情報を再整理する
—— ランク王株式会社のWebメディア事業や、その他の事業について教えてください
ランク王は、いくつかの商品紹介のメディアを運営している会社です。「ランク王」という社名と同じ名称で運営しているメディアを例に説明すると、「買うを楽しく簡単に」と書いていますが、最近はどんな商品についても情報が溢れていて、情報の取捨選択に対するコストが上がっています。それを解決したいなと思い、情報を再整理して提供しています。
このようなサービスを提供するに至った経緯は、過去にキュレーションメディアのブームが来たときに、検索キーワードに対する適切なページが用意されていないケースを多く見かけたことです。
いろいろな記事を書いておけば、ネット上で消費者が課題解決できる可能性が上がるという意味では価値があったとは思います。しかし、近年では質の高い情報が少ない、どれが正しくてどれが正しくない情報なのかわからない状態になってしまっていました。
きちんとした情報をネットに載せていく、情報を整理して絞っていくことが、今のネット上の記事に求められていることではないかと思い、メディア運営に取り組んでいます。
――ランク王株式会社を創業されたきっかけは何だったのでしょうか
Candleという会社に1人目の社員として新卒で入社したのですが、途中で私が代表取締役を務めることになりました。その後立ち上げたいくつかの新規事業を新たな会社にしたいと思い、ランク王に移しています。
Candleでやってきた事業は女性向けメディア、メイクの動画メディアなど、「あの商品を買いたい」など限定的なニーズがある方よりも、幅広くいろいろな情報を知りたい方をターゲットにしていました。
そうしたメディアを運営する会社と、さきほどお伝えしたような情報の整理・取捨選択という課題の解決策を探す会社とで、事業をきれいに分けたという感じです。
「失敗を失敗と捉えない」小さな失敗は成功につながるアセット
—— ランク王株式会社を立ち上げ事業を分けるにあたり、困難だったことや逆境に立たされたといった経験はありますか
世の中から見ると困難や逆境はなさそう、順調に業績が伸びていると思われている気がします。しかし、私の当初の想定からすると角度が下がっているというか、思ったほどのスピードでは伸びきれていないのは、失敗の数を増やすという体験をやり切れていなかったことが原因かなと思います。
私はそもそも人生全体で見ても、あまり失敗を失敗と捉えないタイプです。いろんな検証があって、失敗があって、それが成功につながっていくものだというマインドでやってきています。会社に関しても、あらためて考えてみるまでどれが失敗なんだろうと思っていました。
でも、振り返ってみると小さくたくさん失敗して、大きく伸びるチャンスを見つける、うまくいっているときに打ち手を増やして、もっと失敗のアセット(資産)を貯めるべきだったんじゃないかと思っています。
うまくいっている施策に頼りすぎず、挑戦の数をもっと増やしていれば、それが行き詰まってきたときに、次に当たる施策がより簡単に見つかっていたと思うのですが、ゼロから探す状態になってしまいました。
大きい失敗ではないので、外から見ると大したことじゃないと思われるかもしれませんが、そこから小さな失敗を重ねているうちに成長スピードが鈍化してしまったかなと思います。
――もともと失敗を失敗と捉えない性格だったのでしょうか
そうですね。あまり気にしないタイプというか、そういう性格だと思います。日々いろいろなことをやっていると小さな失敗がたくさん起こるので気にしていられないし、「失敗したな」と考える余裕がないままやってきたというのもありますが、挑戦を通して、「これがわかった」と捉えます。
ただし、失敗の仕方、負け方は重要だと思っています。よくわからないままやり切れずに失敗するパターンだと学びがありません。やり切った結果うまくいかなかったと検証できる失敗が、失敗じゃない失敗というか、成功のもとになる経験だと思います。
今のメンバーに対しても、やってみてうまくいかないことはあるけど、何でダメだったのかわからない負け方ではなくて、「この方法はダメだ」と社内にアセットとして貯まるようなやり方をしましょうと伝えています。もちろん、私自身も、会社全体としてもこれを意識しています。
――失敗から得た教訓はありますか
うまくいっていることがあるうちに、それに頼りきらずに挑戦し続ける、バランスを取ることが大事だなと思いました。そうしないと、どこかでリスクが大きい状態で大勝負することになってしまいます。
ちゃんと生きていける、うまくやっていける余裕がある間にいろんな挑戦を積み重ねて小さな失敗をしておく、そのノウハウを生かして勝つ確率を上げていくことが大切だと思います。
出したいと考えている価値が出し切れるメディア作りをやる
—— ランク王株式会社の事業や会社全体の、将来の展望はあるのでしょうか
今ランク王のメディアでは、ほぼ家電しか取り扱えていません。とはいえ、家電の分野では、SimilarWebの成長ランキング1位を獲得するなどトラフィックが伸びているため、ここでわかったやり方をほかの領域に展開していこうと考えています。
ランク王のサイトに来た方に、どの商品がいいのかしっかり判断できる、欲しいものがちゃんと見つかるという体験をしてもらうための投資を今後1~2年でやるつもりです。その後の展望としては、全領域に対して、出したいと考えている価値が出し切れるメディア作りをやっていきたいと考えています。
これまでもランク王のサイトをとおして商品を買ってくれている方はいて、満足していただいている部分もあるとは思いますが、どちらかというとSEO対策などの「サイトを見つけてもらう作業」がメインになっていました。
今後はどのように情報が整理されていれば商品が見つけやすいかを考えたり、最新情報を継続して取り込み続けられる仕組みづくりをしたりといった、本当に私たちがやりたいと思っている本質的な部分に時間と知識を使うことをテーマにしたいと思っています。
成功するかどうかは自分次第。始める前の時点で悩む理由がない
—— 最後に、挑戦したいけどできない、失敗するのが怖いという学生や新卒者などの若者に向けたメッセージをお願いします
私がベンチャーに入ったきっかけはふたつあります。ひとつが今の時代は数十年前と比べて変化が激しく、今後さらに激しくなっていくと予想されることです。そんな時代のなか、頼れるものは少なくなってきていて、昔のように大企業に勤めていれば安心だとか、長く働けば給料が徐々に上がっていくなどの保証がなくなってきています。
周りの人に「ベンチャーは不安じゃない?」「起業なんて危なくない?」といわれたこともありますが、周りの誰か、何かが安定や給料などを保証してくれるわけでもありません。結局、自分が成長できると思う方向にいくのが安全なのではないかと、ベンチャーに来たばかりのころの私は考えていました。
不安だと感じることは、意外と過去の常識であることも多いものです。本当に不安を感じなくてはならないことは、自分が成長していないことだという認識をもっておくと、踏み出さずにいることのほうが怖いと感じるようになるのではないかと思います。
もうひとつは、どちらが良いか悩むほどの選択肢があるときは、どちらを選んでもそんなに変わりがないと考えていたことです。
今の会社で昇進したい気持ちと起業したい気持ちがあるとして、どちらを選んでもそのために本当に頑張れば、起業してうまくいく未来も、今の会社で昇進して活躍する未来もどちらでも叶えられると思います。
どっちが良いかではなくて、両方成功させるとして、どちらが自分がやりたいことなのかを考えたほうが良いと思っていました。成功するかどうかは自分次第なので、始める前の時点で悩む理由がありません。
自分が成長できるのはどの方向か、どのように成功したいかを考えて、成功するために努力することが大切だと思います。