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【株式会社キャリア・ナビゲーション 長嶋 哲夫】絶望の中でも暗い道に光を与えてくれる仲間がいたから今日まで歩むことができた

2021/02/01

Profile

長嶋 哲夫

株式会社キャリア・ナビゲーション 代表取締役

2002年上智大学大学院理学修士取得。専門商社の人事担当を経て、2010年に株式会社キャリア・ナビゲーションを設立。入社前の学生を対象とした、実践とコミュニケーションを通じ即戦力人材を育成するインターンシップ「Professional Student Firm(PSF)」を運営。2021年1月現在で1,000人を超える卒業生を世に送り出し、各業界の発展へ貢献している。人事経験を経て「企業には即戦力が必要」と悟り、学生育成プログラムの運営を開始した長嶋氏に、学生を即戦力とするインターンのあり方について伺った。

社会に出る前の職業訓練

—— 御社の事業概要を教えてください。

弊社はキャリア・ナビゲーションという会社で、2010年に創業いたしました。学生を対象とした、就職前の職業訓練となるインターン事業をおこなっています。

今はコロナの影響もあり、コミュニティに所属してコミュニケーション力を学ぶ機会が減りました。私は目上の方から学ぶ社会勉強は、就職後も大きな力となると考えています。そこで多くの学生さんに、職業訓練を通じて仕事を実践する体験をしてもらい、就職時には即戦力になってもらうのが目的です。

弊社のプログラム「PSF(Professional Student Firm)」では、実際に弊社の営業の仕事をインターンとして手伝ってもらっています。教育の一環で他社へ派遣するといったことは一切せず、自社内で完結させています。

弊社のインターンは、決して期間が短くありません。3ヶ月程度から数年しっかり学んでもらいますので、ちゃんとアルバイトとして報酬を出しています。お伝えしたとおり営業をやってもらいますので、成果を上げて時給10,000円に到達しちゃう子もいるんですよ。

そうして勉強してもらった子は、卒業と同時にいろんな会社に就職していきます。弊社は新卒を採らないので、あくまでインターンの場として使ってもらい、即戦力として社会に送り出すスタンスでやっています。

――どんな学生さんがインターンを希望されるのでしょうか?

今現在、学年として多いのは大学1~2年生と、就活前の3年生が中心です。あとは4年生が、卒業して就職するまでの間、鍛えて欲しい、訓練したいと言って入ってきます。

ちょっと前だと一般の高校生や、N高生なんかも多かったですね。
大学生だけではなく、高校を卒業して大学に入学するまでの間にインターンを始めたいという方も歓迎しています。

在籍期間は人によってバラバラですが、3ヶ月から1年くらいが一番多いですね。中には結構楽しんでやってくれて、3年くらい続けてくれる子もいました。

弊社の強みは「4月時点の即戦力となる社員の育成」

—— 具体的にどのような指導をされていますか?

弊社の強みに「4月時点で即戦力となる社員の育成」があります。インターンをとる会社の中には、とった後放置というところも多いじゃないですか。営業のインターンなんて、飛び込み営業にいかせて放置なんてところもざらです。

弊社はチームごとに指導者をつけているのが強みです。営業は基本的にオフィス内から電話やオンラインで行っています。外出させるとちゃんと教育できないので、オフィス内でしっかり指導。またリモートでもちゃんとミーティングを行うことで、自宅からでも参加できるような体勢を整えています。

また、業務は学生さん同士で組んでもらったチームで進めてもらいます。チーム内で作ってもらったLINEやFacebookのグループ内で報告事項やスケジュールなどを共有。それをベースに週1回のミーティングで稼働状況のすり合わせをしています。

チーム運営に活用しているのがリーダー制度です。学生さん同士だと関係がフラットになりやすいので、学生さんにリーダー昇格試験を受けてもらい、チームをまとめるリーダーになってもらいます。

――これまでどれくらいの学生さんを指導されてきたのでしょうか?

卒業生は通算1,000人を超えていますね。起業して10年なので、単純計算で1年に100人送り出しています。1年間の在籍数は200~300人くらい。その中から毎年卒業していく子が100人くらいずつ累積していって、1,000人という感じです。

大学生に関しては合計50大学くらいの子が参加していて、一都三県の子が多いですね。先輩が通っているので、そのツテで参加という子も多いです。

卒業生の強みは「PDCAの回転の早さ」と「業務改善スキル」

—— 即戦力の育成において、どんなことを重視していますか?

私は前職が人事なのですが、当時社内でパフォーマンスが高い方に共通した4つのポイントがありました。今もいろんな会社にヒアリングすると、活躍される方はどの会社でもこの4点が共通しており、弊社の育成でも重視しています。

一つ目が「成果思考」。やりたいことを選んで就職していますけど、入社後はやりたい・やりたくないじゃなくて、やらなきゃいけないことをしっかりやっている人が強いです。

二つ目は「自責」。環境や上司が悪いとか、サービスがよくないとかじゃなくて、どんな環境でも自分でなんとかしますという人が伸びていきます。

三つ目は「まず与える」。給与とか福利厚生をくださいというより先に、自分から与えにいく。自分で会社に貢献して、売上が上がるから給料が上がるという仕組みの理解が重要です。
ただ、頭ではわかっているけど実際に働くまでは腹落ちしていない人も多いです。

