この業界をよりエシカル(倫理的)にしていきたい
—— エシカルノーマルを立ち上げた経緯を教えてください。
もともと7年以上ハウスクリーニングの事業を行っておりまして、そこから出てきた問題点や課題などを解決するためにエシカルノーマルとして取り組んでおります。具体的にどういった問題があるかと言うと、お客様の家の掃除やハウスクリーニングを行っていく中で、非常に有害で強力な薬剤を使ったりしているのがハウスクリーニング業界の現状です。
このことに関して、長年ずっと違和感を感じていたので、より人にも環境にも優しい方法でハウスクリーニング業界をエシカルが普通(ノーマル)な業界にしていきたいという強い気持ちを持って、この事業に取り組んでいます。
ハウスクリーニングの市場はここ数年で10倍になっている成長産業です。これまではダスキンさんやおそうじ本舗さんなどの大手の会社が主流でしたが、ここ最近ではインターネットのポータルサイトなども充実してきて、個人事業主がハウスクリーニング市場に多く参入してきました。今では約半分の業者が個人事業主になっています。
そして個人事業主が入ってきたことで、価格破壊が起きるようになりました。どういうことかと言うと、会社として利益を出すための売上と、個人事業主が食べていくために必要な売上とでは、約2倍違います。個人事業主はそういった優位性もあり、非常に安くハウスクリーニングを行っていくことができるようになりました。
このような背景から、よりたくさんの個人事業主が入ってきました。中にはハウスクリーニングの知識もあまりないまま、強い薬剤を使ってスピードと回転率を重視した作業を行う場面も多く見かけるようになってきました。強い薬剤を使うと、環境に悪いだけではなく、アレルギーや気管支系の疾患があるお客様や、人間よりも何万倍も嗅覚のあるペットに対して、健康被害を招いてしまいます。さらには、我々施術者も健康被害を受けてしまいます。
しかし、利益を最優先にしてしまうと強い薬剤を使ってより早くより効率的に、が重視されてきているのが非常に危険だと私は思って、よりエシカル(倫理的)にこの業界を健全なものにしていきたいと思い、エシカルノーマルと言う会社を立ち上げたのです。
「地域のおっちゃん社長がハウスクリーニングの世直しを急に始めただけです」
—— 現在どのようなメンバーがいますか?
4人でこの会社をスタートさせました。エシカルノーマルにとって非常に重要な能力を有した人たちを中心に、各分野のスペシャリストを集めました。
まず1人目は、大分県でハウスクリーニング事業をしている中島さん。
ハウスクリーニングやビルメンテのスペシャリストで、私が知る限り業界の中でも薬剤や洗剤に一番詳しい人物です。
2人目は、徳島県でハウスクリーニングやリフォームなどを含む生活サポート事業を地域密着で行っている七田社長。
彼は顧客との関係構築が抜群にうまく、CRM(顧客関係管理)において私が知っている限り右に出る者はいないと思いお声掛けしました。エシカルノーマルで行っていく事業も、顧客との関係づくりが非常に重要になってくると思い、この方の力を借りることにしました。
そして3人目は、私の本業である(株)Snailtrackハウスクリーニング事業部の責任者をずっとやっていた右腕、倉垣を引き抜きました。
——社風について教えていただけませんか?
我々は最初から全国にフランチャイズ展開していこうという考えがあったわけではなく、「いかにスピーディーに業界に革命を起こしていけるか?」という事だけを考え尽くした結果としてフランチャイズ展開に行き着きました。
言うなれば「地域のおっちゃん社長たちがハウスクリーニング業界の世直しを急に始めた」。
そんなスタンスです(笑)
ですので、私たちの生活もエシカルにしていかないといけないという思いから、ペットボトルを使うのをやめて、急に水筒を持ち始めたり、車を手放して自転車と電車で移動したりなど、本当に小さなことからかもしれませんが、私たちの行動すべてをより会社の理念に近づけられるようにと努力しております。
余暇の過ごし方までエシカルに!?
