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【株式会社OPSION 深野 崇】「今自分にできる最大のチャレンジを」失敗を恐れず実現させる覚悟の大切さ

2022/04/07

Profile

深野 崇

株式会社OPSION 代表取締役

夜間高校を中退後、大検を取得して大学に進学した。大学在学中に公認会計士の資格を取得し、監査法人トーマツに入社。その後退職して2019年に大学時代の友人3人と株式会社OPSIONを立ち上げ、代表取締役に就任した。

同社は起業後、テレワーク事業をスタートさせる。チャットツール、Web会議ツールに続く、第三のテレワークツールとしてバーチャル上にオフィス空間を創り、社員同士が交流できるクラウドオフィス「RISA」をリリースした。リリース当初苦戦したものの、テレワーク導入企業の増加とともに需要が拡大。2020年にはクラウドソーシングプラットフォームを提供する「クラウドワークス」との資本業務提携を発表し、IT業界やベンチャー企業だけでなく、大手企業からの注目も集めている。

そんな深野氏に実現したい夢や起業にいたるまでの経緯、挫折から立ち直ることができた理由について話を伺った。

「Work as play(仕事をゲーム化する)」

—— まずは御社の事業についてお伺いしたいと思います。

弊社の事業内容としては、メタバースオフィス「RISA」というものがあります。バーチャル空間上にオフィスを創り、社員がそれぞれのアバターで出勤し、そこで実際のオフィスのようにコミュニケーションを取ったり、仕事を進めたりできるようなサービスを開発しています。他社との違いは、弊社が掲げている「Work as play(仕事をゲーム化する)」ということを実現したいと思っている点ですね。仕事は生活するためのもの、義務でやるものという認識が日本では強いと思っていて、人生の大半の時間を費やす仕事があまりポジティブに受け取られていないという現状は「もったいない」と感じています。一方で、ゲームは楽しいものですよね。そこでの体験を仕事に応用することによって、仕事をもっとゲームのように熱狂できるようなものにしていけるのではないか、という思いから、実現に向けてサービス(RISA)を提供している形です。

――ほかにもさまざまなツールがたくさんある中で、御社が一歩飛び抜けることができた理由はどのような点だと考えられていますか。

 

先ほどの「Work as play(仕事をゲーム化する)」という理念につながる話になりますが、弊社は楽しむことやエンタメ要素を重視しています。一方で、他社ツールはBtoB向けツールで「業務効率向上」や「生産性向上」に寄っているものが多いなという印象です。もちろん、弊社でも最低限必要な部分ではあると考えながら、そのうえでエンタメ要素を重視しています。たとえば、アバターで手を振ったり拍手をする動作ができたりするような、そういったサービス提供のやり方をしているのは、おそらく国内では弊社しかないと思います。

ツールに対して生産性向上や業務効率向上を求めるニーズがある中で、それは「結果」であると考えています。結果的に生産性や業務効率向上が実現できるようになるためには、利便性の高い機能や自動化だけでなく、本質的なアプローチが必要になります。利便性の高い機能を導入したとしても、働いている人が楽しく働けなければ機能を導入した効果が発揮されにくくなる。働いている人が自ら前向きに業務に取り組むということが、一番の生産性、業務効率向上につながる方法だと思っていて、働く人が使いたくなるサービスを提供したいと考えています。

――御社のサービス利用に適した企業の規模などはありますか。

弊社のサービス利用者は、規模や業種に関してはそれほど偏りはありません。偏りがあるとすれば、業務の性質の部分ですね。たとえば、営業のようなお客様と接する機会が多い部署などは「すぐ返事や確認が必要」というような、突発的な会話やコミュニケーションが発生しやすく、そういったところには弊社のサービスは刺さりやすい傾向にあります。

「定例コミュニケーションだけで十分」というところよりも、日常的に密な会話をする機会が多いところの方が「RISA」の利用に適していますね。たとえば、アバターで近づいていって話しかけることもできますし、話しかけられない状況のときはステータスとしてアバターが電話中の姿になっているので一目で判断できます。取り込み中のときは、パソコンで作業していたり、無音室であれば外部の音をシャットアウトすることも可能です。アバターは現在100種類近くありますが、今後は自分でデザインできるようにしていこうと考えています。

「RISA」は一度ストップしたサービスだった

—— 創業から現在にいたるまで、失敗したことや辛かったご経験などはありますか。

そうですね。もっとも大変だったのは、2019年1月に会社を立ち上げた当時、テレワークも浸透しておらず契約が取れない、続かない状況に陥ったことですね。結果的に一度、2019年の終わりにサービスをストップさせました。実は「RISA」は一度終了したサービスだったんです。当時採用していた人にも退職してもらい、次にどのような事業をやっていくか考えていたんですが、残っていたメンバーとも意見が衝突して最終的に私ひとりになりました。それがちょうどコロナウイルスがテレビのニュースになりはじめた、2020年のはじめ頃でしたね。この頃が一番つらかったです。

