、逆境を経験をしたことで、経費に対しての考え方を変えることができました。
コロナ禍が収束してきた頃には経営も落ち着いてきて、新事業を開始することもできました。コロナ禍で経費に対する考え方を変えたことで、新事業に対しても「とりあえずお金を掛ける」という考え方から、「きちんと精査して始める」というように、やり方が変わっていきました。そしてつい最近、コロナ禍以前の売り上げを超えるV字回復を果たしました。
コロナ禍でとても大変な思いをしましたが、会社経営を強固なものに変えることができたのです。売り上げのV字回復も達成できたので、今となってはコロナ禍の辛い経験を活かせて良かったです。
ーーコロナ禍の際、従業員の方から不安や心配の声は上がらなかったのでしょうか。
不安や心配の声は実際ありました。そのため、まめに社員全員に向けてメッセージを送るようにしていました。例えば、会社の内部留保で資金が〇〇円ほどあること、でも数か月で底を尽きてしまい銀行が資金を貸してくれなくなる可能性があることそうならないためにも毎月経費を減らさないといけないことなどの、会社の経営状況を包み隠さず話しました。「みんなで乗り越えていこう」という内容で、社内に向けて何回も発信していましたね。
コロナ禍の影響で会社都合で社員を解雇することはなかった
—— コロナ禍で業績不振になった時の採用はどうされたのでしょうか。
「このままでいいのか」という危機感を常に持っています。たとえ景気が良くて業績がいい時でもです。そのため、弊社では変化に対応できる人材をどんな時でも求めています。コロナ禍でも、その方針は変わりません。コロナ禍の影響で1年だけは新卒採用を止めましたが、それは採用活動の時期と緊急事態宣言が重なっていたためです。
コロナ禍の影響で会社都合で社員を解雇することはありませんでした。自主退職の方が1名だけいましたが、その方を除いた社員全員が会社に留まりました。年に2,3回はマンツーマン面談を社員全員としているので、コロナ禍で不安な時期にも関わらず社員が会社を去らなかったのは、コミュニケーションの積み重ねの結果かもしれません。
また、社内の座席がフリーアドレスで普段から社長の席も決まっておらず、社員とは距離が近いですね。コロナ禍で減ってしまいましたが、コロナ禍になる前では社内イベントも多かったです。
常に危機感を持つことが大切
—— 逆境経験からの教訓はございますでしょうか。
先ほどお話した通り、常に危機感を持つことが大切です。コロナ禍となったことで、現状に満足することなく貪欲に成長する姿勢が、より必要と感じています。どのような状況に陥ってもすぐにピボットできるような企業体制にしておくことや、そのようなマインドや姿勢でいることが大事です。
例えば、コロナ禍ではない天変地異レベルの外的要因で、ビジネスが邪魔されることは今後も起こりうるでしょう。その時にじっと耐えるよりも、「過去に乗り越えられたから今度も工夫してやっていこう」という気構えでいられることが必要です。変化に対して強い企業でありたいですし、そのためにも変化に強い人材や若い人材をどんどん採用していきたいです。
優位性を生かしてリユース商品の事業を伸ばしたい
—— 将来の展望をお伺いできますか。
次はリユース商品の事業を伸ばしていきたいです。弊社は新品の商品を中心に扱っていましたが、5年ほど前からリユース商品も取り扱うようになりました。実はブランドの商社で新品とリユース商品の両方を取り扱ってる会社は、日本ではほとんどありません。新品だけを扱ってる会社、もしくはリユース商品だけを扱っている会社に偏っています。
また、同じブランドの商品でも、新品とリユース商品ではマーケットが全然違うのです。新品は大手チェーン店やブランドショップで取り扱われていますが、リユース商品はブランドの専門店やリユース商品だけを扱った会社の市場になります。
それぞれの商品の市場が違っている中で、両方の市場で数億円規模のビジネスをしてる会社は、おそらく弊社だけではないでしょうか。そこで、新品しか取り扱ってない会社に、弊社からリユース商品を紹介するのです。弊社はすでにリユース商品の領域で実績があります。その優位性を生かしてリユース商品の事業を伸ばす、という展望ですね。
ーー現時点で抱えている課題やギャップはありますか。
課題やギャップはたくさんあります。例えば、エンジニアの採用が追い付いていません。採用活動をしていましたが、目標の人数まで1名足りませんでした。目的は、属人的な要素を減らして、自社ECサイトの運営を効率化するためです。ゼロイチでシステム開発するよりも、今ある既存のものを効率化できる人材を求めていますね。
お金が無くても真面目に頑張っていれば、応援してくれる人が必ず現れる
—— 最後に若者へのメッセージをお願いします。
私の学歴は高卒です。若い頃にキャバクラのボーイをやったこともあります。当時は本当に何のスキルもありませんでした。でも、真面目に一生懸命がんばっていれば、必ず応援してくれる人が現れます。高い目標を掲げて夢を持ち、泥臭くても情熱を持って真面目に働いていれば、その姿勢は周囲に伝わります。
そして危機感を持ちましょう。ある程度の年数を働くと成長ができます。でも、たとえ仕事がうまくいっていても「このままでいいのか」と自問自答するのです。危機感を持って頑張り続ければ、恐らくみなさん成功するのではないでしょうか。
会社を始めたころ、本当にお金がありませんでした。でも、真面目に仕入れをやっていたから、たくさんの人が応援してくれました。お金が無くても、真面目に頑張っていれば応援してくれる人が現れます。みなさんも、ぜひ若い頃から真面目に頑張ってください。そうすれば、きっと成功できると思います!