—— 行動指針など教えてください。
我々の会社は「10R」と言うオリジナルの指針を作って、これに沿って活動しています。通常「3R」や「4R」などよく聞きますが、私たちはこれの10バージョンを作って、環境負荷を極力抑えて活動しております。
具体的にはまず「Rethink(考え直す)」。
本当に必要なのか、他に方法はないかを徹底的に考えます。
リユースやレンタルできるものは全てしていき、ゴミやCo2の発生を減らすことを考えています。我々のユニフォームは実は全て古着です。購入先もよりサステナブル(持続可能な)な会社を選んで購入するようにしております。そしてそれがわかるように、敢えてリユースとわかるワッペンをつけて啓蒙しています。
面白いものとしては、10Rの10個目に「リクリエイト」というのがあります。これはどういうことかというと、余暇の過ごし方についての指針です。例えば休みの日にガソリン車でどこかに行くのではなく、自転車などで近くの山や川へ行ってキャンプをするなど、私たちのフランチャイズ店は余暇の過ごし方で「もっと自然を大切にしたいなぁ」「この美しさを守りたいなぁ」と感じられるように・・と思って作りました。
我々のビジネスは利益最優先ではない。社会問題を解決するが先にある。
—— どんな人材を求めていますか?
まず私生活がなるべくエシカルな人を求めています。ネットに悪口を書いたりとか、店員に対してぞんざいな口の利き方をしたりとかそういう小さな事とかもですが、例えば動物福祉とかに興味がある人とかも嬉しいですね。
より踏み込んでいくと、大量生産・大量広告・大量消費・大量廃棄といった従来の資本主義に対して疑問を持って行動している方や、お金の使い方でも「買い物は投票」という意思を持って使うことのできる方。エシカルノーマルという社名である以上、働いている時以外でも、より倫理的に生きている方、またそれを堅苦しくなく楽しみながらされている人を積極的に採用していきたいと思っております。
我々の仕事は「ソーシャルビジネス」と呼ばれるもので、その価値観をしっかりとわかってくれる方でないと、なかなか一緒に同じ目標に向かって行動できないと思っています。
通常のビジネスは先にマーケットニーズを探し、儲かるからビジネスを行うという所からスタートします。しかし我々の行っているソーシャルビジネスは、社会の課題を見つけてそれを解決するためにビジネスモデルを作って、利益と社会問題解決を同時にしていくということを考えていきます。
ですので「儲かればいい」とか、「こちらの方が利益率が高いので強烈な洗剤を使ったほうがいい」などと言わない、我々の会社の理念に沿った考えの方が来ていただけるとお互いに非常に働きやすいのではないかと思っています。
「きれいごと」がビジネスで通用する世界に!
—— 若者へメッセージをお願いします。
私のもう一つの会社株式会社Snailtrackでは、社員5人に対してボランティアの方が120名ぐらいいて、その7~8割が大学生です。ですのでよく大学生に将来の進路について相談されます。特に多いのが「将来何をしたらいいのかわからない」という相談です。そういった学生には、このような質問をしています。
「この世の中、100点満点だと思う?」
ほとんどの学生は、60点とか70点とか答えます。なぜ30~40点引いたのか聞いてみると、訥々と社会への不満などを教えてくれます。その内容は彼ら彼女らの生い立ちや経験によって実に様々です。だとしたら各々のその不満を解決して、世の中を100点に近づけていけるような仕事をしてみたらと提案しています。
私もそうですが、ほとんどの「やりたいことをやっている人」は最初からそれを見つけてやっているわけではありません。何か行動し始めてから、少しずつ何がやりたいのかがわかってくるというケースが多いです。ですので、まずは一歩目を素早く行動して、踏み出してやってみることがとても重要だと思います。
ほとんどの人は行動したり1歩目を踏み出すことがなかなかできないようです。その理由としては、失敗を非常に怖いものとして捉えているからでしょう。しかし一歩目でケガをしても「ケガをしないやり方」を1つ覚えるし、歩み続けると自身の強みや弱みが1つずつ明確になっていきます。
僕は「強みは人の役に立つため、弱みは人に愛されるためにある」と思っています。
しかし強みも弱みも行動していくことでしか見えてきません。
だから怖がらずに、1歩踏み出す勇気を。
その勇気が自分を、世界を明るいものにしていきます。
一緒に「きれいごと」がビジネスでも通用する世界にしていきましょう!