MiraError(ミラエラ)

【株式会社 アーカイブ 小川原 謙一】『常識を疑え!』 ‐「これが当たり前」「できるわけない」で自分の未来を狭めるな‐

2022/04/28

Profile

小川原 謙一

株式会社 アーカイブ 代表取締役

2005年設立、創業18年目を迎えた株式会社アーカイブはシステム開発、SES(システムエンジニアリングサービス)を事業として行っている会社。

小川原社長の前職は同様のSESの会社の社員。部下の派遣先での理不尽な職場環境改善及び社員を大切にすることを自社社長に談判するが利益優先で聞き入れてもらえなかった。そこで一念発起して退社。10日後には自身の理想を実現するべく株式会社アーカイブを設立した。

“会社の一番の財産”である“社員”のために、力の限りを尽くして邁進する小川原社長。社員満足度100%への挑戦」を永遠のテーマとし、離職率0%を10年続けたアーカイブ社員とその家族のあるべき姿、小川原社長が考える会社のあり方、理念をこれから就職される若者たち、起業を志す若い方たちへの熱いメッセージとして伺った。

前職での自身の苦い経験と社員のための会社作りを目指して

—— 起業のきっかけ、自分で起こした会社への思いをお聞かせください

世の中から“ブラック”と呼ばれる企業を無くしたいと思っています。

アーカイブを立ち上げる前に務めていたSESの会社はもともと離職率が30%と高かったのですが、私が社員30人を率いる立場になってからは退職者がなく、離職率を0%にしました。しかし、あるお取引先が深夜一時から打ち合わせを行うなど待遇面に問題が多く、そこに派遣していた社員が辞めたいと申し出て来ました。

社長にその事を報告し、取引先へ待遇改善の申し入れをすべきと進言したのですが、社長は目先の利益を優先し、取引先ではなく社員に我慢させることを選択しました。その結果、社員は辞表を提出し、会社を去りました。社員にもそれぞれの人生があるのに、それを会社の都合で変えてしまった苦い経験でした。

システム開発会社にとって一番の財産は社員の頭脳です。目に見える結果はソースコードや設計書かもしれませんが、それらは社員がいなければ作ることができませんし、作った社員が在籍していなければ修正することが難しくなります。だからこそ社員を大切にするべきで、社員のための会社にしたいと考えたのですが、残念ながら社長の心には響かず「そんな会社を経営できるわけがない」と言われました。

それならば自分で作ろうと、会社を辞めて、10日後にアーカイブを立ち上げたのです。

起業時の人との出会い

—— お一人でスタートされたのですか

一人での起業です。『社員のための会社作り』を掲げて起業し、すぐに社員の応募があると思っていたのですが甘かったです。最初に求人広告を出したときは3人応募があって、1人を採用しました。この調子でいけるかと思いきや、次は応募ゼロでした。求人広告にかかる費用を考えると、本当にやっていけるのか怖くなりましたが、このあと良い出会いに助けられました。

まず、ある求人会社の営業担当者が「アーカイブさんなら大丈夫ですよ、当社で広告を出しましょうよ」と提案してくださいました。何を根拠に大丈夫と言ってくれたのかは分からなかったですし、私も確信はなかったのですが、ひとまず信じて求人を続けてみようと、生活金融公庫で資金を借りるため事業計画書を作りました。

また、弊社が入居するシェアオフィス『ちよだプラットフォームスクウェア』の受付の男性にたまたま声をかけられ、事業計画書を見せたところ「ここに入居している中小企業診断士が無料相談会やっていますよ」と教えていただきました。早速、中小企業診断士の先生に相談し、数カ所の指摘をもらって手直したものを生活金融公庫に提出し、トントン拍子で事業用資金の融資を受けることが出来たのです。

その時に出した広告は求人会社の社内賞をとるような優秀な広告で6人の応募があり、2人が入社しました。それから順調に採用が続いています。不思議な人との出会いです。

ーー経営の軸は『社員の幸せを考える』ということでしょうか

会社経営で大切なことは『社員を幸せにする』を目的とすること

社員のためになることはやる、社員のためにならないことはやらない

そして、それによって生まれる経営の好循環

その姿勢を貫いてきた結果として経営基盤が安定化し、M&Aの話をいただくこともありますが、会社は経営者だけのものではありません。弊社は社員の幸せを一番に考えて経営していますので、事業売却は考えていません。

また、弊社社員の7~8割は派遣先から引き抜きの声をかけられていて、私は「アーカイブより条件が良い会社があったら転職してもいいよ」と言っています。なかには現状の年収を上回る金額を提示された社員もいましたが、「転職したら自分がやりたい仕事だけでなく、与えられたやりたくない仕事もしなければならないから」と、その話は断ったようです。

