上場企業に0円から始められる個人投資―それまでにない画期的なサービスをー
—— 事業内容を教えてください。
資産形成をしたい個人の方と、資金調達をしたい企業をオンライン上でマッチングする貸付ファンドのオンラインマーケット「Funds」というサービスを提供しています。1円から投資ができ、相場の変動などもないため一度投資をしたら特に管理をする手間はありません。経験者との差が開きにくく、主婦や若者(20歳以上)といった初心者の方にも、資産運用のはじめの一歩として利用しやすいサービスとなっています。
それまでの類似サービスは、中小零細企業に対したものが主流でした。そんな中、東証一部上場企業に個人が間接的に貸出しができ、金利を得られるというのが特徴です。
大阪王将ファンドの例を挙げると、投資した個人は大阪王将からクーポン券をもらい、お店で利用することができたり、商品開発者と共に新メニューを食べながら意見交換をしたりすることができます。企業にとっては消費者の生の声を聞けるという利点があり、投資家は金利だけでなくお得なサービスを受けられる上、企業の方のお話を聞いて企業を知ることができると好評でした。
情報を集め、戦略を立てて最善の方法をとることが成功に繋がる
—— 学生時代はどのように過ごしていましたか。
お世辞にも勉強熱心な学生とは言えませんでした。高校生の時はちゃらんぽらんな生徒で、成績も悪かったです(笑)。しかし、浪人時代にこのままではまずいと思い一念発起して戦略を立てて受験勉強に取り組みました。どのような勉強をすれば効率よく成績が上がるのか、情報収集を徹底して行い、戦略的にを受験に取り組みました。その結果、大幅に成績を上げることに成功し、無事合格にこぎつけました。
この受験の経験から、何事も戦略を立てて取り組むことの大切さに気付きました。たくさんの情報を仕入れて、何が自分に適した最善の方法なのかを探り、効率的な戦略を立てること。これは今も変わらず大切にし続けています。
大学では、友人と一緒に家庭教師の派遣事業に取り組みました。既存の家庭教師運営会社を利用すると中間搾取されてしまため、キャンパスで直接学生に声がけを行い、それを武器に駅前で声掛け活動を行うなどして事業を展開していました。もともと何かに主体的に取り組むことが好きでしたが、この経験でさらに、「参加するよりも仕掛けるほうがおもしろい」と思うようになりました。
――ファンズ株式会社の前にも起業をしたとお聞きしました。それまでの過程を教えてください。
大学卒業後はサイバーエージェントに入社しました。急成長しているベンチャー企業に入りその過程を見て自分が起業するときに役立てたい、これから確実に成長する「インターネット」を深く学びたい、という二つの想いが実現できると思い、入社を決めました。
サイバーエージェントでの2年間は良い上司や同僚に恵まれ、刺激的な環境の中で、仕事に取り組むことができました。
一方で、本当に優秀な人が多く、「自分がこのまま一会社人として生きていても彼らには勝てない」と感じることもありました。そんな中、生存戦略として別のキャリアを考えなければいけないと思うようになったのです。
入社から2年目に退職して起業しました。その時の私は起業に必要な十分な量の知識がなく、ただ「起業したい」という一心で行動を起こしました。自分ができる領域が限られていた中で、すぐに始められるという点から、ウェブのマーケティング支援の事業を友人と3人で始めました。
その会社は6年経営しましたが、市場がレッドオーシャンであること、労働集約的な事業であることが影響し、想定よりも事業が伸びず限界を感じていました。そんな時にご縁あって上場企業に売却することになりました。
この経験を経て、次に起業するときは念入りに事業領域を選定した上で、何をやるか、どのタイミングでやるかをしっかり見極めなければいけないという教訓を得ました。
「足りないピースを補い合う補完関係」最強タッグで社会に大きなインパクトを
—— 共同経営者である柴田氏とはどのような出会いでしたか。
一度目の起業の失敗を経て、次に起業するときは自分の戦う領域を見極め、伸びるマーケットで戦いたいと思い、業界研究を行いました。そこで、海外でクラウドファンディングのような、個人と個人を結び、貸し借りを行う事業が伸びているという記事を見つけ、これから伸びそうだと感じ興味を持ちました。
しかし私には金融の知識がなく、すぐに自分で起業することはできませんでした。そんな中で偶然、昔からお世話になっていた先輩から融資型のクラウドファンディング事業を立ち上げるから手伝ってくれないかとお声掛けをいただき、「ぜひ勉強したい!」と思い、参画を決意しました。3年間事業を経験し、金融の知識や融資型クラウドファンディングの運営経験、人脈を得ることができました。