――そこからもう一度サービスを復活させ、立ち直ることができた理由はなんですか。

「必ず成功させる」と決めているからだと思います。私が実現したいのは、現在では「Work as play」というコンセプトを出していますが、もっと大きな話でいうと「人々を現実を超えた仮想世界に移住させたい」ということなんです。当然技術的にも今は実現できませんし、私が死ぬまでに実現できるかどうかもわからないのですが、実現に向けて覚悟を決めているので「やめよう」とはなりませんね。一度サービスが終了してひとりになったときも諦めてはいませんでしたが、だからこそつらい、という状況で、寝ている時に不安で飛び起きることもありました。

理不尽な現状を新たなアプローチ方法で解決したい

私自身が「人々を現実を超えた仮想世界に移住させたい」と思うようになったのは、中学生~高校生の頃でした。母子家庭で母も多忙な中、ギリギリの生活をしていたので「友だちが買ってもらえるものを買ってもらえない」という経験もありました。それが、たとえばなにか自分が悪いことをした結果で陥った境遇なら納得できても、生まれた場所によって差ができるということをとても理不尽に感じたんです。「こんな世の中はおかしい」と思っていて、現状を変えるにはどうすれば良いんだろうと思ったのが中学生の頃でした。

そこからさまざまなことを考える中で、解決する方法はふたつあると感じました。「今ある課題を解決していく」というアプローチと「まったく異なる課題のない新しい世界をつくる」という手段ですね。ほとんどの企業が前者の方法で仕事や活動をする中で、私自身は後者に賭けてみようと決めて、26歳で起業にいたりました。実は、高校を中退していまして、大検を取って第一志望校に入るためにたくさん勉強したのに受からなかったんです。別のなにかの試験でその悔しさを晴らそうとして、大学在学中に難関と呼ばれる公認会計士の資格を取得しました。卒業後は会計士として新卒で2年ほど働いていましたが、何も決めず何も準備せず起業するために退職しました。そのとき、資金や技術的なことのできる、できないを取り払って「なんでも実現できるならなにをやりたいか」を考えたときに出てきたアイデアが「仮想空間」でした。

――資金もない中で退職して起業することに踏み切ったことに、不安はありませんでしたか。

もちろん不安はありました。私自身は基本的に退路を断ってから変わってきたタイプだったので、新卒で入社したときから、上司や同僚に「3年以内にやめて起業する」ということは伝えていました。そうすると、辞めざるを得なくなるんですね。 辞めたら起業せざるを得なくなって、起業したらアイデアを考えなければならなくなる。そういった考え方から私自身は退路を断つことが最適だと思っていますが、かなり危険な方法だと思います。私自身、幼少期にどん底の生活を経験したことがあるから踏み切れたことですね。

私と同じようにすることは難しいと思いますが「そうせざるを得ない」環境をつくることは大切だと思います。たとえば「1年後に会社を辞めて独立します」と、誰もが見ている場所で公言してしまうような手段です。それでも、実際にやる人は少ないですね。あとは、覚悟の問題だと思います。予定していたよりも資金が少ないなど、状況変化を受け入れてそれでもやる覚悟を決めることですね。思いっきりお酒を飲んで酔った勢いで公言してしまう、なんていうのも手段のひとつだと思いますよ。

 経営学を勉強してから、だとか資金の準備ができてから、と考えている人もいると思います。私自身公認会計士の資格をもっているので、経営における数字には強いはずで、たくさんアイデアの出し方などの本も読んできました。でも、やっぱり実務はまったく別のものですね。起業してみないと、実務を通じてやってみないと学べないことばかりです。だから、起業してしまった方が早いと思います。

「どう世界と戦っていくか」自分に今できる最大のチャレンジを

—— 現時点で抱えている課題はありますか。

いろいろとあります。サービスの方向性も、現時点では感染症対策としてテレワークが推進されて受け入れられていますが、今後どうなるかはわからないですよね。たとえば、出勤する勤務スタイルに戻っても誰もが使うようなサービスにしていくのか、リモートを前提としたサービスにしていくのかなど、社会の状況に合わせて考えなければならないので難しいところです。 あとは「どう世界と戦っていくか」ですね。サービスを提供してお客様に使っていただいてゴールではなくて、会社を大きくしていって海外に出ていくタイミングや、競合にどう勝っていくかなど、今一番メインで考えて悩んでいるところです。

――最後になにか若者へ向けて伝えたいことがあればメッセージをお願いします。

「自分が今できる最大のチャレンジをやった方が良い」ということを伝えたいです。学生と話していると、失敗のあとのことを恐れている人が多いんですよね。若い頃の失敗なんて、本当に些細なことなので3年後から振り返ったとしても全然大したことはないんです。それに、死ぬことはないですしね。だからこそ、今一番やりたいと思っていることを全力でやるべきですし、やりたいことが明確になっていなくても自分が現時点でチャレンジできる最大のことをした方が良いと思います。今目の前のことをゼロベースで考えて、選択をするということが大切ですね。

株式会社OPSION

設立 2019年1月11日
資本金 非公開
売上高 非公開
従業員数 非公開
事業内容 クラウドオフィスRISAの開発運用
URL https://www.opsion.jp/
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