現在、弊社の社員数は22名です。会社を維持するために必要な費用を残したうえで、それぞれの社員の努力に応じて給与が増えるようにルールを作りました。会社の売上げや利益もオープンにしているので、ちょっとした計算をすれば、社長である私の給与も分かります。社員がやりがいを感じられる仕組みにしたかったからです。

また、社員が幸せになるには社員の家族も幸せでないといけないので、社員の家族にクリスマスプレゼントを贈っています。ご家族にとっても「アーカイブ」と「小川原」の名前を覚えていただくことが安心感につながるでしょうし、アーカイブという会社を好きになってもらいたいです。

社員は仕事で結果を出せば自分の給与が上がるわけですから、誠意をもって仕事に臨みます。それがお客様からの評価につながって、会社の売上げや利益が増えれば、それがまた社員と社員の家族に還元されて、経営に好循環が生まれます。社員も、社員の家族も、お取引先も、ステークホルダーすべてにとって、アーカイブを自慢できる会社にしていきたいです。

原点は『人』であるということ

—— 将来的に事業の拡大や新たな事業展開を考えていますか

社員数は32名までと決めています。もともと30名前後と思ってはいたんですが、数学が好きであり、自身がシステム屋ということもあって2進数である32や完全数である28って数字が好きなんです。このどちらかまでと決めています。

(完全数:自分自身を除く正の約数の和に等しくなる自然数のこと)

32名まで増えた後のことは今のところは考えていません。いまは社員とその家族の名前や誕生日をすべて覚えています。名前や誕生日を知るということは社員に興味を持つということですから、社員が増えて全員の名前や誕生日を覚えられなくなることに危機感を抱いています。社員に興味が無くなってしまえば、それは離職につながってしまうでしょう。

その意味で社員数の上限は30人くらいだと思っています。万が一、大勢の社員を雇用するような事業を始めるならば、SES事業は人に任せるくらいの覚悟でいます。

 

ーー社長の思いを社員の皆さんに周知させるための課題はありますか

 

もともと社員はお客様先に行っているので日常的な交流がないのですが、数年前からのコロナ禍で社員との交流、社員間のコミュニケーションが減っていると感じています。接点が減ると自身がアーカイブの社員だという意識が薄らぎかねないので、いかにして社内のコミュニケーションを促進し、帰属意識を高めていけるかが課題だと思っています。

これまでのように飲み会を定期開催することは難しく、土曜日にランチ会を開いていますが、土曜日はご家族が優先ですから、参加が難しい社員も多いです。そこで大学生のアルバイトに活躍してもらい、社内広報ブログでそれぞれの社員がどんな風に過ごしているのか、社員間のコミュニケーションを促す努力をしています。

小川原社長の会社経営の原点

—— 昨今の大学生のアルバイト事情を踏まえて、学生の皆さんに伝えたいこと(小川原社長自らご用意いただいたお言葉です)

一昔前までは学生でも多種多様なアルバイトを経験することが出来ました。それが現在では派遣という枠組みが出来たために、学生アルバイトの募集の中心は塾講師や家庭教師、飲食業などに限られ、学生時代にいろんな業界や仕事を経験する機会が失われていることを残念に思っています。

私は学生時代に小さな出版社でアルバイトをし、梱包・発送を担っていました。作業内容は簡単で、半月ほどで覚えたので、社長に新しい仕事をしたいとお願いしました。そして任された仕事もできるようになったので、また新しい仕事をお願いし、それを繰り返した結果、社内のほとんどの業務をこなせるようになったのです。

そしてその会社でははじめて朝礼が行われ、社長が学生アルバイトの私をマネージャーにすると発表しました。私や社員は当然驚きましたが、社長は「会社の役に立つ人間が上司になればいい、社員が悔しいと思ったら、アルバイトよりも仕事ができるようになればいい」と言ったのです。アルバイトが社員の上司になることも、社長になると独自のルールを作ることが出来ることにも驚きましたし、その仕事を通して得た経験はいまも私の中で生きています。

だから、私は学生のみなさんにいろいろな経験をしてもらいたいと思っていますし、私のような考えを持つ会社が少しずつ増えれば、世の中はもっと良くなっていくのではないかと思っています。

株式会社 アーカイブ

設立 2005年4月1日
資本金 3300万円
売上高 非公開
従業員数 非公開
事業内容 1.システム開発 2.Step by Step Coding事業
URL http://archive-gp.com/
この記事が気に入ったら
いいね ! しよう