「やればできる」はずっと信じ込んでいる
—— 大和証券で総顧客預り資産約100億円を突破」「延べ800名の顧客を担当」「最高賞の社長賞を5度受賞」など多くの結果を出されていますが、結果を出すために何をされたのですか。
結構ありとあらゆることを頑張りましたが、その根底になっているのは高いモチベーションですね。ちょうど環境が良かったのだと思います。できる人に囲まれて、上見て、「この人はこれくらいやっているから、俺も負けないでやろう」という環境に身を置けたというのは強いですね。
その環境でくじけないでやろうと思っていました。元々ハートは強い方だと思います。小さな成功体験などをポジティブに受け止めていくので、自分ならできると心のどこかで思っているのだと思います。
でもサボったりもしていましたよ。息抜きとかは未だに分からないですが、効率を考えると休んだ方がいいなという風になってくるように思います。僕は考えることが好きなので、クリエイティブな仕事をするためには寝ないとダメだし、単純作業の場合は寝ない方がいいだろうし。どんな仕事をするかによって使い分けていますね。
――元々ハートが強かったとおっしゃっていましたが、学生時代や生まれた環境からそういった精神力の強さを持ち合わせていたのですか。
小学生の時にサッカーをやっていて、おそらく日本トップクラスで努力していたと思います。そして、小学生とはいえ全国に行ったという成功体験が小さい頃からありました。「努力は報われる」というのはずっと信じ込んでいます。
起業したのは、従業員でい続けることの方が怖かったから
—— それだけ実績を積まれたのに、起業されたのはなぜですか。
実家が自営業で、サラリーマンが逆にどんなことをしているのか分からなかったということがあります。流れでサラリーマンになりましたが、入る時から会社を作るために入っているというのはありました。就活も、経営者と話せるという点で絞っていました。
大和証券時代は、人脈というよりは自分の能力や思想的に受けた影響の方が大きかったですね。経営者の方と実際に話してみて、特別なものではないと思った反面、経営者にも何種類かいると感じました。
分かりやすい例としては、創業社長と2代目以降の社長とでは思想や経営方針が大きく違うなと思いました。創り上げた者とそれを守る者で分かれやすく、良いか悪いかは別として、やることが全然違うということを学べたこともいい経験です。
1から100にするというよりは、50になった時に、50を維持しようとか、50を減らさないようにしようという思想になるわけじゃないですか。それをアクティブに100を1000にしようという人もいれば、100減らないようにしようという人もいます。僕は配属が千葉だったこともあり、たまたま後者の人の方が多かったように思います。
渋谷の支店に行ってから、0から1や、1から10に行くようなお客様にちらほら会うようになりました。そういった世界を変えに行こうとする人に触発されたというのはありますね。
――起業するにあたって、恐怖はなかったのですか。
僕は、そのまま会社にいることの方が怖かったかもしれないです。自分たちが築いたものをどうやって守るか、減らさないようにするか、どうやって日銭を稼ぐかという思想に会社全体が陥ってるように感じました。会社全体もそういった思想に最適化されていました。
そういった組織の中で働くひとも、その組織に最適化された働き方をしているというのは、自分自体も会社と同じようになっていくのではないかと思いました。沈んだりした時に、劇的に変わっている外の環境についていけないだろうと思いましたし、それ自体がリスクだなと感じました。
自分たちの代でそれが起きなくても、子供にその思想が伝わって、いつかそのリスクが現実になる時が来ると思っていました。
困難だと思わない理由は、自分が選んだ道だから
—— あまり困らずに出資してもらったと話されていますが、どういう風に進めて行ったのですか。
とにかく人に会うこと、とにかく本気で事業のことを人に伝えることです。あと、もしお金が必要だということであれば、恥ずかしがらずに怖がらずにお金が必要だと言いました。
「あなたのお金が入ると、うちの事業はこうなります」という夢が描ける。頼むのではなく、一緒にやりましょうといって仲間集めをしました。資金調達は人を集めることとそんなに変わらないのではと思っています。Win-Winで、僕たちも良いし、あなたたちも良いという未来が描けるかどうかだと思っています。
――創業間もない時に投資家の人たちにお願いする上で、中には悪い人もいるかもしれないですが、見分けるコツはありますか。