その3年の中で課題も見つけました。当時の融資型クラウドファンディングは中小零細企業を集め、そこに個人のお金を貸すという、比較的ハイリスクハイリターンのサービスでした。魅力的で面白い領域ではありましたが、まだまだ上手くやれるはずだと考えていた時に、知人と通じて柴田と出会いました。
柴田は数年前に自分の事業を売却し、その後一年間のシリコンバレーでの生活を経てちょうど日本に帰ってきたタイミングでした。次の事業アイデアとして、今のFundsにつながるようなアイデアをもっていましたが、クラウドファンディングは門外漢であったため、私のような経験者が必要だったようです。私自身も起業経験はあるものの、エクイティファイナンスを駆使して急激に成長するスタートアップの経営は経験がなかったので、これまで3度起業しexitに成功している柴田の経験や知識は魅力的でした。
私の知見や人脈と、柴田の持っている知識や経験を合わせれば「社会にインパクトを与えられる事業ができるのではないか!」と意気投合し、その日のうちに共同経営を行うことを決定しました。お互いの足りないピースを補うような補完関係で、考えているビジョンも似ていました。出会ったその夜に事業計画を送り合い、事業をスタートしました。
何が「リスク」か。リスクを見極め、選び取る。
—— 起業したいけどできない人は何が原因だと思いますか。
起業したいけれど行動に移せないという人の多くは、「リスク」を恐れているのが原因だと思います。起業することはリスクが高いと考えている人も多いかもしれませんが、実はそうでもありません。
例えば、大手企業への就職は一般的には安定していると思われるでしょう。しかし、突然、理不尽な上司などに出会って身体や精神を壊してしまうこともあり得ます。急に転勤を求められて家族と離れ離れになる可能性だってあります。大手企業に就職することで得られる安定があるのも確かですが、大手企業ならではのリスクもあるのです。
起業ももちろんリスクはあります。しかしそれは比較的コントロール可能なリスクだと考えています。起業した場合は自分に全部責任がある一方で、自分でいろんな調整をすることができます。ある意味で、大手企業に入るよりも起こり得るリスクは限定的だと捉えることもできます。
むやみやたらとリスクに立ち向かうのではなく、リスクを見極めて自ら取れるリスクを選択していくようにすれば、起業自体を過大なリスクとは思わなくなるでしょう。
――藤田さんが考える起業の秘訣を教えてください。
私はマーケットの選定が起業の成功要因の中で最も重要だと考えています。どの領域を選ぶかによって成功するかどうかが7・8割決まると考えています。私自身も、今回の起業は領域の見極めに十分な時間を使いました。
時間をかけた分、この領域でやっていけるという確信を持って取り組んでいますし、他の人が目を付けていなかった段階でいち早く参入し、市場を創っててきたという自負もあります。Fundsのこれからに不安はありません。
失敗は後に自分の強みになる
—— 今の若者にはどんな力が求められていると思いますか。
学習能力の高さ、柔軟性、行動力が求められていると思います。これから新しい技術が増え社会全体が大きく変化していく中で、それらを学習し、取り入れるべきものは取り入れていくという力は不可欠です。また、情報が溢れている今、アイデアを持っているだけでは意味がありません。考えたアイデアを実践して結果を出し、それに合わせて改善していくというPDCAサイクルを高速で回すことができる行動力も必要とされていると思います。
――最後に、学生へのメッセージをお願いします。
今回のコロナ感染拡大のような未曽有の事態が起こると、ライフスタイルや人々の価値観が大きく変わります。この変容するタイミングには大きなビジネスチャンスが生じます。コロナウイルスによって様々な不安が生じているとは思いますが、ある意味大きなチャンスと捉え、色んな事にチャレンジしてほしいです。
若いうちはとにかくたくさん失敗してください。起業して失敗したとしても今のご時世ではそれがマイナスポイントになることはありません。挑戦を重ねて失敗した経験は後に自分自身の強みに変わります。失敗やリスクを恐れずに、色んな事に挑んでください。
失敗したらそれらを分析して軌道修正してもう一度・・・ということを繰り返していれば5年・10年という長い目で見た時に、挑戦をしなかった場合に比べて全然違う成長をしていると思います。