手を挙げた次の日から、僕は50人の会社の社長になった
—— 起業するきっかけになったお話など教えていただけませんか?
もともと今の会社は僕1人で立ち上げた訳ではないんです。実は今の会社の前身に当たる会社の役員をしていました。その会社に二つの新しい事業ができあがりました。一つは駐車場のシェアリングエコノミー。そしてもう一つは出版事業という全く別の事業体です。
駐車場のシェアリングエコノミー事業に50人の社員がいて、出版事業の方にも50人の社員がいました。全く違う業態なので、これは同じ会社ではなく別の会社にしたほうがいいのではということで、二つの会社に分かれることになりました。
そこで、出版事業の会社に2016年僕が手を挙げたという形で社長になりました。
──苦労話などあれば教えてください。
一人から会社を始めたわけではなく、社長になってすぐに50人の社員がいたので、全く経営能力のない状態で会社の舵を切ることになりました。事業部長はできたのですが、経営者としてはまだまだ未熟で、社長としてのあり方や経営者としての考え方、ミッションなど全く持っていませんでした。そんな状態だったので、社長に就任してから2年間で50人のうち約35人の社員が辞めて行きました。
資金繰りが非常に大変で、資金調達などもして行きましたが、2018年末には潰れることも覚悟してその年の夏はずっと震える生活を送っていました。
10個動いたうちの1個だけでもかすればいい。そんな思いで行動した先にチャンスは訪れた
—— それをどう乗り越えられたんですか?
やるしかないという気持ちで頑張りました。一度は諦めましたが、主要のメンバーや弁護士さんが僕のことを励ましてくれました。
1年間僕はずっと給料ゼロで頑張って働いていました。そういったところを残ったメンバーが見てくれていて、2019年に盛り返して来て2020年には売上も上がり、SNSをスタートしました。とにかく行動しかないですね。
もうだめだと思ったこともありましたが、最後の最後で銀行から資金調達をすることができて会社を立て直すことができました。10個動いたうちの1個だけでもかすればいいと思って行動しました。その結果が今に至っていると思います。
本は人の背中を後押しする力がある
—— 「社会貢献を通じて人をつくる」というビジョンの背景を教えてください
会社が苦しかった頃、こんな時だからこそ誰かに喜んでもらえるような社会貢献はないかと考えました。お金はないけど会社には本がたくさんあったので、病院や、本を買えないシングルマザーの集まる団体などに寄付をして行くことにしました。
会社の中でもこのような活動に関しては賛否両論があり、反対の声もありましたが、こういった活動が周り回って売上にもつながっていきました。
本というのは人の背中を後押ししたり、心に勇気を灯してあげたりと、素晴らしいものがあり、それをわかってくれるスタッフとともに、ボランティア活動をしていくことにしました。
中期的目標やビジョンは社会貢献活動をしようということで、こういう活動を理解してくれるスタッフや、著者の方を集めたコミュニティを作っていこうということになりました。
書籍の寄贈活動や子供の勉強会などやったりと、直接売上につながるものではないのですが、そういった活動に賛同して集まってくれるような「社会貢献を通じて人をつくる」というビジョンにしました。
このようなミッション・ビジョンを2年間持ち続けることで、会社の人間関係も非常に良くなり、みんな仲良くやっています。
さらにコロナ以前から、リモートワークを取り入れているので、非常に自由な働き方を社員に提供することができています。ですので、離職率も以前に比べて格段に下がりました。とてもありがたいことです。
──今後の事業展開など教えてください。
著者を育成していきたいと思っています。今現在1200冊以上、弊社では本をリリースしていまして、いろんな専門家の方がたくさんいます。各専門家の方々を横のつながりを持たせたり、勉強会などをしたりしています。
具体的には、TwitterやInstagramなどのSNSの情報発信のやり方や、YOUTUBEの発信の仕方などをご指導させていただけると、よりたくさんの方に認知していただき、本を手にとっていただけます。
今現在弊社で出版を行っている著者の年代は、40代から60代と比較的上の年代なので、SNSなどの使い方などを教えてほしいなどという要望が多々あります。そういったニーズにもしっかりと応えていけるようにしていきたいと思っています。
本を出版するという経験は最高の体験価値になる
—— この仕事のやりがいを教えていただけませんか?
制作している本がリリースされた時です。一つの本を作るのに約1年ぐらいかかるのですが、それが世に出るというのはとても感慨深いものです。僕たちからしたら、たくさんの本の中の一冊なのですが、著者からしたら一生に一度あるかないかという貴重な一冊なので、非常に喜ばれますし感謝されます。
例えその本が全く売れなくても、売れなかったことに対するクレームなどは一切ありません。印税などを目的としているのではなく、本を出版するということが目的であり、それが次のビジネスへと発展していくからです。
私たちが提供しているサービスは、本を出版することで著者のブランディングを高めてあげることです。そのブランディングによって、著者のビジネスに少しでもお役に立てるのは、とても嬉しく思っています。
──最後に起業する方や学生へメッセージをよろしくお願いいたします。
手を挙げないとチャンスは来ないということをお伝えしたいです。「迷ったら手を挙げよう」と僕はいつも言っています。僕もこの会社の社長になったのは、手を挙げたからです。他の周りの役員は誰も手を挙げなかったのですが、僕一人だけ手を挙げました。もしあそこで手を挙げなかったら、全く違う人生になっていたかと思います。
もちろん挑戦することは、怖いですし不安もありますが、挑戦しないとチャンスを得ることはできません。是非これから起業を目指す学生の皆さんや社会に出る学生の方々には挑戦して行っていただきたいです。