相談できる人は絶対必要ですね。幸いにも様々な人に助けられ、そういったことは避けてこられたのかなと思います。ただ、最終的には、信じるしかないです。同じ船に乗れると信じて、裏切られてもしょうがないと信じ切るようにはしています。ただ、それはそういった事にならないよう法令の確認などの努力をした上でのことなので、やはり日々学ばないといけないなと考えています。
――経営していてキツかったことや困難だった経験はありますか。
なんでもそうですが、自分が良いアイデアだと思っても、社内や社外でも良くないと思う人もいるじゃないですか。それは何やってもあることですよね。こういった意見のズレでも、それを進めることが困難と思う人もいるかもしれませんね。
――では、困難を困難と思わないマインドになれる理由を教えてください。
自分が選んだ道だからでしょうね。もし、人にやれ、と言われてやっていたら2日くらいで辞めています。そもそもやらされるのが嫌ですし。自分で選んだ責任は重いので努力はしないといけないですが、ポジティブな努力なのだと思います。
閉鎖的で上から降ってくることを効率よくやるだけみたいなのとは違うじゃないですか。生み出さないといけないですし、その中では辛いこともきっとありますが、そのためにやっているので辛くないというか。
そもそもスタートアップというもの自体が、社会の理想とそれが無い現実のギャップを埋めるために存在する事業のようなものなので、そういったギャップを困難と思うのか、埋めることに人生をかけて楽しめるか、というのがテーマになるかもしれませんね。
こういった今無い事業を生み出していくということに、能動的だからだと思うんですけどね。でも、話を聞いているとこれが嫌だと思うは結構多いみたいです。そういった人にとってはこういったスタートアップは苦痛でしかないのかもしれません。
営業は売りつけではなく、相手が選べるようにしてあげること
—— 先ほど、「自分が良いと思っても、社内や社外良くないと思う人もいる」とおっしゃいましたが、それ事業やサービスをしていく上でということですか。
結局全部ですね。人と人とのことなので、考えは全員違うじゃないですか。説得もしますし、そのために材料も集めたりはします。資金調達もそうですよね。細かい施策でもしょっちゅう意見はずれます。
そうったときは、僕は説得という言葉があんまり好きではなくて、説得って相手を折るような感じで、なるべくしないようにしようとは思っています。むしろ、相手が知らないことを提示して、選んでもらえたらと考えています。現状と、それを行ったポジティブな未来のギャップを提示してあげる。
営業はそういうことなのだと思います。売りつけることではなくて、相手が選べる選択肢をわかりやすく提示してあげるということが営業だと思っています。相手が知らないのであれば、その道と、その道を選ぶ理由と選ばない理由を提示してあげることが正しいような気がします。
僕は、人に動かされて良いことを感じたことがないので、自分から動かないと良くないと思います。選ぶのが難しかったり、面倒くさかったりするかもしれないですが、自分で選ばないとエネルギーが湧かないじゃないですか。やらされてやるくらいだったらやらないほうが良いと思っています。
自分で考え、話し、動ける人は強い
—— 社内や社外で反発される方に接していく中で、得た教訓のようなものはありますか。
オープンであることが大切だと思っています。良いことも悪いことも言えることが大切なのではないでしょうか。もしかしたら、そのお陰で資金を出してくれている人もいるかもしれないです。
――魅力的な学生とはどんな人ですか。
自ら動ける人は強いなと思います。自分で考えて、話せて、動ける人ですね。最初は0.1人前でも、半年後に2人分やってますみたいな感じに目標を置けるのであれば、スタートアップの会社はいいですよね。でも、そこで新卒というカードを使い切るわけですから、腹を括ってできるかですね。
――最後に学生へのメッセージをお願いします。
今、大きな企業に入って安定して働くことが必ずしもローリスクではないというのは思っています。起業はハードルが高いことのように思いますが、一度それを取っ払って、インターンなどのリスクが低い段階で入ってみること、触れてみる、話してみることがあると、急速にハードルが下がってきます。
いきなりリスクを取って飛び込むのではなく、ちょっと話を聞きに行くとかそういった形で、その事業に触れてみて自分にあっているのか、どのようなリスクが有るのかで判断してもらえればと思います。迷っている人がいるなら、ぜひいろんな人に話を聞いてみてください。