今ここにないモノを生み出す
—— 事業内容を教えてください。
スフェラーは、直径1~2mmの球の上下に電極を配置した世界初の球状太陽電池です。スフェラー(Sphelar)とは「Spherical Solar」から作られた造語です。球の形は、自然界の不均一な光の当たり方に着目して生まれました。垂直の光を集める平面パネルと違い、時間の経過で変わる照射角度に対応し、反射・拡散する光も効率よく取り込むことができます。条件の悪い環境下でも発電できるため、積算発電量は平板の約2倍に上ります。
このようなオンリーワン技術の特長をもとに、様々な分野にて、ご提案ならびに販売をさせていただいております。
スフェラーパワー株式会社は元々、光半導体メーカー・京セミ株式会社(現:株式会社京都セミコンダクター)が取り組んできたスフェラー事業を継承する形で分社化してできた会社です。球状太陽電池は生産コストも高く、なかなか広まっていない為、コストを抑えて販売できるように試行錯誤を続けています。
今後、球状太陽光発電は平面太陽電池のデメリットを改善し、将来的に欠かせない技術となると考えられています。さらに、この事業は我々しかやっていので海外からも注目を集めています。
スフェラー事業は、発展途上の市場のため、本当はもっと若い人と共に長期的に事業開発を進めたいと思っています。世界で初めてのことを自分が成し遂げるというような気概を持つ若者と巡り合いたいです。半導体を扱う物理系や電子系の学生、製造装置を扱う機械系の学生にぜひ来ていただきたいと考えております。
――コストの面で苦労されているとおっしゃいましたがそれはどうやって改善していくのですか。
小さい会社では難しいと思うので、大企業と協業することによってコストの課題を解決していきたいと思っています。今後は、いろいろな会社に声をかけて、スフェラー事業に興味を持ってもらったところと協業したいと思っています。会社にとって金融機関はとても大事です。良い関係を築きながら、ビジネスマッチングをお願いしています。
――事業を進める中で失敗したことはありますか?
私達は仕事の依頼を受けて、要望に合わせてスフェラー製品を作っています。スフェラー製品を製造するには大きなコストがかかるので、値段的に厳しいと先方に言われてしまい、普及する価格まで落とせないことがほとんどです。製作費をなんとか捻出して作っても世の中に出ていくものがほとんどないという失敗を繰り返しています。
「左遷」をポジティブに捉える
—— 創業までどのような学生時代や会社員時代を過ごされてきましたか?
大学は京都大学に通っていました。私は、特別勉強ができたわけではなく、受験生の時は受験のテクニックを磨いて大学に入りました。入学後、自分は勉強ができないのだと気づきました。それは周りに勉強できる人が多くいたからです。
在学中も勉強はできなかったけれどテクニックを使って単位を取っていました。単位は取れていたので大企業に入社することはできました。ただ、他の大学から来ている人の方が優秀でした。今思えばなぜもっと学生時代に勉強したり、本を読んだりしなかったのだろうと後悔しています。今は、当時の反省を活かして経済関係などの勉強しています。
その後、京セミ創業者の義理の父親の繋がりで大企業を辞めてそこに入りました。最初の数年は研究開発、製造をしていましたが、その後は営業に進んだりと、職場を転々としていました。
――順風満帆な人生と思いますが、挫折経験などはありますか。
挫折は大企業にいた時に経験しました。周りが優秀な人ばかりで、大学であまり勉強してこなかった自分は、このままでは通用しないと思いました。入社後すぐに研究職につきましたが、その後5年ほどいた職場は研究で生まれたものを大量生産し、工場に引き継ぐという仕事に就きました。
社会では仕事の異動は「左遷」といわれ、あまり良くない印象を持たれがちだと思います。しかし、最初に研究をしていたのに、5年後には工場を行ったり来たりする仕事に就き、物づくりをできたことは今ではいい経験だったと思います。
この経験から、何か物を作って発明した人も素晴らしいけれど、安定して大量に作り、製品として出す人も素晴らしいということを学びました。実験ではできても工場ではできないこともあることも学びました。
失敗は経験だ
—— 当時、周りの優秀な人がいる中でどのように気持ちを切り替えていましたか?
当時は左遷というものがありましたが、自分の中では左遷というものはないと思っています。どの仕事においてもその仕事の重要さは変わらないと思うからです。
もし、職場を移されるとしても左遷されたではなく「こんな経験させてもらえるんだ」というような栄転と考えた方がいいです。前の職場にいたら経験できなかったことが経験できるとプラスに捉えた方が自分の成長に繋がると思います。
――最後に若者へのメッセージをお願いいたします。
今の若い人たちは、コツコツやっている人が多いと思います。若いうちに色々なことを経験して欲しいです。これからたくさん失敗すると思いますが、失敗も失敗と思わず、経験と思ってもらいたいです。失敗と思わずに経験と思うと、あそこであの経験していて良かったと思えます。そのような思いで色々なことに挑戦して欲しいです。
自分も今は、50歳を過ぎていますけれど、人生100年時代といわれているのでまだまだ若いと思っています。会社としても、失敗はないという思いで今の球状太陽電池事業に挑戦し続けていきたいと思います。