外泊するほど家賃が安くなる住居
—— 外泊するほど安く住めるサブスク住居というサービスについてお伺いしたいです。
unito.meというものをやっておりまして、外泊すればするほど家賃が安くなっていくプロダクトになっています。日本では、まだ株式会社Unitoでしかやっていないシステムになっています。住民さんが家にいるときは、普通の家なのですが、外泊しているときは家がホテルになるビジネスモデルになっています。利用されている方は、リモートワークを中心に、東京だけではなく、関西や地方でワーケーションをする方々や、実家と東京の2拠点で生活している学生さんが多いです。
また、社会人になって初めて東京に出てきたが、都内の生活に慣れておらず、賃貸を借りるよりも一度unito.meを利用して都内の暮らしに慣れていきたいという方々が多いです。unito.meでは、初期費用もかからないので、お試しに利用しやすいと思います。
変化の早い時代を生きる
—— サービスのリリース時、newspicksのビジネス面のトップや、AbemaTVに取れあげられたと思うのですが、どういった経緯で取り上げられることになったのですか?
リリース時に小さなところで取り上げてもらい、それを偶然誰かがpickしてくださり、newspicksで350picksほどしていただきました。それを、キャリアハックさんや日経さん、AbemaTVさんが問い合わせをしてくださりました。そこから、半年以上経ちましたが、月に3,4本偵察に来られています。
新しいビジネスモデルは、今までになかったという面白さがあります。2020年はSNSやサブスクリプションサービスも盛んになり、コロナによってワークスタイルも変化し、時代の変化が早いです。3年前は現金支払いが当たり前だったのが、今では財布さえ持たず、PayPayやSuicaなどで支払うのが当たり前になっています。
3年でここまでの変化が起こったのは、歴史上一度もありませんでした。西暦1200年と1600年で比べた時に、そこまでの変化は起こっていないと思います。それに比べ、今では1年や2年で大きく変わります。
ニューノーマルな仕事やメディア、健康、エンタメなどがアップデートされていく中で、新しいものを作っていくのが楽しいというトレンドがあり、生きていると感じさせられて僕はとても好きです。
起業において、熱量や志は何よりも大切
—— 起業ではどのような苦労をされましたか?
資金調達に苦労しました。僕たちのビジネスモデルは新しいものなので、それに対して理解を示す人と示さない人に割れてしまいました。例えば、人材事業だと先駆者がたくさんいるので、儲かるかどうか、大きくなるかどうかが分かりやすいです。
しかし、僕たちのビジネスモデルだと、実現可能かどうか分からないものであり、これまでになかったビジネスモデルということには理由があるため、難しいと言われることが多かったです。
資金調達をしなくては新しいビジネスを始めることもできないので、日本中のVC(ベンチャーキャピタル)にDM(ダイレクトメッセージ)を送りました。50~100人くらいにDMを送りました。「そんなことできるわけがない」、「そこまで事業が大きくならないよね」と言われました。
批判的な意見に対して、できますと答えましたが、「周りの例とかはあるの?」と言われ、ないですと答えることしかできませんでした。ただ、熱い思いから、可能性を信じて賭けてくれる方もおられました。
学生の起業において、志や熱量は大切です。起業する理由が、みんなやっているから起業する、カッコいいから起業する、誰かの言うことを聞きたくないから起業する、という人はまず成功しません。
本当に自分がやる意味があるか、自分がやらなければいけない、この人生でこういう志を持っていることは運命かもしれない、という思いを持っていなければ起業や資金調達は難しいです。資金調達ができたとしても、自分に合った投資家とは巡り会えないと思います。
投資してもらうなら誰でもいいというわけではなくて、自分が尊敬できる人、アドバイスをもらいたい人などに投資してもらうことが理想だと思います。
投資家さんは、いわゆる会社の応援団のようなものなので、自分に合った投資家さんが理想です。色んな人に応援されることで、こんな学生の前例のないビジネスモデルを応援してくれる人の期待に応えたいという思いが湧き出てきました。
マイナスな出来事をプラスにする
—— コロナショックによって、事業のスタートに失敗したとお伺いしたのですが、その時の心境はどのようなものでしたか?
コロナによって、僕たちは大きなピンチに陥りました。中国にトイレの便器やドアをいくつか発注していたのですが、中国でのコロナウイルスの拡大が凄く、商品が中々来ないことがありました。それによってオープンが3ヶ月遅れました。
元々は2年でビルを50棟ほど建てるビジョンを持っていましたが、コロナの影響により、ビルをプラットフォームにしてエアビーやブッキングドットコムのようなビジネスモデルに変更しました。
コロナだから良くないビジネスと、コロナだからこそチャンスのビジネスがあり、そのチャンスの部分に乗っかることが経営者にとって大切だと思います。どのような場面でも、チャンスとなるような切り口や、追い風になるように事業を変えていくことを意識しています。
——想像以上のチームの強さを知ることができたと伺ったのですが、もう少し具体的にお伺いしたいです。
ビルを建てたのですが、コロナによって全く意味がないものになってしまいました。その時、社員たちは会社を辞めていくと思っていましたが、逆に未来のことを必死に考え、みんな次の施策について議論していました。
信頼関係があるからこそチームの強さを発揮できたと思っています。このメンバーならできるという思いが募り、一致団結してみんな同じ方向を向くことができました。
普段から雰囲気作りは大事にしています。チームや自分の雰囲気を良いものにするために、週1回ポジティブな言葉や、世の中の現状、自分たちの現在の立ち位置をスラックで発信するようにしていました。
モチベーションの源はみんな違います。家族や自分のためにお金を稼ぎたい、会社やプロダクトを作っていくのが楽しい、という様々なモチベーションを同じ方向に擦り合わせていくことを意識しています。
昔の会社は、朝礼で会社の志を読み上げたりすると思うのですが、意識の擦り合わせとして凄く効果的だと思います。最近の会社はそういった朝礼をしないイメージなので、そこを補うようにスラックでモチベーションが上がる言葉を投げかけていました。
学生団体での経験が社会で活きるのか?
—— 学生団体をされていたと思うのですが、その頃の経験が今に活きてきていることはありますか?
学生団体と会社は全然違います。学生団体の活動が、起業に活きてくるものがあると思ってみんなやると思いますが、実際に起業をしてみて、学生団体の活動が活きてくることはなかったです。学生団体には、根本的に雇用者と雇用主の関係がありません。そもそも学生団体では金銭が発生しないという事が経営と大きく違ってきます。
会社であれば、法人という1つの生き物になるのですが、学生団体は個人の集まりであり、法人のように1つの生き物になる事ができません。学生団体はあくまで個人の集まりであり、コミュニティであるため、サークルに近いです。なので、学生団体のノリで起業をすると失敗する事が多いです。
ですが、金銭が発生しない学生団体でも同じビジョンやコンセプトに向かって活動できる力は凄く大切です。金銭が発生しないにも関わらず、人が集まる学生団体というのは、ビジョンやコンセプトに共感しているからであり、経営するにあたっても参考になります。
学生団体では、金銭が発生しないが夢中になって頑張る事ができる、そのボランタリー精神を持って会社で働くことは大切になってくると思います。
起業に失敗はつきもの、臨機応変に行動するべき
—— 最後に、起業を目指している学生さんへのメッセージがあればお願いいたします。
基本、起業はうまくいかないと思います。自分が今、思い描いているアイデアをそのままできることは少ないです。起業で成功するためには、失敗をする前提で、成功をするにはどうすればいいか、これを臨機応変に動くことが大切だと思います。