営業・訪問セールスから見えた自分に合ったやり方
—— Webメディアを立ち上げるまでは営業職をやられていたそうですが、そこからどのようなきっかけで起業という選択肢をされましたか?
営業時代の経験からユーザーが満足することにフォーカスしたいと思ったからです。
個人事業主で光回線を訪問販売しているときは、マンションを1部屋ずつ回って商品をおすすめしていました。販売していた商品は当時有名だったため、契約はしていただけるものの、中には契約後に「高くなった」「必要なかった」という人もいます。当時は、お金を稼ぐことが目的となっていたのでお客さんの声は二の次になっていました。
そんな営業スタイルに心が傷ついていき自分に合わないと感じました。
――営業の経験からユーザーファーストのビジョンに行き着いたということでしょうか?
そうですね。訪問営業や電話営業などのプッシュ型の営業では自分からお客さんにアプローチをしますが、Webメディアはお客さんの方から必要なことを調べて情報を求めにきてくれます。
そういったニーズの高い方に、実際に自分で使ったことがあるものや、比較検討した多種多様なサービスを自信を持っておすすめできる方が、心が健全です。
欲しい人に対し、最適な提案ができるプル型の営業スタイルのほうが自分に合っていると思います。
【ユーザーファーストがゆらぐ瞬間】問われる会社の在り方
—— 「ツナガル」を運用していくなかで、なにか困難にぶつかったことはありますか?
運用開始から2年ほど経った時に、ある一社から記事の削除依頼が来ました。簡単に言うと、「弊社のサービスを悪くいうな」という趣旨です。
生活インフラは様々な会社がサービスを展開しています。私達はその中から必要性を感じているユーザーに対し、適切なものを最も安い価格で提供することを心がけています。
そのため複数のサービスがあればどうしても相対的に優劣がついてしまいます。サービスAが悪いわけではないけれど、ユーザーにとってはBの方が適している。このような表現をした時に、サービスAを運営している会社から記事の削除を依頼されました。
――当時その記事は削除されたのですか?
いえ、削除しませんでした。その結果、訴えられて約2年がかりで裁判をしましたが、勝訴しました。
その記事からはほとんど収益が出ていないかったので、争うことは私たちにとって損でしかありません(弁護士費用や労力などを考えると…)。しかし、ユーザーファーストを掲げている会社としては、それに屈するようではいけない、それによって情報弱者の1人でも損をしなかったり、相手の会社のサービスが良くなれば良いと思っていました。
次に売上に波があり、一度高い売上を出してしまうとそれが基準になってしまい、下がった時に私の動揺が社員に伝わり会社の雰囲気が悪くなることもありました。その結果、当時の社員の半数以上は辞めてしまいました。
そのときばかりは、ユーザーファーストを忘れてしまっていました。
【理想的のプラットフォームを作るために】理念とビジョンを社員と共有する
—— そこからどのように改善していきましたか?
社員と話し合い明確な会社の理念(目的)を作りました。
売上はあくまで理念を達成するための手段でしかないのですが、 理念がに定まっていないと手段に惑わされてしまいます。
手段という悪魔に取り憑かれないでー、理念という大事なものを思い出してー。SEKAI NO OWARIの曲みたいな感じですね(笑)
改めて私たちに何が大切なのかという初心に戻れ、改善できたと思います。
――この経験を踏まえて、今後どのようなビジョンを掲げていますか?
まずサービス面でいうと、ツナガルを「生活インフラを選ぶ時、真っ先に思いつくサイトにしていきたい」です。今はまだブログのような形で運営していますが、ポータルサイト化して、ユーザーがこのサイトを見れば最適なサービスをパッとすぐに見つけられるようにしていきたいと思っています。
そしてその後、「あのサイトわかりやすかったな」「光熱費が下がってよかった」と思ってもらい、信頼されるサイトなれば嬉しいですね。
また会社の体制としては、将来起業したい、自由に働きたい社員が多いので、それぞれやりたいことができたときに、それを実現できる組織体制や報酬体系を作っていき、社員の夢も実現していきたいです。
【興味・強みはわからない】トライアンドエラーを繰り返し消去法でわかる
—— 最後にこの記事を読んでいる若者へメッセージを頂けますか?
何か一つのことに専念できるといいですが、学生の間は必ず本業となる学業があるため、なにかにフルコミットすることは難しいと思います。でも、少しでも興味があることがあるなら色々なことに首を突っ込んで欲しいです。
アルバイトやボランティア、インターン…なんでもいいと思います。学生のうちは良くも悪くも大きな責任を負わされることはありません。その立場を利用してトライアンドエラーを繰り返してください。
私は20代の時、漠然と「将来成功したい」「地元の同級生には負けたくない」という気持ちはあったものの、何がやりたいのか何で活躍できるのかわかりませんでした。それでも挑戦や失敗を繰り返していくうちに、消去法的に自分が何が好きで何が社会の役に立つのかが分かってきました。
その結果、まだまだ未熟ですが、業界トップクラスの成績を出せましたし、地元の同級生に対する劣等感も消えるという経験もしました。コロナ禍で夢を描きづらいとは思いますが、その中でも失敗を恐れずに面白そうだと思うことにどんどん挑戦していって欲しいです。