学生時代に8日間の山籠もりをすることで、事業作りに興味があることに気づいた
—— 起業当時のお話をお伺いできますか
東京の歯科大学に通学し、歯科技工士の免許を取得したとき「将来どうしたらいいのか」と悩んでいた時期がありました。そのまま大学院に進学しても2年しかないので、8日間、山籠もりをしました。
山籠もり中は読書をしながら、「自分が本当は何をやりたいのか」「自分の強みは何なのか」と内省しました。その結果、自分が事業作りに興味を持っていることに気づき、インターンを経験したり事業立ち上げのプロセスを学んだりして、1年後に起業しました。
周囲の価値観に合わせていたら時流を予想してアクションを起こせない
—— 起業まで行動を続けられた理由をお伺いできますか。
ポジティブな感情で行動ができたエピソードと、ネガティブな感情が後押しをしたエピソードがあります。歯科技工士業界での離職率が70%を超えていることに問題を感じました。当時、社会的地位の向上を目指すべきだと主張する人も多くいました。
まずは業界の構造を把握したいと考え、大学院で医療政策に進学して広い視野で歯科医療について学びました。そこで、3年以内に歯科業界で大きな変化が起きることを確信し、好奇心の一方で行動したい気持ちを抑えきれず、「歯科業界に携わって、旋風を巻き起こしたい」と強く感じました。
もし周囲の価値観に合わせていたら、時流を予想したアクションを起こせていなかったでしょう。山籠もりをして自分のやりたいことを明確化していたこともあり、起業を決意できました。同時に、自分が決めたことを頓挫させてはいけないと強く思いました。
起業を決めてからは、事業立ち上げに集中していました。周囲に何を言われても関係ありません。おそらく、山籠もりをしていなかったら周囲の意見に流されていたでしょう。人生の指針のようなものが決まってからは、周囲の意見に流されないようになりました。ここまでが、ポジティブな感情で行動ができたエピソードです。
ネガティブな感情が後押しをしたエピソードとして、コンプレックスが行動力の起爆剤になったことがありました。歯科医師の学科の編入試験に落ちたことです。今思えば、あまりその先を深く考えず試験に合格することを目標としていたので、もし試験に合格しても満足できていなかったでしょう。目標を達成した先に自分のやりたいことが必要だと自覚できてよかったです。
「20代では『リスクを負わないこと』がリスク」だと考えて起業した
—— 起業することに対して周囲から反対されましたか。
とても反対されましたし、自分でも悩んでいた時期はありました。在学中に事業の立ち上げで4回ほど失敗を経験して、社会人経験を積んだ方が良いかもしれないと考えました。そのため、大手企業から内定をいただいたところまで就職活動をしていました。
親からも、人脈を作ることができて社会人経験も積めるという理由で、就職を勧められました。私もとても悩んでいましたが、市場のニーズとして歯科矯正を求められる時代が間違いなく来る確信があったことが、就職をせずに起業一本に絞る決め手になりました。
事業の失敗も経験しましたが、起業に対する怖さは無かったです。なぜなら、「20代では
『リスクを負わないこと』がリスク」だと考えているからです。20代での起業なら、失敗してもあまり影響はないと考え、挑戦することを心に決めていました。
ーー事業の立ち上げ以外では、どのような学生生活をされていましたか。
色々なサークルに入ったり友人と食事に行ったりと、ごく普通の女子大生の生活をしていました。他には、視野を広げるために始めた塾講師のアルバイトにのめり込んで、800校中1位の業績だったこともありました。今では、事業立ち上げにおいても、のめり込む重要性を感じています。
どんな失敗をした時も、事実を冷静に受け止めて判断や検証をする
—— 起業後の失敗談がありましたらお伺いできますか。
いろいろな失敗を経験していきました。人事面では、今でこそ頼りになるメンバーが社内にいますが、辞めていってしまった者もいます。マネジメント面では、資金が底を尽きそうになって会社を潰しかけたこともあります。
株式投資型クラウドファンディングに挑戦して、支援金が集まらなかったこともあります。社内全体が「市場に受け入れられなかった」と深く落ち込み、「この先、うまくやっていけるのかな……」と、私も危機感を覚えましたが、そこからまた立て直しました。どんな失敗をした時も、事実を冷静に受け止めて判断や検証をするようにしています。
井の中の蛙にならずに広い視野を持って、さらに高みを目指す
—— 失敗から得られた教訓がありましたらお伺いできますか。
当社の事業に価値があることには疑いの余地はありません。しかし、株式投資型クラウドファンディングで失敗した経験から、事業の価値が相手に伝わっているかどうかを、もっと考える必要があることを学びました。ただのマウスピース矯正事業じゃないことを、もっと伝えられるようにしていきたいです。
私自身、まだまだ成長したいと感じているところはたくさんあります。例えば、事業にのめり込んでいると、「自分たちのやってることは正しい」「これは世に受け入れられるだろう」と思い込んでしまいがちです。しかし、井の中の蛙にならずに、広い視野を持って、さらに高みを目指したいです。
ーー御社の求める理想の人材をお伺いできますか
この業界の課題を解決したい、予防ヘルスケアの成長渦の中で事業を大きく成長させるということに人生をかけてトライしてみたい、最高のサービスづくりに携わりたいと思っている人はぜひ、と思います。当社には、歯科医療業界・他業界問わず思いを持った優秀なメンバーがおります。
本能に従っていれば、夢中になれるものがきっと見つかる
—— 最後に起業したい学生や若者へのメッセージをお願いします。
どんな小さいことでもいいので、始めてみることです。「これは他人がやっていないこと」と感じられる、世間よりも半歩先のことに挑戦しましょう。もし自分の強みがわからないときは、のめり込む経験をすると気づきを得られるのでオススメです。将来、何をしたらいいかわからない人は、まだ何をすべきかが分かってないだけなのです。
のめり込む経験をするときは、仮の目標でもいいので、目標を設定して頑張りましょう。何をすべきか分からず止まってしまっている時間が、一番もったいないからです。本能に従っていれば、夢中になれるものがきっと見つかります。大学は高校と比べて生活に制約が少ないので、自分が少しでも興味があることに身を置きましょう。ぜひ頑張ってください!