最後に「多様な価値観」。現代は価値観の多様化に加え、異国の方とも一緒に働く機会が多いので、異文化の受け入れ姿勢は非常に重要です。最近は家族じゃない大人と話したことがないという子が増えました。ですから、ほかの価値観に触れる機会として、社員として働く人とコミュニケーションを取れる環境が大事かなと思います。

有益な人材になる姿勢と、先ほど触れた指導を含め、どこにいっても活躍する営業を育成しています。

さらに、PSF卒業生の強みは、PDCAの回転の早さと業務改善スキルだと思っています。何が悪かったかと聞かれて「よくわかりませんでした」とか「なんとなく」なんて答えるのではなく、数値的な根拠に基づき論理的に話せるようにするのが我々の目標であり、学生にとってのメリットだと思いますね。

サラリーマン時代に得た「即戦力が求められている」問題意識

—— 起業のきっかけとなった出来事などはありますか?

死んだ父と祖父がどちらも起業家だったんですね。なのでDNA的に「起業しないとな」という意思は元々ありました。とはいえ学生時代に起業できるような力は無かったので、一回はサラリーマンになっています。

入社した会社で人事をやらせてもらう中で、日本の就職、雇用、職業訓練といった観点から、もっと即戦力が求められていくという問題意識が出てきたのがきっかけですね。起業しようとは思っていましたが、最初のサラリーマン時代がなかったらこうしたビジョンは思い浮かばなかったでしょう。

――サービスが軌道に乗るまでの間に苦労はありましたか?

とにかく実績を作るまでが大変でした。日本は、アメリカンドリームのように誰でも一発当てるのは難しく、実績を評価されます。サラリーマン時代は会社の看板を使えましたが、辞めてからキャリア・ナビゲーションの看板を掲げても誰も知らない。営業しても「実績を見せてください」という反応が一番多く、これからですと夢を語るしかありませんでした。

しかし夢を語ってもお金にはならないので、経営者になってから夜勤のバイトもしていましたね。実績を作るまでは口でほざいているだけ。昼はうだつの上がらない営業をし、夜は夜勤でバイトを続けている間は、プライドはズタズタでした。

ただ、なんとか社員で実績を作れるようになってきたところで、学生の方も一緒に仕事をするような形で、お給料も学生さん達に払いつつ、学生さん達は社会にでる前に、社会で通用する力を実践で身につけられるような仕組みを構築していけました。

今ではほとんど学生インターン生だけで数億の売上をたてられている状態です。

――どのようにして試練を乗り越えることができたのですか?

当時は資金もあまりなかったのですが、ありがたいことに社員だけではなく社員以外の方にもたくさん支えていただいて。
「長嶋さんしかそのサービスはできないです、諦めないでください」と励ましてくれる人たちの想いもありここでやめてはいけないなと思えました。

特にベテラン経営者さん達がボランティアでアドバイザーとなってくださり、創業からビジネスパートナーの紹介やサービスコンテンツ作成、学生の育成などのサポートをしてくださり、支えてくださったことが大きいですね。今も直接では無いですが支援していただいています。

やりたいことがやれるというのが経営者のよさですが、それは基本的に誰も自分に注意・指導してくれる人がいなくなる、ということでもあります。暗闇で手探りで進んでいかないといけない状況の中、周りの経営者の方々のような一緒に暗い道に光を与えてくれる仲間がいなかったら乗り越えることができなかったかもしれません。

好きなことを見つけて没頭したらいい

—— 今後の事業のビジョンを教えてください

この会社を作った理由が「日本中に職業訓練の環境を広めたい」なんですね。でも法律を変えないと大変な部分もあり、死ぬまでにやり遂げるのは大変かなと思っています。今は大学を卒業したらすぐに就職なので、訓練を受ける流れがありません。だから空いた時間でインターンをやるという仕組みしか作れておらず、この仕組みを変えて全国展開するのは、死ぬまでには難しいかな。

また今はリクルートさんとかマイナビさんが就職業界の二大巨頭で、すべての業界を網羅しています。ですから、うちは全部の業界じゃなくて、人事業界に特化しているとか建設業界だけシェアが高いとか、特定の業界に特化した教育サービスを伸ばしていきたいと思っています。二大巨頭が網羅しきれない業界特化型がいいですね。

――最後に今の若者に伝えたいことをお願いします

僕はこういうことをやっていますけど、職業訓練は人生のマストではありません。今は生き方が多様化しています。もしやりたいことがないのであれば、無理矢理就職活動をせずに卒業して、好きなことを見つけて没頭した後に就職してもいいのではないかなと思います。無理矢理就職しても、合わなくて辞めちゃう方が多いですから。

これからは副業しながら生きていく人も増えていくと思うし、ひとつの会社に所属しない生き方もあります。そのため、若いうちは好きなことを見つけて没頭したらいいんじゃないかと思います。

株式会社キャリア・ナビゲーション

設立 2010年8月20日
資本金 500万円
売上高 非公開
従業員数 非公開
事業内容 大学生,専門学生,短大生向け価値創造人材のインターンシップコミュニティ「Professional Student Firm」運営 学校,企業様向け教育カリキュラム研修の企画実施
URL https://career-navigation.co.jp/
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